第26回MANGA OPENの応募総数は、史上2番目となる応募総数308作品。その全作品を対象とし、MANGA OPEN事務局によって行われた1次選考を通過した25本が、2次選考の俎上に載せられました。2次選考は、モーニング編集部員全員が選考に加わり、丁々発止の議論を戦わせる部内選考会です。各作品の担当編集者を決める場でもありますので、編集部員にとっても大切なアピールの場であり、競争の場となります。今回は、7作品が2次選考を通過し、最終選考へと歩を進めました。

[漫画] 『無題』 柄澤薫 (山口県・26歳)

ストーリー:帰り道で三匹の猫(?)を拾った却津山春雄(キャッツヤマ・ハルオ)。言語を解する猫たちと、どんな事態にも動じないキャッツが織り成す不条理ギャグショート。

事務局長・島田
この中で一番面白いじゃん、はっきり言って。全部のネタが面白かった。
編集部員・T渕
ネタに外れがないというか、全部同じリズムで描けていて。これがヒットしない人には永久にヒットしないけど、これが好きな人はずっと楽しむことができるんじゃないかな。
事務局員・竹本
もうちょっとページ数があればそれを確信できたと思うんですが。
事務局員・奥村
絵はしかし、厳しくないですか?
事務局長・島田
いや、限界までヘタに見えるというのもありだと思うよ。漫画って絵がうまい必要は必ずしもないし、この作品を送り出して、「これだったら俺でも描ける」と思わせて、話が抜群に面白いプロが出てきてほしい。この作者は、絵はうまくないんだけど、それでいてきちんと成立するネタを描けているのはすごいと思う。ある意味、いい加減さを逆手に取れてると言えるんじゃない? こういうマンガって、他の人でも思いつくようなネタじゃダメなんだけど、抜群のオリジナリティもあるし。
事務局員・田岡
でも、やはり最終選考に残す水準に達しているかというと、やっぱり疑問符がつくのも事実だと思います。
編集部員・T渕
そうだね。このアベレージの高さでネタを量産できるかどうか、それを次回作でぜひ見てみたい。
事務局員・奥村
島田さん以外に他に積極的に推す意見はありますか? ……では、次回に期待して、今回は見送りということになります。

[漫画] 『クロマさん』 アメノモリ (埼玉県・20歳)

ストーリー:根暗で内向的な女の子・クロマさんと、周囲の人間とのビミョーな距離感が独特な日常系学園四コマ。

事務局員・竹本
ページ数は短いのですが、会話の間と女の子の可愛さで今回の中では最高点をつけました。この人は4コマでなくても、会話のやり取りで話を作ることができるんじゃないかと思いました。
編集部員・F原
伸びそうな気はする。普通のストーリーも読んでみたい。もうちょっと絵がうまくなればいけるんじゃないかな。今でも女の子は可愛く描けていますし。
編集部員・O川
確かに絵はうまい。でも、根暗な女の子の話なんだけど、読み手が「根暗な女の子」と聞いてイメージできるラインを超えていないから、もう一ひねり欲しかった。
事務局員・奥村
他に支持する人はいませんか? ……では、今回は落選します。

[漫画] 『コンビニ・イン』 山田花子 (広島県・19歳)

ストーリー:いつでもマイペースなアルバイトのヨギくんと、冷静に突っ込みを怠らない花丸店長が働くコンビニエンスストア。独特な店員がいるこの店には、変わった客がやってくる。

編集部員・M好
絵にオリジナリティがあるんじゃないかな、と思いました。話の中で語られているキメゼリフとしての価値観が普通の価値観とズレてて、その辺も独特で面白い。
編集部員・T渕
でも、漫画を見て漫画を描いてる人の絵だな、という感じがした。
編集部員・Y口
僕は話の中で何が起こってるのかわからなかったです。なんでコンビニなのかってところもわからなかったですし。
事務局員・竹本
確かに全体的に読みにくかった。
編集・O川
若い時に大変なことがあって、それを跳ね返す力がいま自分の中にできてきたから、それを発散したい! というエネルギーはすごく伝わってくるんだけど、それを大勢の人に楽しんでもらいたいという視点が欠如しているような感じがする。描き慣れていないのは当然として、あくまでこの作品を出発点として、そのあたりを身につけてもらいたい。
事務局員・奥村
では、残念ながら今回は見送りということで、次回に期待しましょう。

[原作] 『ぱるたい Happy Revolution』 さかもとたけし (千葉県・33歳)

★2次選考通過作品作品の詳細と選考結果はこちら!ストーリー:※原作のため、作品のテーマに関わる具体的な文言は「××××」の伏せ字としてあります。

編集部員・M田
今回の作品の中では一番キャラが立っていたと思いました。最初の数ページを読んだだけで続きが読みたいなと思わせてくれるくらい。
編集部員・T渕
今どきのウケる女の子像だったり、盛り上げ方も含めて、誰でも書けるかもしれないとも思うのですが、××××を程よいところまでネタとして引き摺り下ろすというスタンスを選んだところでこの人のアイディア勝ちだと思ったな。それをエンターテインメントに仕上げるところも独自性が発揮されていると思う。
編集部員・M好
使命感とか悲壮感とか、××××につきもののネガティブなイメージを使わずに描いていますよね。仲間との連帯感とか、プラスなイメージで面白そうだと思えました。
編集部員・F原
でも、どうやって漫画にするんですか? 小説としては面白いんだけど、ビジュアルにするのが難しいんじゃないかな、というシーンが結構ある。漫画家のクオリティに頼る部分が大きいというか。
事務局長・島田
俺が苦しいと思ったのは、たとえば最初のクライマックスのところで、歌を歌うシーンがあるんだけど、単に歌を歌っているだけで、漫画のシーンとして演出されていない。どんな漫画家が描こうとしてもある程度は必ず面白くなるように演出してあるのが原作だと思う。それがないと思うんだよなぁ。テーマ、演出、プロット、キャラクター、セリフといった要素で分けた場合、この人はどこがいいの?
編集部員・T渕
演出ではないですか? イジり方というか。
編集部員・K林
僕は逆にキャラクターはすごくありきたりじゃないかな、と思ったんですが。
編集部員・F沢
確かにキャラクターは、ゆるい感じというかオタク的なノリを感じたんですが、今回の応募作の中ではよくまとまっていて、原案としてはいいのではないかと思いました。
編集部員・K
僕は演出というより、現代の××××をしている××の内部って、実はこういう感じで、意外にリアルに描いてるんじゃないかな、と思います。
編集部員・K渕
でも、主人公の女の子がこういう活動に身を投じる理由が描かれると思ってたんだけど、それがまったくないまま終わってしまった。すごく肩透かしを食らった感じで、俺は最後まで入り込めなかったな。
事務局長・島田
俺もこういう活動自体に興味がないから、面白さは伝わらなかったんだけど……でも、こういったテーマに興味がある人が多い、つまり題材としてもありなんだろうな。内容についても複数の積極的支持はあるみたいだし。
事務局員・奥村
では、この作品は通過します。

[漫画] 『動脈男と静脈女』 コーポ五十嵐 (福島県・24歳)

★2次選考通過作品作品の詳細と選考結果はこちら!ストーリー:謎に包まれた怪奇ミステリー作家・正岡奇鬼。小説家志望の後藤は、バーで偶然会った女に頼まれ、奇鬼のふりをして出版社のインタビューを受けることに。

事務局員・田岡
キャラクターの表情が豊かで、動きもある。セリフとキャラクターの表情がすごく合致していて、とても読みやすかったです。ただ、もう少しドロドロした方向にストーリーを持っていったほうが深みのある話になったのではないかなとも思いました。
事務局員・篠原
コメディにしようとして、実際にコメディにはなっていないような気がする。「作家」という題材を矮小化しているだけのような気がして。ストーリーはちょっと評価できないですね。
編集部員・O川
でも、いろいろな絵を描こうというか、絵に工夫があって、セリフを熟読しなくてもストーリー展開が見てわかる、読者にわからせるという意味ではすごく力を持っている人だと思う。主人公を女性にして、その女性の視点ですごく独善的な話を描いてもらえれば面白いものができるんじゃないかな。
事務局員・奥村
では、これも複数の支持があるので、通過します。

[漫画] 『愛のデメトリオ』 ザザロン亞南 (愛媛県・27歳)

★2次選考通過作品作品の詳細と選考結果はこちら!ストーリー:民からも慕われ、名君の誉れ高い王アメデオを持つ、デメトリオ。臣下からも疎んじられている彼は、ある日王宮に飛来し、建物を壊し人を食らう竜に心を奪われてしまう……。

編集部員・T渕
100ページオーバーだけど、普通に読めるよね。
編集部員・M川
確かに、長さは感じませんでしたが、結局、誰が好きだったのかわかりませんでした。
事務局員・奥村
冒頭で主人公が竜に心を奪われる理由であったり、説得させるだけの状況をきっちり描けば納得するんだけど、なんで100ページもあるのにそこをほっといて、話を進めてしまったのが不思議。もったいない。
編集部員・T渕
それは竜だからじゃない? 竜だから心を奪われるのかもというのはギリギリ納得できる。魔力がある竜だから心が奪われる。竜という飛び道具があるからギリギリ成立した話。飛び道具がなくても描けるのかは気になるけど。
編集部員・F沢
今回の中では一番でした。面白かったです。古典的で普遍的なテーマをきっちり描いてる話というか。竜というのは力への渇望で、そんなことは説明しなくても読み取れるものだと思うよ。二度三度読み直したけど、骨太かつシンプルに語られていて、捨てがたい才能かなと。
編集部員・K藤
僕も今回の中ではこれが一番でした。兄弟二人が殺し合う時に上に竜が飛んでる場面とか、絵で魅せるっていう意識があるなと。評価は高いです。
編集部員・Y川
私、担当になりたいなと思ってます。ロマンティックなセリフ、いいセリフが出てきて、そこに惹かれました。今回はスケールの大きな話にしたために詰め切れてない部分があったので、もっと舞台の小さな話にするともっと良いのかもと思いました。
編集部員・M川
後半ストーリーがまとまってない部分もありますが、長さを感じさせない部分がすごいですよね。あとは人物の顔が似ているんですが、グッとこさせる表情も描けてるなと。細かい部分を修正すれば、すごく描ける人なのかなと思いました。
事務局員・奥村
他にご意見はないですか? 複数の強い評価があったので、これは通過とします。

[漫画] 『プリンセスバージン』 稲田ショーコ (埼玉県・20歳)

ストーリー:サチコ、24歳。いつまでもお姫様気分。だから、いつまでたっても処女を捨てられない。

事務局員・奥村
主人公の女の子の妄想は少女漫画的な王道路線ですが、かわいく描けているので素直に入れました。
事務局員・竹本
僕が担当しているんですが、この方は以前にも何度か応募してくれてます。
事務局長・島田
このオチはないでしょ。
事務局員・奥村
打ち合わせの時はどんな感じなの? 女の子の恋バナだったり、キャラクターのキャラ分けができているんだから、オチ次第だと思うんだけど、オチがもったいないよね。いつもオチが決まらない?
事務局員・竹本
う〜ん、いつもオチでは悩んでます。
編集部員・K籐
女の子の表情とかはすごくかわいいんだけど、いかんせん話に魅力が……。
事務局員・竹本
Y川さん、女性から見てどうですか?
編集部員・Y川
……すいません。正直、印象に残りませんでした。
事務局員・奥村
それでは、これは強い支持がなかったので落選とします。

[漫画] 『ケータイブレード』 月葉史彦 (大阪府・?歳)

ストーリー:赤ん坊の頃、携帯電話とともに、地下世界に捨てられた主人公。青年になった時、ケータイに送られてきたのは、凄惨な戦いの指令だった。

事務局員・竹本
これも僕が担当です。前回のちば賞にキョンシーの話を応募してくれた方です。
事務局長・島田
あー! あの人か。
編集部員・K
子どもの時に「この棒がライトセーバーになったら」みたいな妄想というか、そういう気持ちを素直に表現した部分が面白かったです。
事務局員・奥村
S本さん、いかがですか? 評価が高いですが。
編集部員・S本
面白かったですよ。『ケータイブレード』というタイトルで合格みたいな。
一同
(笑)。
編集部員・S本
Kと似た意見なんですが、勢いがあって良いですよね。
事務局員・奥村
勢いはあるけど、ちょっと連載の第1話目みたいな話だよね。
事務局員・竹本
そういう部分はありますね。
編集部員・T渕
話に矛盾してる部分はあるけど、アクションシーンはなかなか魅せる。
事務局長・島田
ただ雰囲気だけの漫画に比べたら、ケータイが刀になるというオリジナルのアイディアを盛り込んで楽しませようという部分はすごく感じる。エンターテインメントを意識せずに格闘シーンをダラダラ描く作品よりはよっぽどいい。前回からはすごく進歩したと感じる。でも、悪くはないけど、強く支持するかといったら微妙。
事務局員・奥村
Kさん、S本さんは強く支持しますか?
編集部員・K
面白くは読めましたが、強く支持するかといったらそこまでは。
編集部員・S本
僕もそうですね。
事務局員・奥村
他に強く支持する方はいますか? ……では、次回に期待ということで、今回は落選とします。

[漫画] 『持ち過ぎる男』 岩下博美 (神奈川県・39歳)

ストーリー:樹海で死のうとする男。彼は何でも持ち過ぎてきた。他人の人生すらも。

編集部員・O川
この作品の出来としては最高というわけではないですが、樹海の雰囲気を感じさせる描写力というか、絵の力は感じました。結末のつけ方など穴もありますが、骨太なストーリーとかを描いてもらうと即戦力かなと思いました。
事務局長・島田
絵はうまいけど。でもラストが……。32ページにまとめなきゃという意識が働いたのかなぁ。だったらもっと真ん中の部分で削りようはあったと思うけど。
事務局員・竹本
ラストが違えば、評価は変わってきたと思います。無理やりまとめた感じがすごくする。
事務局員・田岡
確かに。それまでに比べてラストは展開が速すぎますよね。突っ込みどころが満載でした。
編集部員・I上
私には何が描きたかったのか、伝わってきませんでした。
事務局長・島田
本心はわからないけど、セックスシーンはすごく力が入ってるね。
事務局員・笠井
僕もラストはどうかと思いますが、前半は「何がどうなるんだろう」という期待感はすごくありました。
事務局員・篠原
確かに。前半の期待感はすごくあった。でも、このラストではすべてが台無しだと思いました。
事務局員・奥村
O川さん以外に強く評価する方はいませんか? では、複数評価がなかったので今回は落選とします。

[漫画] 『HUMAN』 芝本ノキコ (兵庫県・26歳)

ストーリー:宇宙人・ゴッザヌスと暮らすハザマ。彼は地球で最後の男

事務局員・竹本
僕が担当なんですが、前回のちば賞に『オヤジ野菜』を応募してくれた方です。
事務局長・島田
そうだよね。誰か評価してる人はいる? T渕どう?
編集部員・T渕
計り知れない人だなぁと思いました。ラストがあんなにヒューマンな感じなのに、その前に死体と行為に及ぼうとするんですよ
一同
(笑)。
編集部員・T内
『オヤジ野菜』の時も感じたんですが、いい意味で醒めた感じがする人ですよね。
編集部員・T渕
確かに、いい意味の適当さがある人だよね。あと、絵柄もちょっと変わった?
事務局員・竹本
そうですね。『オヤジ野菜』の時とは違う感じは出そうというのは話しました。
編集部員・Y原
僕は『オヤジ野菜』のほうが好きでした。絵柄・話ともに前回から変わったけど、逆に普通になってしまった感じだと思います。
編集部員・F原
うーん。その感じはあるかもね。編集部の評価も、悪くないけどそこまで良くもないといった感じだし。
事務局員・奥村
T渕さん、T内さん、強く推しますか? そこまで強い評価ではないので、次回に期待して今回は落選とします。

[漫画] 『お兄ちゃん』 竹岡紀子 (東京都・?歳)

ストーリー:大好きなお兄ちゃんが誘拐された! 誘拐された子はマネキンにされるという噂の中、洋品店で見かけたマネキンはもしかして……。

事務局員・奥村
この人は前回、『ダムの底』という作品を送ってくれた方です。
事務局員・竹本
これは、いわゆる不思議ちゃんが主人公のお話ですか?
事務局員・奥村
お兄ちゃんが誘拐されて、お兄ちゃん探しをしているうちに、ふと見かけたマネキンがお兄ちゃんなのではと思い込み、お兄ちゃんが戻ってきてからもマネキンに半ば心奪われている女の子のお話になるんだけど、わかりにくい?
事務局員・竹本
話の筋はわかりますが、なんでマネキンに心奪われるのかがよくわからなかったので、話に入れませんでした。
編集部員・T渕
「なぜマネキンに心を奪われたか」ということに理由をつけるとしたら“吊橋効果”みたいなもので、お兄ちゃんがいなくなった時に、「お兄ちゃん、お兄ちゃん」と捜し求めていたら、美しいマネキンに出会い、お兄ちゃんだと思い込んで、かっこよかったはずのお兄ちゃんが帰ってきたら醜くなっていたので、お兄ちゃんを心配する気持ちがマネキンへの偏愛に繋がったということだね。
事務局長・島田
もともとそういう志向があったのか、事件によって芽生えたのか、どっちなんだろ?
編集部員・T渕
でもそういったことって、資質的にゼロの人っていないんじゃないですかね。
事務局員・篠原
子どものときってそういうことありますよね。
事務局長・島田
でもこういう話って、みんなに理屈がつけられちゃったらダメなんじゃないかなぁ。
事務局員・奥村
この世界を説得するだけの画力というものが必要なのかもしれないですね。
事務局員・篠原
俺はこの人は才能があると思います。こういったちょっと不思議な世界を描く人は、世界観ばかりを描きがちなのに、この人は主人公の女の子の気持ちの変化も描けていた。前回の作品も、不思議な物語ながら“人を描く”ことに興味が向いていて、結構好きでした。絵は上手とは言えませんが、“人を描く”ことを意識しない新人の人が多い中、光ってると思いました。
事務局員・奥村
前回の作品もですが、「現実の世界から少し浮いている世界」を描いてはいますが、話はきちんと完結していて……。
事務局長・島田
前回今回と作品を見て、この人が今のところ描きたい世界はわかったと思う。だけど、それで成立させるには何かが足りないと思うんだよ。さっき篠原が言ったこともよくわかって、才能があるとは思うけど、今のベクトル、作品の方向性では難しい気もする。つまり、この方向でがんばって連作の形で載せていくのも悪くないんだけど、小さくまとまるだけのような気がするんだよ。「この人はこっちの方向でしょ!」というベクトルを示せないといけないんじゃないかな。
編集部員・T渕
前回より明らかにうまくなっていますしね。
事務局長・島田
うまくなってるし、絵だって言うほどヘタじゃないのでは。
編集部員・T渕
女の子の表情も、ステレオタイプの笑ったり泣いたりというだけではない顔をさせるんですよね。表情を変えなくても流れで見ていくと「こんなこと考えているんだろうな」ということがわかるように描いている。
編集部員・K本
子どもって、自分の中で浮かんだ考えに縛られる部分があって、「もしかしたらこのマネキンがお兄ちゃんじゃないか」という考えは相当ぶっとんでいるんだけど、この女の子はそう思ったんだなとリアルに感じられたので、子どものころの感覚をうまく作品に出していくならそれはひとつの方法としてあるんじゃないかなと思います。
編集部員・T渕
「不思議なものを描きたい」ということに拘泥してはいないよね? 「この路線で」というのはこちらでリクエストした部分もあって、持ち込んでくれた時にたくさんのネームを見せてもらって、「この路線が面白いですね」ということで2作続けて描いてもらった部分もあります。
事務局員・奥村
普通のお仕事もしている人なのですが、アイディアはとてもたくさん持っていたのでちょっとびっくりしたんですよ。それとかわぐちさんの大ファンで、OPENにぜひということでこちらで預かりました。
事務局長・島田
こういった世界の作品は新人賞では描きやすいと思うんだけど、違う路線での作品を見たいな。なんども言うけど絵も下手ではないので、ぜひ次回がんばってほしいです。

[漫画] 『バイボー』 作画・花田剛 (東京都・32歳)/原作・木多大介 (東京都・30歳)

★2次選考通過作品作品の詳細と選考結果はこちら!ストーリー:ここは「お金」のない世界。みんなが額に汗を流し、「ペイ」を稼ぐ……。

事務局員・奥村
引き続きこれも僕が担当です。前回のOPENの時に100ページを越える作品を持ち込んできてくれた人が、今回も持ち込んでくれました。彼は絵の担当で、その根性はすごかったんですけど、脚本がある部分とない部分で作品のテイストがまったく異なってしまっていたということもあり、前回は1次選考で落ちてしまいました。今回の作品は、前回とは脚本を書いてくれた人が違って、脚本を担当した方は普段の仕事とは別に芸人のお仕事もやっているそうです。普通ではない世界を舞台にして、部分部分で笑えるところも入れてあり、こういった作品は好き嫌いだとも思うのですが、僕はありだと思います。原作付きの作品ではありますが、この組み合わせも含めてご意見いただきたいと思います。
事務局長・島田
これは原作もいいんじゃないかな。こういうシュールな話って毎回毎回あって、結局イメージの垂れ流しで、何の世界観もなく、何の暗喩にもなっていないものが多いんだけど、これはちゃんとしたストーリーがあって、世界観があって、ストーリーがあるということから考えると、原作がきちんとしていると思うな。絵もそれに合ってるし。
編集部員・T渕
結構いいカップリングなんじゃないかな。違和感がない。
事務局長・島田
前は原作がなかったんだっけ?
事務局員・奥村
前回のOPENでいただいた原稿も原作が付いていたんですが、前半しか原作がなく、それも今回の木多さんではなく別の人でした。後半は原作なしで、花田さんが考えたそうです。
編集部員・I上
今回はどこまでが原作なんですかね。
事務局長・島田
かなりカッチリとした原作があると思うな。
事務局員・笠原
絵の担当の方は何をしている方ですか?
事務局員・奥村
本業はイラストレーターさんです。
編集部員・T原
見開きで海と山を描いているあたりなんかは話のつなげ方としても上手だと思いますし、演出としても生きてますよね。
編集部員・T渕
「勧善懲悪といなくなった恋人探し」みたいな話にすると、徳弘正也さんの世界みたいになるよね。最初ギャグかなと思わせて、そのあとグイグイと物語を進めていくという。
事務局長・島田
この作品はちゃんとカタルシスがあるしさ、話もまとまっているし、最終選考に残る力は十分にあると思うよ。
編集部員・M好
とても気になる世界で、まったくこの世界がどんなところかは描いていないんですけど、描かないという主義なんですかね?
事務局員・奥村
前回持ち込みを受けた時に、作者に話をさせてもらったのは、前回も不思議な世界だったのですが、変わった世界の話にするのはまったく問題ないけれど、世界のルールはきちんと確立したほうがいいということと、普通に読めるページ数でというのがお願いした部分です。
編集部員・F沢
俺はこの作品はよくわからなかったんですけど、なんというか代理店的な組み合わせというか、コンセプチュアルで頭のいい人が組んで作ったんだろうなという感じがして、センスはあるんだけど、みんなが言うような世界観はないのかなぁという気もするんですよね。ただ、パフォーマンスとして面白ければ成立するのかなというところで微妙な点数をつけました。「野望というようなものがあるだろうか?」という感じがしちゃうんですよね。
事務局長・島田
野望ってのは漫画家になるといったものですか?
編集部員・F沢
自分はこういうものが好きでそれを貫徹させたいんだ、というような意味での野望ですね。たぶんある種の計算づくで、「こういうネタだったらそこそこ受けるだろう」という感じを受けてしまったんですよ。ただ、それと商品として成立するかというのは別で、成立はするのかなと思います。
編集部員・K本
理不尽なルールみたいなものがあって、そこにぶちこまれると大変なことになるというのは理解できて途中まで面白く読めたんですけど、ラストのところで「これで終わりかよ」と思ってしまって、何が言いたいのかわからなかったんです。ラストまで丹念に作ってきた、理不尽なルールとなんとかやっていくということが、あそこで終わってしまうと、「この作者は実は言いたいことはあまりないのではないか」と思ってしまうんです。じゃあだからセンスがないのかというと、それはまた別の問題なんですけど。
事務局長・島田
描かずにいられない衝動みたいなものがないんじゃないかってこと?
編集部員・T渕
F沢さんの言うスケベ心みたいなものもわかるんですけど、代理店的な演繹法ではなく、芸人の、舞台に立って肌で感じているところの帰納法的な感じがするんですけどね。「今ここでこのコメントすべき」という反射神経で描いている部分もあるとは思うんですけど、嫌らしさとはちょっと違う気がします。
編集部員・F沢
難しいんだけど、論旨が明確じゃなきゃいけないのかとか、具体的なメッセージがなきゃいけないのかというとそうでもないし、みんなが言語化できなくてもそんだけ感じてるってことは、この作品には何かがあるんじゃないかな。だとしたら試してみるといいかもしれません。
事務局長・島田
これは複数支持があるので、通過です。

[漫画] 『本日も白い白いヤミの中』 木戸朋生 (北海道・20歳)

ストーリー:さえないアルバイトをしている主人公がある日思い出したのは、幼い頃に出会った魔女との約束。

事務局員・奥村
さらにさらに僕の担当が続きます。前回、『トビオの羽は夜ひらく』という作品を描いてきてくれた人です。前の作品は何ヵ月もかけて丁寧に描いてきてくれましたが、今回の作品は就職したりで時間がない中だったということもあり、だいぶ雑になってしまっています。設定に無理があったり、魔女の必然性も未消化のまま物語が終わってしまったりと、モノとしては正直良くないと思います。ですが、みなさんからの意見で、彼はこうしたらいいんじゃないかというものがあればぜひお願いします。
編集部員・F沢
俺は前にネーム見せてもらったりで、結構この人が好きなんだけど、まぁ残念ながら今、奥村が言った通りなんだけど。ただ、どういう話なのかはわかる。もしかしたら時間の都合上、中途半端に終わってしまっただけなのかもしれないけど、現実とファンタジーのブレンドが程よくて、やはりもう少しじっくりやらないと論旨がわからないという結論にはなってしまうんだけど。年齢で評価するのはどうかと思うんだけど、これからも見てみたいと思います。
事務局長・島田
ではこれは次回に期待ということで落選します。

[漫画] 『蝶々結び』 柴田眞紗子 (東京都・29歳)

ストーリー:いじめられっ子の男の子と、男勝りの女の子。二人の間に生まれた淡い想いはしかし……。

事務局員・奥村
この方は、連載作家さんの元アシスタントさんですね。
編集部員・I上
絵が似ているということだけでなく、キャラクターも似てしまっていてオリジナリティがこの作品では見えてこないというのがもったいないですよね。元アシスタントという以外のアピールはないんですかね。
編集部員・K本
これだけ上手に描ける人ですが、何か飛びっきりのものがない場合はやはり落選してしまうのは仕方がないとも思います。
事務局長・島田
やはり似てきちゃうのかなぁ。普通にうまいんだけどな。こんだけ描けるのに落選というのも理不尽な気がするんだけど。
編集部員・Y口
この蝶のエピソードを言いたいがために、このストーリーを作った気がしてしまいました。あと、サブキャラが説得力にかけている感じがしました。
事務局長・島田
確かに予定調和で終わってしまっているんだよね。こんな感じで終わるんだろうなと思ったらその通りで。残念ながら今回は落選としておきます。

[漫画] 『○○のリック・シーナちゃん』 田中登喜実 (神奈川県・26歳)

ストーリー:どんなシチュエーションもすべてエロに妄想してしまう主人公。

事務局長・島田
で、次はこの作品。先ほどのものが落ちてこれが残るとしたら少し理不尽な気がするけど(笑)。
編集部員・K持
ちば賞で一度入選している人です。何度かネームのやり取りをしているのですが、長い物語を描くことがなかなか難しいようで、ではショートにしてみようかということでこの形態にしました。
事務局員・竹本
ひとつ思ったのは、1ページで全部見えるわけで、セリフだけ見ると作りとしての面白さはないなと。
編集部員・I上
これで引っ張られるのもそれはそれで厳しいものはあると思いますけど。
事務局長・島田
よくこれだけ思いつくなぁとは感心するけど、ちょっと飽きるな。
編集部員・I上
エロ詩吟みたいな感じですよね。
編集部員・K持
どっかに思いっきり振り切らないと成立しないという気がしていて、あえてという部分もあるんですけどね。
編集部員・T渕
でもこの世界が嫌いという男はいないと思うよ。オフィシャルな場ではこういうネタは……といいつつ、実は嫌いじゃないみたいな。
編集部員・K本
面白かったんですけど、これをモーニングに載せるのはどうなんでしょう? この世界に需要があるのは理解できるので、たとえば、別の雑誌に投稿していただくか、別のテイストのものを描いてもらうか……。
事務局長・島田
才能があるのであれば、受け入れやすいネタで描いてみるということも必要だということかな。で、この作品を支持する人はいますか?
編集部員・O川
えーここで僕が擁護に回るというのはあれなんですが(笑)、みなさんおっしゃるように、下ネタでよくある手法だし、誰もがこういうギャグを考えると思うし、突っ込みどころ満載で読んでいたのですが、あまりにもバカバカしいながら、バラエティの豊かさに飽きなかったんですよ。どんなネタでエロをかわすのかというところにちょっと才能を感じたのと、不潔な絵なんだけど、逆に女の子のキャラクターの清純さというか、読後のザラつきがなかったことを評価したいんですよね。
事務局長・島田
評価をする人が他にいないということで、次回の作品に期待しましょう。

[漫画] 『リボルバー』 勅使河原怜 (愛知県・31歳)

ストーリー:舞台は恒星間輸送船「メデュース号」。宇宙航行中、隕石に衝突し、船内の酸素残量が減少。生き残るためには船員一名の命を絶たなければならなくなった。船長が提案したのは、リボルバー式の拳銃による「ロシアンルーレット」だった……。己だけが生き延びたいと画策する船員たちによって引き起こされる“バトルロワイヤル”の結末は意外なものに……。

事務局員・竹本
この方は僕が担当です。研究職の人で、初めのネームは脳科学に関する話を作ってきたんですけど、今回はSFを題材に選んできました。
編集部員・T盤
でもこれって60年代にやり尽くされたSFという感じだよね。せっかく自分には研究職という得意な分野を持っているのに、それを出さないというのはもったいない気がする。
編集部員・T渕
確かに。すでに誰かしらが描いている話だと思う。
事務局長・島田
では次回に期待し、今回は落選とします。

[漫画] 『タマキ』 米田達郎 (東京都・32歳)

★2次選考通過作品作品の詳細と選考結果はこちら!ストーリー:学園祭で発表する漫才の練習をする女子高生二人。ある日、入院中の相方が息を引き取る。彼女の遺志を継いで漫才を完成させることを決意した少女は、新たな相方を口説いて、舞台に立つ……。

事務局員・笠井
僕はいいと思いましたけど、みなさん評価が低いですね。この瑞々しい感じってすごく良くて、自身の「失われた青春」のことを思ってジュンとしました。
編集部員・Y口
話に山はないけど、僕もいいと思いました……。セリフ回しも良かったし。
編集部員・K本
私は、友人が亡くなって、すぐに別の人と組んで漫才で人を笑わせたいって思う主人公のキャラクターに共感できなくて、話に入り込めませんでした。
編集部員・I上
そこまでキャラクターのことを考えていなくて、ただ雰囲気でこういった状況を描きたかったってことなのかもと思いました。
編集部員・Y原
この人の絵が好きで、担当になりたいと思った。で、プロフィールを見たら「主夫」をやってるっていうんで、その話をこの雰囲気で描いたらいいと思う。扉絵なんかすごくセンスがあっていい。
事務局長・島田
テーマは「漫才」でなくてもいい感じだな。この作品は複数支持があるので残ります。

[漫画] 『2nd.』 亜季山シム (神奈川県・?歳)

ストーリー:女性にだらしないヘアサロンの店長・金田に想いを寄せる黒江(男性)。金田は黒江の想いを知って、もてあそぶように振り回す。憧れなのか、友情なのか、それとも情愛なのか……。オトコの想いを繊細なタッチで描いた淡い“恋愛風景”。

編集部員・K林
僕が担当なのですが、作者が、ゲイが主人公のこの話をどうしてもやりたくて、「これをやらないと前に進めないんだ!」とまで言って描いた作品です。僕はどうしてもこの手の話が好きになれなくて、ゲイの友人にも読んでもらったんですけど、彼も「よくわからない」と言っていて、正直どうすればいいのかって思っているんです。
編集部員・K本
主題や、主人公がゲイかどうかは関係なくて、セリフ運びや登場人物の表情を含めたキャラクター、シーンの流し方なんかが、うまく描かれていた。すごく技術のある人なんじゃないですか? 好きになる正体不明な男の描き方も上手ですし、主人公との対比においてもキャラクターがブレていない。ゲイものにこだわらずに、恋愛ものとして成立していると思う。
事務局長・島田
時流にのってゲイを選んでしまったように見えて損をしていると思う。これだけ、ゲイが一般的になっているのに、今さらという気はする。キャラクター作りはうまいけど、全員が脇役みたいな気はした。
編集部員・T渕
ただ、ろくでもない男にホレていく感じがすごく自然で、読ませる才能がある人だと思う。
編集部員・K林
作者は「恋に落ちるのは理屈じゃない!」と熱く語ってました。
全員
そうだ、そうだ!
編集部員・T渕
そう。恋に落ちるという空気感がうまく描かれてるんだよね。
事務局員・奥村
絵だったり、雰囲気だったりはオシャレだし、人物関係の機微を描くのも上手なんだと思うけど、主人公の心理描写が弱く、脇役の一人になってしまっている気がする。控えめな、それこそ「2nd.」な主人公なんだけど、読者に感情移入をさせるだけのキャラクターの強さが僕は欲しいと思いました。
事務局長・島田
複数支持があれば残りますが、一人だけ? では、残念ながら今回は落選とします。

[漫画] 『映画を作ろう!』 柘植良子 (千葉県・24歳)

ストーリー:南の島に浮かぶ小さな島国・トラトラ共和国。国を蝕む財政難から脱却するため、大統領秘書クリ・カノコの発案で、国のPR映画を作ることになった。秋葉原のメイド喫茶で映画制作費を稼いだカノコが戻ってきて、映画作りが始まったが……。

編集部員・I上
この人は以前のOPENに送ってきてくれた人で、私が担当です。その時はギャグかシリアスかもわからない作品だったので、きちんとどちらかに決めてまとめようという話をしました。作者は最近キューバにはまっているそうで、『パプワくん』のイメージで、南の島があって、いろんな人が現れて……みたいな話を作ろうということで、こうなったんです。
事務局員・田岡
『パプワくん』か……、『パタリロ』のイメージかと思った。
編集部員・T渕
コントに徹していていいよね。
事務局長・島田
でも、こういう話だったら、もっとキャラクターがしっかりしてないとダメでしょう。いつもこんな感じの女の子が主人公だもんね。
編集部員・T渕
もっとケダモノみたいな男をサブに出したらどうなんだろう。この作者の描く男の子は、いつも斜に構えていて、女の子が積極的という設定ばかりだから。
事務局員・田岡
テンポが速すぎて、笑いが全部うわすべっていくような気がしました。
編集部員・T渕
それは、この人の味なんじゃないの? 上沼恵美子っぽいっていうか……。
編集部員・I上
そうなんです。ネームが多いのが、この作者の持ち味なんで、もっと増やしたほうがいいのかなって。
事務局長・島田
いや、ネームを減らしても間が持つようなキャラクターを作れないとダメでしょう。ギャグだったら、造形だけでも覚えてもらえる華のある人物を出したほうがいい。みんな脇役な感じがする。
事務局員・奥村
複数評価がないようなので今回は落選とします。

[漫画] 『嘘つきのひと』 兵庫しんじ (兵庫県・31歳)

★2次選考通過作品作品の詳細と選考結果はこちら!ストーリー:「俺実は地球人ちゃうねん」とトートツな告白をする“嘘つきな”フジイくんの「宇宙船」作りを手伝うデザイナーの朝野。「素の自分」をさらけ出すのが怖くて、眼鏡をかけて“変装”しながら人との関わりを避ける日々を送る。フジイくんの「嘘」のおかげで、次第に自分の殻を破り始める朝野。そんな朝野を見て、「これで帰れる」と言うフジイさん。彼が向かった先は……?

事務局員・奥村
これは最初の持ち込みを僕が受けて、何回か直しをお願いして、この形になりました。
編集部員・T渕
完成度は高いですよね。この人も「これを描かないと前に進めない」って意欲を持って描いた作品です。
事務局員・奥村
熱量のものすごくある人で、関西の方だったので打ち合わせはいつも電話でしたが、何時間も話しましたね。
編集部員・K本
確かに面白かった。
編集部員・F沢
セリフがいいですよね。「素の見えない人間に人はついてこない」とか。
事務局長・島田
そうそう。セリフのキレがある。新人賞では珍しいくらい地に足の着いたものの考え方をしてる人だよな。
編集部員・F沢
単に露悪的なスタンスじゃなくて、タイトルに現れているようなものを追い求めて描いているような気がします。
事務局長・島田
ストーリー、プロット、アイディア、社会性、人間観といい、文句なしの作品でしょう。
編集部員・K本
いくつかの違うキャラクターが一人の人間だという話に一貫性があって読めたし、突然宇宙人が出てきても自然に読める。だからこそ一つの嘘がしっくりくる。絵もいいですよね。
事務局長・島田
地味だからちょっと損はしてるけど、よく見るとけっして古臭い絵ではない。ただ、構成力はまだもう一歩かもしれない。
事務局員・奥村
構成が上手ではないという部分は確かにありますね。それは作者に言いたいことがたくさんあって、この作品も初めはこの2倍くらいの内容を詰め込んで描いてきた。ページ数に対する言いたいことの分量が体でわかってくれば、もっといいですね。
事務局長・島田
もっとすっきり描ければ連載もできそうだよな。
事務局員・奥村
なので、ぜひここでデビューしてもらって、腰を据えて連載を目指す作品に取り組んでもらいたいんです。
事務局長・島田
残ることにまったく問題はないですね。では次。

[漫画] 『今日のキョムちゃん』 ギュムゲバ (東京都・26歳)

★2次選考通過作品作品の詳細と選考結果はこちら!ストーリー:シュールでかわいくて、全キャラクターの目が死んでる……サイレント4コマ。

編集部員・T原
絵がすごくかわいいし、面白いと思いましたね。ただ「主人公」がいないんですよね。主人公が立てば、かなり良いんじゃないでしょうか。
編集部員・K持
これだけ自発的に4コマを描き続けられる人はいないですよ。4コマを描いていく才能があると思う。
編集部員・K本
私はバカウケしました。私が読んでる横でY田さんも爆笑してましたよ。
編集部員・I上
私も結構ハマりました。
事務局長・島田
面白いというヤツがこれだけいるんだから通過ということでいいんだけど、俺はこの作品に独自性を感じないんだよなあ。どことなく既視感があるんだよ。それって、4コマというジャンルでは致命傷じゃないかなと思うんだけど。
事務局員・奥村
カラーだからよく見えるという気もします。それこそウェブ向きというか。
編集部員・K持
確かに現状だと、活版印刷では面白さが半減するような気もしますね。
事務局員・竹本
採点評を見ても両極端だし、好きか嫌いかというところですよね。
事務局長・島田
イマイチ釈然としないんだけど、評価するヤツがこれだけいることだし、これは通過します。

[漫画] 『ナイフ』 ゆうきゆうき (埼玉県・22歳)

ストーリー:一度「スイッチ」が入ると周りが見えなくなってしまう美大生の本間は、自分の絵で「伝えるべきもの」に悩む日々を送っていた。そんなある日、本間は絵に関わるあるトラウマを抱える中学生・辻祐一と出会う。

編集部員・M田
この人は担当作家さんのアシスタントで、これが処女作なんですが、処女作としてはかなりしっかり描けていると思うんですよね。すごく一生懸命描いてあるし、マンガに対する姿勢もすごく一生懸命な人なんですよ。
事務局員・竹本
この人は一生懸命描いているのはわかるんだけど、信じられないくらい話が暗いですよね。正直、僕は読んでいて気が滅入りました。
編集部員・I上
楽しめない「暗さ」なんですよね。
事務局長・島田
「漫画がうまくなりたい」という意欲はすごく感じるんだけど、残念ながら現状ではまだ最終に残すレベルではないように感じる。作品自体を積極的に評価する人もいないようなので、今回は落選として、次に期待しましょう。

[漫画] 『初恋無残か』 工藤耳子 (熊本県・32歳)

ストーリー:同級生の井沢君のことが気になって仕方ない高校1年のマキ。愛ってなに? 恋ってなに? 初恋はいつだって苦くて……カッコわるい!

事務局員・篠原
明らかに手を抜いているというか「雑」に描かれているので、最終選考に残す水準にはないと思いますが、僕はこの作品が今回の中で一番読んでいて楽しめたんですよね。こういう話がわりと好きというのもあるんですけど、ここでこんな絵を入れるんだという驚きが随所にあったのがすごく良いと思いました。
編集部員・K本
私も結構楽しんで読みました。漠然と「雑だな」と思って読んでいたんですけど、最後の「女がいるんだ」ってところでショック受けて、「妹だったんだ」ってところでホッとしたんですよね。知らない間に主人公に共感してた(笑)! 表情やセリフが良いんだろうなと思います。
編集部員・I上
私はどことなく漂う「古さ」がすごく気になりましたね。楽しく読めはしたんですが……。
事務局長・島田
作家自体の才能を評価する人はいるみたいだけど、「残してくれ」っていう感じでもないんだよね?
事務局員・篠原
今回はここで落選しても、僕はぜひ担当したいです。
事務局長・島田
ちょっと今回の絵だと残しにくいな。まあ担当希望もいるようだし、次回に期待します。

[漫画] 『蟹と毒と妻』 山目茜 (東京都・19歳)

ストーリー:夏佳の旦那は最近売り出し中のバンドのボーカル・忍。夏佳は次第に忍との距離を感じ始めて……。

編集部員・S倉
話はありがちだし面白くないんだけど、話が進むにつれだんだんマンガがうまくなっていくのが印象的でした。初めて漫画を描いたのかな。
事務局員・篠原
話はありがちで冗長なんですが、打ち合わせをして、何本か描いている内にすごくうまくなるんじゃないかという気はしました。意外と男と女の機微みたいなモノを描きだす才能があるような気もするし。あと、とても若い!
編集部員・O川
ただ、今回の作品は少なくとも最終選考の水準には達していないと思う。
事務局員・篠原
僕は期待値を込めて高い点をつけたのですが、これも先ほどの『初恋無残か』と同じで、「残してほしい」ということではないです。
事務局長・島田
……それでは、他に誰か発言したい人もいないようだし、今回は落ちということにします。

[漫画] 『マイ・フェア・オールドレディ』 ももえ秋良 (東京都・23歳)

ストーリー:女に家を追い出されたサミー。売れないバンドマンの彼にはアパートさえ借りられない。困り果て街を歩いていると立派な一軒家が目に留まる。そこにはなんと「空き室アリ。家賃光熱費一切無料」の文字が! 大家はナタリー・デュボア、83歳。マイペースな婆さんとの奇妙な共同生活は、サミーの光明となるか!?

編集部員・K林
僕はこれ好きなんですよね。お婆ちゃんのキャラクターが造形を含めてすごく良くて、今回の選考ですべて読み終わった後まで唯一覚えていたんですよね。インパクトのあるいいキャラ描くなあと思いました。何故舞台が外国なのかとか、ツッコミどころ満載なのはわかるんですが、そんなのは打ち合わせでどうにでもなることだし。
編集部員・K本
「自分探しもの」に食傷気味の中、この作品は最後まで結構楽しみながら読めたんですよね。どういうところが良いのかなと考えると、やっぱり婆ちゃんのキャラのあたたかさと主人公の表情の良さなんですよね。その「キャラで漫画を読ませられる」点に実力と可能性を感じました。全然違う題材に取り組んだら、思ってもみないような良いところが出てきそうな気がしましたね。
事務局員・田岡
あまりに突っ込みどころが多いので、僕はそればかり気になってしまいました。おそらくフランスだと思うんですが、キャラの名前以外の設定がまんま日本といえるものだし、こういうツメの甘い作品を最終選考に残すのはどうかなと思います。
編集部員・K林
この作品に関してそういうところがあるのは認めます。ただ、やっぱり作家としてはすごく可能性を感じます。
事務局員・奥村
「残したい」という積極的評価をする方はいませんか?
編集部員・K林
僕は残すに値すると思います。
事務局長・島田
……他にはいないのか。K林の言うこともわかるし、かなり難しい判断にはなるけど、今回は見送って次回に期待してみよう。
編集部員・K林
そうですね。

MANGA OPEN事務局員プロフィール

島田
「ったくバカかコイツは!」とメールをチェックしながらキレるのを、出社後の習慣にしている「モーニング・ツー」編集長。性格的に好き嫌いがハッキリしており、厳しすぎる指摘で選考会議を凍りつかせている。肉とビールとスイカとミカンとラーメンとチャーハンが大好き!
奥村
「シャツのボタンは必ず3つ外します!」が信条の艶男(アデオス)。趣味はゴルフだが、スコアメイクより道具に走る“書斎系ゴルファー”。選考会議では積極的に発言し、一種のムードメーカー的な存在、を(本人は)目指していると周囲から思われている。
笠井
入社後丸8年、週刊誌に在籍し、今期からモーニング編集部へ異動した“新人”。先日、彼女に求婚したものの「Mの人との××(ちょめちょめ)はつまらないっ!」とダメ出しをされ、失意のドン底にいる「はぐれ漫画編集純情派」(キャバクラに行くと藤田まことに似ていると必ず言われる)。
竹本
右手にMドナルドのハンバーガー、左手にフライドポテトをつかみ、油で唇をテラテラさせながら、「オレ痩せなきゃな〜」とつぶやく筋肉デブ。先日、年下妻と結婚を決め、希望と憂鬱の“あざなえる縄”のごとき日々を送る。選考会議では大きな声でハキハキ発言する体育会系。
篠原
細い目をして、いわゆる大阪のオバちゃんのように、ずーっと自分のことを話している自分好き。酒の席では、ずーっと自分の体験による、身も蓋もない下ネタを話している恥知らず。選考会議でも批評なのか自分の話なのか、わからない話が多いが、たまに鋭い指摘も。
田岡
正面から見た青魚のような顔で、たどたどしい関西弁を操る入社2年目。「めっちゃワヤですやんケ、ホンマ!」などと自分的にはオモシロ関西人を演じているようだが、彼の語りは総じてツマラナイ。応募原稿への誠実な対応のみが長所。