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「Vefurrin(物語を紡ぐ者)」

HWEI LIM
マレーシア

夢の森のなかに住む“子狐”に物語を語ってきかせる“放浪者”。物語のなかで物語が語られ、幾重にも重なりながら“人間にとって物語とは何か”が展開されてゆく物語。

わたしは本やマンガを読むのがずっと好きで(沙村弘明さんの『無限の住人』 が一番好きなマンガです)、誰かに読んでもらうために絵や文字でお話をかきたいといつも思っていました。わたしがこの国際漫画賞について知ったのはかなり遅くなってからでしたが、今では応募することに決めて本当によかったと思っています。  短い期間で短編マンガを仕上げて応募したのでまさか賞を取るとは思っていませんでした。わたしの作品が副賞に選ばれたと聞いて驚いていますが、同時にとても幸せです。この受賞でもっと多くの人がわたしの物語を読む機会を持つかもしれないと思うと嬉しいですし、願わくばその人たち自身の物語に対する愛を深めていただければと思います。講談社の皆さま、ありがとうございました。

BD的な絵柄と画面構成。濡れたような流れるようなタッチと、不思議な背景や、登場人物たちがかぶる意匠をこらした仮面のデザインが、ストーリーと実によくマッチして効果をあげている。新人の場合、作家としての特性と、実際に描いている作品とが一致しないことがよくあるが、この人は自分の特性をよく理解していると感じた。テーマ的にも相当な意欲作で、実に興味深く読ませるのだが、いかんせん難解すぎる。テーマは確かにむつかしいが、それをわかりやすく描けてこそマンガだ。むつかしいテーマだから難解でかまわないだろう、というある種の「投げ」が垣間見える気がする。すごく面白いことを描こうとしていることがわかるだけに残念。「面白い」「面白くない」は最終的には100%主観で、いってみれば「おいしい」「おいしくない」と同じ。その意味では万人を面白がらせることは不可能だし、そんなことは目指さなくていいと思うが、あるラインまでは読む人すべてについてきてもらうよう努力すべきだ。そのことを理解してもらえれば、それだけでも飛躍的にうまくなる人だと感じた。

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