そして、作者初の長編ストーリー漫画『生活 【完全版】』を発売と同時に読み終え、「妻フィギュア」もとっくに堪能し尽くして、もはや『小規模』連載再開まで待てない!という“福満中毒”の皆さまに、さらなる朗報!
福満しげゆきにとって初の活字本となる『グラグラな社会とグラグラな僕のまんが道』が、フィルムアート社より絶賛発売中です!
鬱屈した非モテ暗黒青春時代を経て現在に至る、福満氏の不安定な半生記を中心に、「格差」「団塊ジュニア世代」「不景気」「漫画」そして「妻」について語り下ろしたインタビューをまとめた本書。さらに、これまで単行本未収録だったコラムやマンガも初収録! 福満マニア必見の一冊です。
当サイトでは、フィルムアート社の担当編集者様のご協力のもと、本文の一部を特別公開いたします! まずは担当編集者様からの推薦文からどうぞ!
このたび、来たる5月25日に、福満しげゆき先生の、「初の活字本!」と謳った本、『グラグラな社会とグラグラな僕のまんが道』を刊行する、フィルムアート社(福満さんおっしゃるところの、まったく聞いたことない出版社)と申します。
この本は、「このグラグラとした不安定な社会を生きるための、福満さんならではのちょっとひねくれた知恵、しかし勇気がわくような本を! ぜひに!!」と、なかば強引にオファーしてできた本でして……。
福満マンガの中から、鬱屈した青春とドロップアウトのリアリティ、でも閉塞感は不思議となく、スコンと突き抜けたあっけらかんとした強さを感じ(「女からメールが来た! 半勃ちしそう!」とか)、なんというか、非常に現代的な気分を表わしている……はず!と思い、企画にこぎつけたのでした。
福満さんは、基本は「内向的で気にし過ぎなめんどうくさい奴」という設定で作品を描かれていますが、お会いして思ったのは、非常にアタマの良い方で、すごく客観性がある方だなということです。そしてやっぱりとてもお話が面白く、「セックス・ブームに乗り遅れた恨みは忘れない」と言い募る場面では、いたく共感し、また同級生だったら友達になれていたはずだと確信しました。
この『グラグラな社会とグラグラな僕のまんが道』という本は、基本的には、語り下ろしインタビューです。福満さんならではの視点で、「不景気」「世代」「仕事」などについて語っていただき、そこに、マンガ論や半生記を詰め込んだ内容になっています。
また、福満マンガの秘密(!?)もわかるようになっていて、このウェブ上で連載されて、ついに完結した『生活』の世界観や、「ゾンビ」というものに福満さんが何を見ているのか、といった点にも触れられています。『生活』をより深く理解したい皆様!……ぜひ、読んでみてはいかがでしょうか。
さらに、これまでのマンガ単行本には収録されなかった福満ワールド満載の、コラムやマンガのあれやこれやも収録しています(詳細はこちらへ)。福満マニアは必見です! 手に取っていただけたら幸いです。
(担当編集より)
続いて、本文からの抜粋をご紹介します!
■社会は意外とグラグラしているんです!
世の中には、「絶対的な基準」みたいなものがあると思ってたんですよね。
そりゃね、たとえば、Aさんが見知らぬBさんを殺した、ってなったら、みんなAさんが悪いって言いますよ。でもAさんが「俺、悪くないよ」と言い放てばですね、わからなくなるんですよ。牢屋には入るかもしれないですけど、そのAさんの主張により、ひょっとしたら「Aさんは悪くないんだ」と世論が判断するかもしれない。でもまあ、牢屋に入りゃ、いいのか……。
とにかく、そういう「揺るがない絶対機関」みたいなものがあると思ってたんですよ、僕は。
マンガの連載をする時もですね、公的な契約書みたいな……、単行本を出すときはあるんですけど、普段も何か、もっとしっかりした約束が交わされるものかと思っていたら、そんなことはないんですよね。
たとえばですよ? 編集者さんに対して僕が、
「これやらせてくださいよ」「いいじゃないですか」って言ったとして、
編「ダメだよー」
僕「いいじゃないですか!」
編「……わかったよ」
とかで決まったりするわけですよ。
そのくらいの感じで決まったりすることが実際にあるんですよね。「えーっ!?」みたいな。
でも、そんなのおかしいと思うんですよ、本来は。そんなことで描くものが左右されてしまうのは。
内容じゃなくて、編集者さんに言ったかどうかで状況が変わるというのは……、これは……、大変ですよ。一体何を信じればいいのか、ということにもなりますから!
確かに、そこを約束として取り交わすのは難しいんですよね。でもなんか……、なんかあると思うんですよね。これは、マンガを描いたりそういう世界に出入りしてない人に顕著なんですけど、雑誌とか書籍、出版社とか編集者を「公的な機関」だと思ってるんですよ。すごくしっかりした機関だと。
だから持ち込みに行くと驚くんですよ。「これは……違うぞ」と。「結構アナログだぞ」って。
雑誌に本当に載るかどうかも、
編「載りますよ」
僕「ホントですか?」
編「載る載る」
くらいの調子で、本当かどうか確かめる術は雑誌が出るのを待つしかないんですよ。
「僕の小規模な生活」もね、『モーニング』の次号予告から、タイトルがスッポリ抜けてたりするんですよ! でもそれを編集者さんに聞くのは怖いんですよ!
「これ……、誤植ですよね?」
「違います。次回はありません」
って言われる可能性もあるじゃないですか! 僕、なんかしちゃったのかな……、って不安じゃないですか!
ほかの仕事をされてる方には、「雑誌に連載してるし、安定してるんだよね」って言われたりしますけど、ぜんぜん手続きも取ってないし、安定感なんかないですよ。グラグラですよ。僕もよく知らないけど、テレビにそこそこ出てるお笑い芸人さんなんかは、めちゃくちゃ儲かってるんだろうな、って思うんですけど、人によるんだろうな、って思うようにもなりました。だから実際のところはわかんないものなんですよ!
……そんなこと言うとですね、「そんなのそうに決まってんじゃん! 今さら何言ってんの?」と思う人もいるかもしれないけど、君はそれを実感と共に体験したのか? と問いたい。
※『グラグラな社会とグラグラな僕のまんが道』より一部抜粋
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