冴え渡るクロースアップマジック!

対談風景

前田知洋(以下、前田) いかがでしたか? まずは対談のウォーミングアップとして、カードマジックを見ていただきました。

杉本亜未(以下、杉本) 素晴らしかったです!

前田 ありがとうございます。今日はよろしくお願いいたします。実は僕、漫画にはあまり詳しくはないのですが、「モーニング」だけは読んでいるんですよ。『ファンタジウム』は全巻、拝見しました。

杉本 ありがとうございます! こちらこそ、よろしくお願いします。

前田 ふふふ、こういう対談って、緊張しますよね(笑)。

杉本 はい、緊張します(笑)。前田さんの前だから……というのもあるんですが、マジックの専門の方から見ると私は本当に素人なので……ドキドキものです!

前田 いえ、杉本先生は、漫画のプロでいらっしゃいますから。『ファンタジウム』は素晴らしいと思います。

杉本 マジックの話を描こうと決めてから、編集さんと、「みんなが憧れるようなマジシャンを描こう」という話をしまして。そのとき、前田さんこそが、いまみんなが一番憧れているマジシャンなんじゃないか、と思ったんです。

前田 そうかなぁ……(笑)。

杉本 前田さんのマジックは、お客さんの導き方が本当にお上手ですよね。ご著書の『知的な距離感』も楽しく読ませていただいたのですが、特にクロースアップマジックの場合、本当にお客さんに近い距離で行うものなので、いろいろな意味で難しいと思うのですが。

前田 クロースアップマジックの秘密の一つは、まさにその“距離感”にあると思います。たとえば、マジックのテレビ番組で見かける奇妙な半円形のテーブルは、どの観客からも同じ距離感で見えるためのものでもあるんです。近すぎればマジックがやりにくいし、遠すぎれば感心してもらえない。そのぎりぎりの距離や角度が難しいですね。“距離感”というのは、親しい友人や家族とは近く、他人とは遠いものです。僕の仕事の一つは「お客さんに好きになってもらうこと」なのですが、いきなり近づけば緊張させてしまいます。そこで、「トランプを調べますか?」と手渡しできる距離からマジックをスタートさせているんです。

杉本 距離が近いと、良くも悪くも空気感がすごく伝わりやすいですよね? 仮にこちらが万全な態勢で臨めない場合、たとえば「今日は体調が悪い」とか「ちょっと悲しいことがあった」とか、そういったときはどうされているのでしょうか?

前田 もちろん、気分が乗らなかったり、機嫌の悪い日なんかもあるのですが、ひとときでも観客に嫌なことを忘れてもらうのが、テレビやショーなどのエンタテインメントだと思うんです。演じる側が、照明やカメラのアングルやメイクを気に入らないなど、ちょっとしたことでイライラしてしまうと、お客さんには伝わってしまう。だからこそ、ステージに立つ前は、しっかり気持ちを切り替えて、「お客さん、大好き!」と思うようにしているんです。

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杉本亜未

漫画家。2月27日生まれ、横浜市出身。うお座O型。サン出版(現マガジン・マガジン)刊「JUNE」誌(現在休刊)の『竹宮惠子のお絵かき教室』への投稿が、デビューのきっかけとなる。2006年よりモーニングスーパー増刊「モーニング・ツー」で『ファンタジウム』を連載中。好きな食べ物は有機野菜。特技は料理で、それを生かし現在「Superクロスワード」誌(マガジン・マガジン)で『おしえて!アンサーちゃん』も好評連載中!

前田知洋

クロースアップ・マジシャン。1965年、東京出身。1988年、ロサンゼルスのマジックキャッスルに日本人最年少で出演。2004年より「スーパーテレビ 奇跡の指先 前田知洋」「徹子の部屋」ほか、多くの番組に出演し、近距離で見せるマジックのブームを巻き起こす。2005年にはマジック・サークル・ロンドンの100周年イベントにゲストで招かれ、最高位のゴールド・スター・メンバーを授与される。2008年には米国のマジックの専門誌「GENII」の表紙を飾り特集を組まれた。著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密の言葉』(日本実業出版社)など。