東村アキコ+森高夕次体制下1回目のコンテスト。森高さんの原作者としての視点も加わり実践的なアドバイスが連発。単なる選考会ではなく、いかにプロデュースしていくかが熱く語られた。また物語の内容と尺の長さが合わないと大きく評価を下げることがわかった。東村賞&編集部賞をW受賞した『絶叫の臓器強盗団』が大賞を取り損ねた理由もそこにあった! 読むと今日から役に立ちます。スミからスミまで舐めるように堪能して下さい!

東村アキコ
選考をやって3度目ですが、力作揃いで、だんだんと投稿作のレベルが上がってきているんじゃないかと感じました。選考してて楽しかったです。
森高夕次
初めて選考委員をさせて頂きます。私は、モーニングにはもう1つちばてつや賞もあるので、その賞の棲み分けって何なんだろう? ということを念頭に選考しました。ちばてつや賞の方は、伝統ある賞ということでよりマンガの即戦力、ということなら、MANGA OPENは、作品自体の完結性、完成度、この作品が描けたらあとは死んでもいい、というところかと思って選考しました。

[漫画] 『MOTHER』 北戸田漫画製作所 (埼玉県・30歳)

編集部員・G藤
担当です。2次選考の際にとても気になりまして、担当にさせてもらいました。本人はマンガを描くのが好きで、とにかくどこかでデビューしたいと考えてるようでした。私が一番この人に関して思うのは、特徴的なコマ割等を武器にしながらも、読者にちゃんと情報を知らせていくことの大事さ、わかりやすさの大切さを覚えていってもらいたいと思っています。
事務局長・藤沢
選考委員のお二人のコメントを見ると、共通しているものがありますが、エキセントリック過ぎたという感じでしょうか?
東村アキコ
良いところは、どのページ、コマも構図が素晴らしいことです。こういう構図で漫画を描ける人って、あんまりいなくて、この構図を作れるだけで、大分才能があるなと思う。普通、単純な会話劇だと最初に話す方が右に来て、その次に話す人を左に置いて、というように単純にやってしまうことが多いんですが、この人は自由自在に構図を作っている気がして、色々なものが描けるんじゃないかなと思うんですよ。例えば、不倫物だったり、単純に恋愛物でも、この人のこの間と構図とコマ割とがピタッとハマったときにはそれが武器となると思いました。
 まだ若いので、マンガを描くこと自体がテレ臭いんだと思うんですけど、もしかして将来すごい作家さんになるかもと。車の中のシーンなんて、私より構図の取り方が全然うまくて、真似しようかな、っていうくらい。23Pとか。こういう思い切った構図を描ける人は、なかなかいないぞと思ったんですよね。「マンガ遺伝子」はあると思います。だからもう少し肩の力を抜いて、普通の話を短めで描いてみればいいのでは。
森高夕次
私はおっつぁんなので、構図が定型でないところは正直読みづらいと感じました。ただ絵が上手いという感想は完全に一緒で、一枚絵が上手いというのは間違いない。41P目の大きな絵とか、センスを感じました。しかし、これは今回の作品全体に言えることなんですが、モーニング本誌に載りそうな漫画が少ない。どれもモーニング・ツーや、アフタヌーン、IKKIなどオシャレ系の雑誌に載りそうだな、と思ったんですね。そういう意味では、これは類型的である、だれかに影響を受けていると感じたんですよね。自分はおっつぁんだからオシャレ系のマンガは全部同じに見えたりもするんです。だからそこにプラス・アルファがないと、ダメなのかなと思うんですよね。でも、将来性はものすごく感じます。
事務局長・藤沢
確かに、2次選考でも物議を醸しましたね。
編集部員・M本
ちょっと聞きたいんですけど、この作品って、この方は奇をてらった感じで描かれたのか、あるいは本当に真剣にやってこういう風になったのでしょうか?
編集部員・G藤
次のネームも拝見したんですが、この話と似てるんですね。強烈な女性のキャラクターが出てきて、世の中に啖呵を切っていくというような。それ自体は魅力的ではあるのですが、バリエーションがない可能性はあるかも知れません。だからある意味真剣に天然でやっているんだけど、周りから見れば奇をてらっているというように見られるということもあるのかも知れません。
事務局長・藤沢
編集長の感想はどうですか?
モーニング編集長・島田英二郎
私も、上手いなとは思ったんだけど。ただ差別化っていうのが難しくて、他の作家さんでもそうなんですが、上手い人って、すごく上手いんだけど、そのジャンルはすでに激戦区で、そこで飯を食おうとしたらものすごい、頭一個抜けるものがないと無理ですよ、というところで勝負しているものが多いのかな、という感じがするんです。これも、やはり流行りのジャンルなんじゃないかなあと。あとパーっと見たときに、上手いのはもう異論はないんですが、顔の印象が無い気がするんです。私はですが、漫画はやっぱり顔が命だという気がしてて、マンガの中でこの人の顔はコレだ! というのが無いと、商品になっていかない気がするんです。例えばモーニングで表紙を描いて下さいと頼んだときに、ああ、あの人の絵の漫画だね、ってならないと。そういう絵柄を発見できれば、この先が見えてくるんじゃないかと思いました。
モーニング・ツー編集長・田渕
さっきの東村さんの「マンガ遺伝子」の話なんですが、こういうセンスって、多くの漫画を読んだ蓄積で出来てくるのか、もっと生得的なものなのか、どっちなんでしょう? この方は、どんな作家から影響を受けたのかな?
編集部員・G藤
えーと、コレという名前は聞けませんでした。この方一人、という風には絞れないと。
東村アキコ
でもヤマシタトモコさんとか、南Q太さんとかを彷彿とさせますよね。
いずれにせよ、担当さん次第だと思います。この方のポテンシャルだと何でも描けるような気がするんですよ。この構図とコマ割りと会話を武器に、という風に、どんなお話でも描く気になるんじゃないかな?と。これが一番やりたいんじゃないかって。
モーニング編集長・島田英二郎
『特上カバチ!!』みたいな話でも?
東村アキコ
はい、いいのでは。一番描きたいのは空気感を描きたいんじゃないかと。それってたぶん、出来る人と出来ない人がいて、読者が置いてけぼりになりやすい話だったとしても、読んでいて清涼感というか、ヤマシタトモコさんみたいになれるのでは、と思うんですけど。でもちゃんと担当編集が誘導しないと、もったいないことになるんじゃないかとは思います。現状、本人の中ではキャラが勝手に動いていってる感じに思えます。
事務局長・藤沢
ありがとうございました。担当ともども今後に期待ということで。

[漫画] 『melt water of gentleman 〜おじさんの雪解け水〜』 窓ハルカ (秋田県・24歳)

編集部員・J甲
担当です。この方は、漫画家をずっと目指していて、色々と新人賞に出して、奨励賞とか期待賞を何度か獲得されたそうです。ただ『少年チャンピオン』に2、3回4Pのギャグが載ったんですね。この話っていうのは最後の2Pをどう解釈するか、というところがポイントだと思いました。僕も「ラブ注入」をこのタイミングで出すのはすごいセンスだな、と気に入りまして。あとこの作品を描いたきっかけは、実際にこういう体験があったからだそうです。
一同
(爆笑)
編集部員・J甲
よくよく聞くと、変なおじさんが小学校に来て、一緒に給食を食べたことがあって、「あれは何だったんだろう」と思い出して描いたそうなんです。そのときこの人、面白いなと思いました。ちょっと絵が稚拙に見えるので、そこは気になったのですが、コマ割りなどは上手いなーと思ったり。キャラの顔が、表情のつけかたとかも上手いなー、と。面白いものを描きそうな方なんじゃないかと思いました。
事務局長・藤沢
部内選考の点数もそう高くはなかったんですが、カルト的な人気で残りましたね。
森高夕次
ボクもこれは、評価が高いんですけど、確かに18・19Pが無いと、評価は最悪だったんですよ。16Pまでだと、結構最悪だったんですけど。しかしラストのオチがあることによって、現代の吉田戦車になれるのかな、とまで思わされました。絵は下手クソすぎるんですけど、背景のために上手いアシスタントが入って、このキャラクターの魅力があれば連載には近いんじゃないかな、と。実用性がありそうな感じがしました。
事務局長・藤沢
東村さんはちょっと辛めですか?
東村アキコ
キャラクターもカワイイし、キャラクターがちゃんと描ける方なんだと思います。ラストの1Pも好きだし、個人的には全然好きなんですけど、例えば給食当番のくだりとか、もうちょっと面白いと良かったかなーと思いました。今だとただのシュールになっちゃってるんで、先生もすぐ受け入れちゃっていますし、ここがもう一工夫、もう少しマジメにやると、もっと良くなったのではと。絵もいいし、おじさんの表情もいいんですが……もうちょっと丁寧にやったら、もっと良い作品になったのでは? ラストで、主人公がおじさんを受け入れているけど、それはマンガ慣れしている私たちだから3周回って受け入れている、というようなところがあると思うんですが、普通の何気ない読者さんが見たら、まずは「はあ!?」っていう感じになってしまう可能性も高いと思うんですよ。
モーニング編集長・島田
なんでこういうマンガって、絵(背景)を丁寧に描かないんだろ? しっかり絵を描けばいいじゃない?と思うんだけど。なぜみんなそれをやらないんですかね。
東村アキコ
それはですね、新人賞の募集告知を見てから描き始めるからなんですよね。「あっ、これ来月だ。よし! やる!」っていう感じで(笑)。うちのアシスタントさんとかを見ていると、みんな取り掛かりがやや遅いかなとは思ったり。
モーニング編集長・島田
不条理系なギャグは、こういう抜いた絵で描かなきゃいけないという思い込みがあるような気がするんだけど、昔の赤塚先生なんかは、背景もすごいキッチリ描いてるんだよね。雑な絵である必要はないんだよ。雑だと評価として、適当に描いて、たまたま当たったんじゃ?と取られてしまう可能性が少しある感じがしちゃうんです。だから全力でやってみてはと思います。
編集部員・J甲
いや、でも実際に話したときも、背景がおざなりに見えるから、改善した方がいいかもしれないとは伝えたんですが、本人によると「全力で描いてる」ということなんです。全力MAXだと。だから頑張るしかないとは思うんですが、要はアシスタント経験がないことで、背景をどう描くかとかが掴みにくいところもあるんですね。わざとトガって抜いているという感じではないんです。
モーニング・ツー編集長・田渕
でも、背景はアシスタントさんでプロで描ける人も多くいるのだから、組み合わせていけば連載もできるのでは?
森高夕次
いや、でもホワイトの修正だけは、誰でも丁寧にできると思うので、丁寧にやった方が良いという気はする。
事務局長・藤沢
それでは、これも担当ともども大いに期待ということで(笑)

[漫画] 『歩道橋で会いましょう』 魚屋猫助 (東京都・25歳)

編集部員・Y原
この方は美術大学出身で、とてもやる気のある方です。1週間に1回、ネームを出して来られる、という感じです。実はもう編集長のボツをもらったのですが(笑)。その理由は、この『歩道橋に会いましょう』を超えてないから。なるほどと。それで、先生お二方に伺いたいのですが、この先どうしたらいいか、とちょっと悩んでいたりします。
森高夕次
これは、コンピューターの線なんですね? あと、魚屋猫助という、ネーミングセンスは、非常にいいですねー。なぜ、こんな枯れた、落語的なセンスをお持ちなのか。マンガの内容からそこまで含めて非常に良いセンスだなと感心しました。というわけでボクの評価は非常に高いんですが、一つ断っておきたいのが、マンガって死生観を描くと、評価が上がっちゃうものだと思うんです。単純に、勝負だとか、仕事で頑張って、というマンガを描いて読者を感動させる方が、難しい。それよりも死んだ生きた、という方がハードルは下がる。その違いは、前提としてあると思います。
僕は、この作家さんは、モーニング本誌でも、ツーでも、ビッグコミックオリジナルに載ってもいいと思いました。オシャレ系の雑誌と、おっつあん系の雑誌、両方のセンスを持っているというハイブリッドというか。両方を持ち合わせていて、上級者というか、やられた、というか、良い評価しかありません。
事務局長・藤沢
編集部でも順位評価は1位でした。
東村アキコ
私も評価がすごい高いです。完成形が来たな、という。そしてこれから、という疑問も、私は心配ないのでは、と思いました。というのは、マンガ界でありそうでなかった、「星新一系」という新しいジャンルが狙えるんじゃないかと。毎回ふわっとしたオチがあるという連載というか。星新一さんのお話って、こんな感じだったと思うんですよ。SFってことじゃなくて、この作家さんもこういうとぼけている絵だから、どんでん返しが意外な感じになって面白いっていうのあるじゃないですか。
モーニング編集長・島田
東村さんの仰っているのは、すでにこれがジャンルとして成立している、ということでしょうか? 「少し不思議な話系」というのは、それこそ激戦区なわけですが。でも、この人は唯一無二のジャンルとして成立しているんだとしたら、全然アリなんでしょうね。それで掲載していって、単行本を出してみる、という考えもあるのかも知れない。
東村アキコ
可能性はあると思うんです。たとえば死んでしまった人たちの、一人一人の顔、表情、人間にすごい思い入れがあっていいんですよね。雑じゃなくて、みんないい顔してるんですよ。それでこの人たちがみんな死んだのか、って考えるとそれはそれで心動かされるし。メガネの人は、まるで自殺っぽいな、とか思えてしまうような存在感があります。
森高夕次
そうですよね。しかも、そのシーンの相方が途中ではけちゃうのが、すごくセンスを感じました。25歳ということですが、35歳に感じましたね。
モーニング・ツー編集長・田渕
落語っぽい、と仰ってましたけど、文楽っぽくもあるなと思いました。人形劇的な面白さですね。目の動きだけでうまく表情を出している。
森高夕次
うまい掛け合いで、余分なものがない。SFを突き進め! という選択肢もあるんじゃないでしょうか。常に舞台が現実的である必要はないと思うんです。

[漫画] 『アメリカ陰謀説』 平田ペン (東京都・27歳)

事務局長・藤沢
選考委員お二人の評価が分かれましたね。
事務局員・駒木根
平田さんは27歳。漫画賞に出すのは今回が初めてだそうです。持ち込みを受け、面白いと感じたのでエントリーしました。将来的にはギャグ漫画よりも笑いのあるストーリー漫画を描きたいのだそうです。
事務局長・藤沢
点数の高い東村さんからコメントをお願いします。
東村アキコ
好きな漫画です。とくに登場人物の男の子が超イイ。言葉や表情から、アメリカの陰謀だと本気で信じているところがかわいかったです。ただ、この男の子のみずみずしさに比べると、おっさんの顔とかはウケを狙いすぎていて滑ったかな?というか…。普通のおっさんの方がよかったんじゃないかと思いましたね。
一同
(笑)
東村アキコ
たぶん、このネームをすぎむらしんいち先生が描いたりしたら、すごく面白いと思うんですよ。でも私は嫌いではないです。最後の「簿記三級を取る」というオチも好きです。
事務局長・藤沢
ちなみに編集部の選考では三位でした。
東村アキコ
高い!(笑)
事務局長・藤沢
森高さんは「評価不能」ということですが…。
森高夕次
三位は高すぎると思います(苦笑)。でも僕も嫌いというわけではなくて、作品について理解はできるんです。昔、ヤングマガジンで描いていたタイム涼介を思い出しましたね。彼は雑誌に載った時、読者に分かり辛いと思われたかな、という印象がありますが、僕はタイム涼介さんも好きなんです。この作品にも似たような匂いを感じるのですが、ギャグ漫画として評価するには、ちょっと完成度が足りないように感じました。だから高い評価をつけることができなかったんです。
事務局長・藤沢
どの点が足りないように思われましたか?
森高夕次
足りないというか、既視感がありますね。今までにあったギャグだと思います。あくまで僕の感想ですが。新しい感じがしなかった。
事務局長・藤沢
コント的な漫画ではありますよね。編集部では、あまりマイナスの意見は出なかったですが。担当は、作者のどういった面をブラッシュアップしたいと思いますか。
事務局員・駒木根
今新しいネームに取り掛かかっている最中なのですが、とにかくキャラクターの台詞がいいんです。なのでそれを引き立てるようなコマ割りや構図を磨いていってほしいです。本人の最終的な目標は、サッカー漫画を描くことだそうです。
東村アキコ
この外国人キャラとか、もしかしてサッカー選手からもってきた顔なんですかね。
事務局員・駒木根
本人は一時Jリーガーを目指していたこともあるそうです。
一同
(笑)
事務局長・藤沢
目指すことは、一応、誰でも出来ますね(苦笑)。「笑わされたら負け」という言葉もありますが、今後はフィジカル面も伸ばしてもらうということで、頑張っていただきたいと思います。

[漫画] 『FLAT』 髙田ジューショク (東京都・31歳)

森高夕次
実は今回の選考で、全ての作品に「適正ページ数」をつけさせて頂きました。わかりやすく言うなら「この内容ならこの位のページ数で描けるだろう」と思ったページ数です。この作品は、ピッタリの作品でした。
編集部員・K藤
ペンネームは「ジューショク」ですが、お寺の方ではありません。ご本人はコメディやゾンビ映画が大好きで、「ホラーギャグを描きたい」とおっしゃっていますが、次はどういう作品を描かせたらいいのかと思案しているところです。
事務局長・藤沢
評価点の低い東村さんの方からコメントをお願いします。絵があまりお好みではないということかと思いますが。
東村アキコ
背景の絵は好きなんですけれど、主人公の顔の絵が正直ちょっと…。おばあちゃんの顔はかわいいですね。なんというか、好みの問題だとは思うんですけど。話の方も、やりたいことはわかりますし、作者の趣味も理解できるんですが、もう少し設定をちゃんと作ってほしかったです。この人たちは何者で、なぜこのようなことをしているのかがハッキリしなかった。たとえば人をまな板で切るシーンがありましたけど、食料にするつもりなのかなんなのかよくわかりませんでしたね。歯をコレクションしてるというシーンも理由が分からなかった。全体的に設定が緩いと思いましたね。
事務局長・藤沢
少々分裂気味というか、作り込みが足りないという印象ですね。
東村アキコ
ええ、急にボランティア部の人が訪ねてきたシーンでは「ボランティア部ってなんだろう」って。余計な設定を出しておいて、しっかり描けないのなら、全部無しにしちゃえばいいのにと思います。
事務局長・藤沢
部内選考ではちょうど中くらいの順位でした。森高さんは、最高点に近い評価ですね。
森高夕次
たしかにこの作品は、好き嫌いで言ったら嫌いという人が多いと思う。でも、そういう感覚はさておき…。たとえば最終選考に残った「歩道橋で会いましょう」の魚屋さんがいわゆる"確信犯"であるように、この『FLAT』も、一見無軌道なようで実は狙って描かれたのかなという感じがするんです。未完成な部分までも狙って描かれたのではないかと。もしかしたら僕の深読みかもしれませんが。作品自体に商業性は感じませんが、純粋に芸術性やエンタテインメント性を評価したいと思ったので、このような高評価としました。ちば賞とは違う、MANGA OPENならではの評価と申しますか。あと、この人の未熟さからくるオリジナリティなのかもしれませんが、結果として高いと感じました。
東村アキコ
キメ台詞がかっこよく思えません。殺す時に「よい旅を」って、これはちょっと……。
事務局長・藤沢
ハードボイルドっぽいですね。
東村アキコ
それなら前半に伏線として「旅」というような言葉を出しておけばいいのにと思いました。作為的というか、未熟な感じがしましたね。殺し方なんかも、普通に銃で殺すんだ……って感じで。体操帽と体育着みたいな恰好で殺しに来るのも、ディティールが甘いというか。
編集部員・K本
ハードボイルドものなど、男の世界を描いた作品って女も読めると思うんですが、この作品ではあまりかっこ良くない男の人がハードボイルドぶってる感じなので、いいとは思えませんでした。
モーニング・ツー編集長・田渕
こういう泥臭いいわゆる青林工藝舎っぽい絵で描かれた切ない話を送ってくる人って、新人賞には多いじゃないですか。でも実際、そういうマーケットって少ないと思うんです。こういう作品を描いてくる人って、それを認識しているのか何も考えていないのか、どうなんでしょうね。
編集部員・K藤
考えて……いないと思いますね。
モーニング・ツー編集長・田渕
自分の表現したい世界をそのまま表現したって感じなんでしょうか。
東村アキコ
本人は『鮫肌男と桃尻女』を描いてるつもりなんじゃないですか? あとカネコアツシとか。
モーニング・ツー編集長・田渕
なるほど。
東村アキコ
でも、さきほど森高先生のお話を聞いてから、設定は雑だったけど絵はちゃんと描こうとしているのでは、と思い直しました。教室なんかも、隅々までしっかり真面目に描こうとしてる。
森高夕次
確かに、望月峯太郎さんの絵の影響が見られるかもなあ。彼の影響を受けた投稿作って、最近は多いんですか?
事務局長・藤沢
以前は多かったかな。最近では浅野いにおさん的なものの方が多いような気がします。男女の評価の違いが面白く感じられた作品でした。この作家の表現がどのような方向に向かっていくのか期待しつつ、次の作品に行きましょうか。

[漫画] 『かくう生物のブルース』 沼田ぬしを (東京都・23歳)

森高夕次
自分の才能評価はとても高いです。ただ第一印象としては、デリケートなテーマを読者に伝える際に、余分なことをやり過ぎているという気はしました。この漫画、適正ページ数が25枚くらいなんじゃないかな。作者はファンタジーを描きたいんだろうとは思いますが、ここまで絵が上手いのなら何だって描けるんじゃないか、と思いました。むしろファンタジーに固執したら、活躍の場が狭くなってしまうかもしれない。商業性の高いテーマを選べば、モーニング本誌で十分連載できると思う。
東村アキコ
画はうまいし、キャラもかわいいし、一見プロみたいなんですけど……。モーニングに投稿するからには、色々な人が読むことを想定しなきゃいけないと思うんです。誰が読むか分からない、そういう状況で描き始めるわけです。同人誌とは違うんですよね。それなのに、このテーマ選びはちょっと無神経すぎると思います。この人自身の経験は置いておいても、私だったら、こんな画描けないですよ……。コマの割り方や画の感じも、淡々としすぎているっていうのかな。冷たく見えてしまうところは損。他のテーマを選べばうまく描けるかもしれないし、絵も上手いけど、全部のコマのテンションが同じなので、私には、漫画的な魅力が薄く思えてしまいました。
モーニング・ツー編集長・田渕
確かに、コマ割りが全く頭に入ってこない気がしました。なぜこんなに読みにくいのだろうと。
東村アキコ
湧きあがるものを紙にぶつけてる、って感じがあまり感じられない。台詞も個人的にはもっと生々しさが欲しかったです。女の子のキャラも、なぜ二人出す必要があったんだろう。単に黒髪とトーン髪を描きたかったのかな。
事務局長・藤沢
森高さんも演出過多ということを仰っていましたが。
森高夕次
確かに、女の子のキャラは二人も要らないですよね。一人でもいいと思う。いろんなことをやりすぎるから、読んだ時の印象がマイナスポイントになってしまうんです。テーマに触れてしまうとその時点でシャットアウトされてしまうと思うので、やはりそこは置いておいて才能の方を評価してあげたいと思います。
東村アキコ
こういう方は、原作ものを描けばいいのかなと思います。こういうジャンルを描く人がピタッとはまるところがあると思う。
森高夕次
この人にはお題を与えてあげたらいいと思うんです。たとえば『ナニワ金融道』みたいなものを描いてみたらどう? とか。あんたのセンスで『カバチタレ!』描いてみろとかね。
事務局長・藤沢
そうなると編集者の役割も重要ですね。
森高夕次
物理的に絵は上手いですからね。好き嫌いはあるといえ。画力は間違いなくあるので。

[漫画] 『ピーピングトム』 矢島光 (東京都・23歳)

編集部・K本
私が評価したのは動きのライン取りがきれいな点です。バトンを受け取っている時の身体の動き方とか感覚的なところにセンスがある。バトントワリングの全国大会に出ている方です。王道を狙っていて素直な子なので、かなり将来性があるのでは。
森高夕次
この作品、編集部の評価が2番目というのはちょっと違う気がします。スポーツ漫画は描かない方がいい方です。荒削りすぎて、一定のレベルに達してない印象を持ちました。スポーツを見せる時は、どこにキャラクターが立っていてどういうコマの流れでどういう動きをしたかという点に注意する必要があります。これはなんとなく絵が入っていてそれっぽい気がしますが、わかりにくいんですよね。この人がスポーツ漫画を描く基礎をおさえてないからなんです。たとえば漫画のコマとコマのつながりの切り返しに関してです。ABで進んでいるのに次のコマになったらBAという切り返しになっています。8Pの描き方が漫画を描きなれていない人にありがちなパターンに陥っています。キャラクターがどこに立っているかわからないのです。1つのコマに複数の人が入っていてその人の立ち位置が理解しづらい。スポーツ漫画にこれがあるとかなり読みづらいなという感じがするが、全編を通してそのテイストがある。余分なことを描き過ぎてもいます。バトンのテクニカルな部分を描いているのですが、そこに興味を持って読めない。新人賞の投稿作にそこまで求めるのはハードルが高いのかもしれない。ただ、完結した一作品と考えて、いまいち薄い気がしました。それらの理由から2番目の高評価というのは明確に違うと思いました。
事務局長・藤沢
編集部の中では平均点が高い作品でした。森高さんの適正ページ数が35枚っていうのは、単純に分量うんぬんより、センスと題材が合ってないんでしょうか?
モーニング・ツー編集長・田渕
確かに絵はうまいのに人物がどこに立っているかわからないですね。人と人の位置関係もわからないし、しかも人物の足が地についているように見えないですね。ポーズのトレース。
森高夕次
この方の才能は認めますが、もう少し描きやすいものを描いた方がいいですね。OPENという賞でみたとき高い評価はできません。
東村アキコ
バトンを投げてがしってつかみそこねるくらいで面白がれというのはキツイ。靭帯切るぐらいの何かがないと盛り上がりに欠けます。バトンを投げてつかむのがスラムダンクの桜木の庶民シュートなんですかね。最後にこれができたら「モテるかな」というセリフもありますが、それじゃモテないでしょと思いました。投げて受け取るだけで49Pは少し長すぎますね。バトンが目に刺さるとかのドラマがないとこのページ数は長すぎる。こういう題材をやるなら、バトンをしらない人がバトンを面白いもんなんだなと思えなければだめなもんだと思います。次からは別のテーマでやればいい。あと、登場人物が多すぎます。なんで主人公側のキャラの3人がずっと出てくるのか。
森高夕次
僕も登場人物は主人公とヒロインの2人でいいと思いました。それでバトンを取るだけで20Pの漫画。完成度高めようとしてキャラを増やすから読後感がよくないんです。
東村アキコ
確かに女の子はかわいいですけどね。特に身体とかはかわいいと思いますけど……。
事務局員・篠原
2次選考会では伸びしろがあるのではという意見が多かったですね。
森高夕次
この方はこんなに本格的に描かなくていいです。もう少しおちゃらけた題材を選んだほうがいいですね。
東村アキコ
ユーモアのセンス少しあるし、王道が描けそうな気もしますが……。
森高夕次
完成度の高いものを求めないほうが。最初から目指して失敗している。もっと一点突破で20P。キャラ2人。キャラが多いのが話をわかりづらくさせている要因だし。真剣にバトンを伝えてもらわなくていい。もっとバトン知りたいと思わせる描き方はある。まだ未熟だから挑戦したものが大きすぎたのでは。

[漫画] 『絶叫の臓器強盗団』 CZN (東京都・24歳)

事務局員・水野
担当です。話は少し長くて読みにくいですが、世界観が確立していてそこに惹かれました。攻殻機動隊が好きで、本作を見ても作品に自分の好きなものをドンドン入れたい人だと思いました。
事務局長・藤沢
部内選考で4位でした。お二方の意見が分かれているようですが、まずはプラス評価の森高さんからお願いします。
森高夕次
第一印象だとこの作品と同じストーリーは世の中にけっこーあると思いました。ただ本人はパクったつもりじゃなくて、いろんなところから影響を受けて自然に描いてしまったのかなという印象を受けました。ただ漫画にするにはいろいろなことを描き過ぎている。35枚でいいと思います。これが本に載った時、読者の支持を得にくいのかも知れない。でも、漫画家は細かいとこまで描く神経が大事。ここまで細かいところまで描かれた作品には、その努力も含め最大限に評価したいと思います。
事務局長・藤沢
緻密さ以外に評価はありますか?
森高夕次
この方は背景はびっちり世界観を決めていてキャラクターはデフォルメされていて、ロボットとかオブジェ的なデザインも世界観もしっかりしている。どんなにコンピューターをうまく使えても、世界観は人間の脳で決めなきゃだめなんです。その世界観を決めるセンスがある方です。コンピューターをうまく使えるかどうかは二次的な問題なんです。僕はこの人の世界を作るセンスと、クリエーターとして細かいことをきちきちやる職人的センスをすごい評価したいと思っております。ちば賞だったら、もう少し雑誌に載った時に面白いか、そうでないかで見られると思いますが、OPENは、この賞の中で完結していれば評価されると勝手に思っているので、この作品は、これでいいと思うんです。
事務局長・藤沢
完全に才能評価?
森高夕次
そうですね。この方は連載までたどりつくのはなかなか困難な道になるのではという気がします。
東村アキコ
私もセンスもいいし、こういうロボットのキャラデザ、世界観、背景も好きなんです。でも感動が薄く感じ、もの足りなかったです。漫画を読むのって感動したいだけなんですよ。最近流行の癒されたいのも感動なわけじゃないですか。背景真っ白でも絵がヘタでも感動する漫画もありますし。私はもがいて探り探り描いた漫画が好きですし、この人の場合、完成形があってそれをサクサク描いている感じがする。もがいてないという印象です。30回OPENの『インペリアル』の方がもがいている感じがあってよかったです。作品はおしゃれだし好きなんですけどね。酔っ払いながら描いても、スカスカで雑な漫画でも面白い漫画は面白いし。いくら緻密でも面白くない以上評価するのが難しい。根本的に漫画を描くことはこういうことじゃないんじゃないか思う作品です。『攻殻機動隊』好きな読者が作品の中で自分の見たいところを見て、楽しむのもいいですが、単純にキャラが魅力的じゃない。二人がロボットだったほうがいいと思うぐらい作者がキャラに興味ない気がしました。敵の方がまだかっこいいし、悲哀を感じます。80年代のおみやげの絵みたいな感じですかね。作者が影響を受けたという『攻殻』はキャラが肉感的で美人でかっこよくていいじゃないですか。この方も興味持てば描けるとは思うんですよね。例えばゲームのRPGも何よりもキャラの作り込みがすごいから成り立つんですよ。この2人もFFみたいなコスプレしたくなるキャラにしてはどうかと思いました。あとはこういう漫画だと女性キャラの露出をあげるべき。胸も見えてないし、一箇所露出をさせねば。
森高夕次
キャラが厳しいのはよくわかる。ただ作者はデフォルメして狙っておみやげのようなキャラにしたんだと思います。もう少しキャラを工夫して書く必要があるとは思いますが。女の子と男の子が同じように見えてしまうのは問題ですね。東村さんの言うように女性は露出を増やしたほうがわかりやすくて良かったかも。
東村アキコ
鳥山明さんの初期の作品なんかも、大きく括るとこういう画面作りだったかもしれない。でもそこにブルマがいて、ランチがいた。とびっきり魅力的な人がいるから成功したわけで。この作品はなんで人間がこうなったかわからない。最初から最後まで作りこんでいて、メカ系の描写もすごかったんですけど。
森高夕次
デザインはいいんだけど、キャラにもうすこし意識をいかせれば完成度は上がったんじゃないかと思います。
事務局長・藤沢
均質化されすぎてて愛嬌がないということですね。
森高夕次
好意的に考えて、冷たい世界を狙っていると思うんですよね。ただ、商業的に考えると読者に対して魅力がないと判断されちゃいがちな気がします。商業的に考えることと、作品の完成度を別個に考えないとこの人の場合評価されないと思います。読者の評価とかを考えちゃうとよくないんです。単純にこの人のモノを作リあげる才能と努力はすごいものがあると思います。
事務局長・藤沢
森高さんが募告でおっしゃっていた、「媚びない」という評価ができますね。
森高夕次
確かにそうですね。
事務局員・水野
この方は魅力的なキャラを描きたいけど描けないと言っていました。
東村アキコ
人間を描こうとするから描けないんです。これがロボット美人とロボット美男子を描けと言われたらすごいかっこいい人を描くんじゃないですか。いっぱい小物つけたりなんかして。線の太さも考えられている気がしますが。
事務局員・関根
2点聞きたいことがあります。たとえば悪役だけ出すっていう設定はありですか?
東村アキコ
いいんじゃないんですか。
事務局員・関根
森高さんにお聞きします。連載が難しいっていうのはキャラを魅力的にし、ページを短くし、感動する要素を入れても難しいですか。
森高夕次
そういう課題がクリアできればありかもしれません。ただ商業ベースに乗るのは道のりは長い気がします。この人の場合も完成度を高めようと思うから完成度が下がってしまう。悪役だけで悪いことをしまくる話を30Pで描いたほうが評価は高くなります。この人もバトンの人も完成度をあげようとして評価が下がっています。それが少し連載向きじゃないのかなと思う点です。妙にハードルが高いところにつっこんでいってしまうから、この人の実力はどうなんだろうと思っちゃうんです。むしろ身の丈にあったような漫画、もしくはそれより低いような漫画をきっちり仕上げるくらいのほうがこの人の連載読みたいと思わせてくれるんじゃないかな。
編集部員・M本
たとえばさっきのピーピングトムの人だったら『ハゲしいな! 桜井くん』のようなライトなものがいいですか?
森高夕次
そうそう、そうですよ。
モーニング・ツー編集長・田渕
この作品は『ピーピングトム』と正反対で、どの車がどっち向きに走ってどこの位置にあるかとかがわかりやすいです。アクションのセンスがある人なのかなと思いました。
森高夕次
確かにそうですね。アクションだけの作品だったらもっと評価が高かったと思います。
モーニング編集長・島田
人間がいらないんでしょ。もっとロボットだけの作品だったらよかったかもしれない。私はこのキャラクターいいなと思っています。女の子の性格が痛快なんですよね。最近、殺人株式会社みたいな作品多いじゃないですか。でそれをやっているやつらの悲哀みたいな。それは飽き飽きしているんです。この女の子はスカッとしている感じがあります。雄雄しい感じはテンプレなんだろうけど、でもそのテンプレを選んでくるセンスは評価したいんです。それでスカッとしていて確立された世界観があってそこに痛快なお姉ちゃんが出てくるっていうのが私は好きです。
森高夕次
余分なもの削ればいいですけどね。
モーニング編集長・島田
純粋な好みです。殺人やっている悲哀みたいなのは最近キツイ。つらい人がつらそうにやっているのは少し食傷気味なんです。
モーニング・ツー編集長・田渕
男が女の人を誘うじゃないですか。それで女の人が魅力的だと機械的に伝わってくる感じはあるんですけどね。
東村アキコ
顔が見えない後ろ姿とかのシーンはいいんですよ。風になびいている姿とかが。顔が違ったらものすごい傑作になる気がします。
モーニング編集長・島田
絵的にはひさうちみちおさんですよね。
モーニング・ツー編集長・田渕
近未来を描いているからサイバーな感じになりますが、大阪の町を書いたら『ナニワ金融道』みたいになりますよね。
東村アキコ
話を聞いていたら、なんかこの人いい気がしてきました。
モーニング編集長・島田
確かに人間に興味ないんだけど、なくてもありな気がしてきました。
東村アキコ
セリフはそれなりにかっこよくて、決めセリフがあるから、いいかなと思います。
森高夕次
なんでひさうちさんに影響を受けたんですかね。これは明確にひさうちみちおですよ。アングルとか飲み屋の雰囲気ですとか。冒頭の北島三郎が出てくる飲み屋の感じはひさうちみきおさん、そのまんまですよ。ひさうちみちおと『攻殻機動隊』をまぜるのはすごいですね。
東村アキコ
人間のキャラデザを他に発注するのもアリなのかなと。話もキライじゃないし、だんだんといい印象になってきた気がします。どっかからお手本持ってこないとだめなんじゃないですかね。外国の漫画家から持ってきたりするじゃないですか。
モーニング編集長・島田
瞳の縦線は何なんですかね?
東村アキコ
『GANTZ』も女の子がエロいからあの無機質感がよくなるわけです。この作品は女の子もお尻ぺちゃんこだし色気がないですよ。最初に出てくるおっさんはいいんですけど。
モーニング編集長・島田
私も評価が高かったんですが、ページ数がネックでした。いかんせん内容と尺のバランスがあっていないというのが悔やまれますね。

[漫画] 『山口珍平と申します』 原田尚 (東京都・25歳)

事務局員・岡山
第28回MANGA OPENで『ホテル愛』という作品が奨励賞を受賞しました。
東村アキコ
印象は普通という感じです。こういう話もこういう絵もよくありますよね。出だしの男の子の表情もありがち。話もつっこみどころあるけど、不快感もないし普通だなという感じです。このノートはどこから来たのかという風に引き込まれる感覚はありませんでした。雑誌に載っていたら読むとは思うんですが。ノートを拾うっていう設定自体が青年誌ではきついと思います。
森高夕次
僕も東村さんと同じ感想です。ただもう少し完成度を上げると連載作家になるのかなと思います。よく新人賞なんかでこんな下手くそな人が取るのかという人が何年か経ったら連載で載っているパターンな気もしますが。陳腐でありがちなんですよ。ノートっていう設定も話もアリガチなんですが、ただ安心して読めたりはします。本に載ったら人気が出そうなんですけど、賞という観点で考えると上の賞をあげるのは微妙ですね。ただ本に載ったら『絶叫の臓器強盗団』よりアンケートが上にいきそうな気がしますが。
東村アキコ
ダメという気はありませんし、本に載っても読者が読みそうな感じですが。でも、前が『ホテル愛』って聞いてびっくりしました。なんか前の方がよかった気もします。
モーニング編集長・島田
『ホテル愛』の方が描きたいものをただ描いている気がする。まああれもわかりづらい感じもあるんですが。
東村アキコ
あとはタイトルが厳しい。
事務局長・藤沢
似たような前例はありますね。載ったら支持はされそうな気がしますが、ポテンシャルはあまり感じられないですか。
森高夕次
そんなことはない。11Pの絵はこれはうまいこといかせたらもう少しいい感じの絵になる。よくないのは15枚目の構図。スタッと女の子がテーブルにくるところ。背景ももう少し描き込んでほしかった。顔だけ見ると受けそうな顔を描くんじゃないかと思う。伸びしろがあるんじゃないかなと思います。勝手な感想ですが、ちば賞だったらもう少し上ではと思います。
事務局長・藤沢
『ホテル愛』より、まあメジャー感はありますがね。
モーニング・ツー編集長・田渕
東村さんが前の方がよかったと仰りますが、完成度は上がっているのではと思いました。絵の完成度が上がると荒々しさが消え定型化する場合がある。そうならずに完成度を上げていくってのはどうすればいいんですか。背景も絵も構図もよくなっているし、よりプロダクトされてはいるんですが。
東村アキコ
ヘタなまんま背景の画面処理だけキレイになっていくのが理想です。人物とか構図は変でいいんだけど背景をしっかり描いてキレイな画面を作っていくと、『ナニワ金融道』もそうだけどすごいところにいきつくじゃないですか。それが唯一無二になっていくと思うんです。もともとうまい人は人物の顔かたちをキャッチーにしなくてもいいと思うんですけど。この人も前の作品だって人物は写実的でわかりやすかったですし、無理に変える必要はないと思います。でも芸能人をモデルにして描くともっとよくなると思いますが。次描く時は長澤まさみっぽくしようとかの萌えの要素は入れてほしいですね。
森高夕次
僕はこの人こそ完成度あげるべきだと思いました。たとえば『ナニワ金融道』や『島耕作』のように。本作はこの人にしてはハードルが低いんです。ノートはどうとでもできるのでハードルが低い漫画なんですよ。もう少しリアリティーのあるテーマを選ぶべきでした。

MANGA OPEN事務局員プロフィール

*五十音順

岡山
アメリカの漫画に出てくるお母さんってこんなカンジだよねな元書店員編集者。これを書いておりまする小生は岡山小姐のことをこのくらいしか存じ上げないが、よく着てるTシャツからしてテーマ曲は多分ビースティボーイズの「サボタージュ」みたいな感じ。女子部員を煽動して電子レンジを駆使。部内の殺伐たる空気をほんわかに変えた、いやさ労働意欲を削がれたと賛否両論の嵐。発明家のお父様から引き継いだ独創的な発想力でアレをコレしてナニして、そんで大ヒット夜露死苦な!
剱持
剱の字が難しくて誰も書けないから困っちゃう。柔道部出身でガタイもいいし怒らせたら郷土の大先輩国定忠治みたいに大立ち回りを演ずるのではないかとちょっと怖い。長年同棲していた彼女がご懐妊。これも潮時、不承不承、致し方なく、やむを得ず……とか言いながらばっくれず入籍に至ったのはめでたいことだ。担当する新人のネームがはねつけられても寝技を駆使して判定勝ちに持ち込もうとする粘り強さは人間こんにゃく。
駒木根
入社以来ずっと販売部に所属、初めての編集部勤務にも拘らず黙々と仕事をこなすビジネスビューティということにしておこう。前部署では「コマネチ」と呼ばれていたのかもしれぬのだが、若手スタッフの多い弊部においてはコマネチ自体知る人ぞ知る。若づくりを誇るベテラン組もオッサンと思われたくない一心でノドまで出かかった「コマネチ」を固く封印している。出身高校がミッション系で、学校の公式サイトから賛美歌が流れるというだけで超お嬢様と決めつけた管理職もいるがそれはまた別の話。
篠原
ワタシの血液は讃岐うどんでできているのよというオーストラリア産小麦100%の炭水化物人間。発育を心配した両親に大学病院へ連れて行かれ、陰茎を強引に引っ張られた快感を未だ忘れじ。サッカーと音楽をこよなく愛し、担当作品を通じて開眼したやきものを買い漁り、「まあウチの会社の若手社員で数奇者いうたらボクしかおりませんわ。フフフ」とうそぶく入社四年目にしてもう三十路の遅れてきた男である。ベテラン女性作家を籠絡し、所有するマンションに店子として住み込む手管は、オレオレ詐欺ならぬ仕事に対する熱情として受け止められてもいる。得意料理はやはり讃岐うどんゆであげ。
関根
我が国の最高学府の最高峰で地球物理学を専攻していたのに、なんかいろいろ間違えてモーニングに流れ着いたハイエナジー。このごろは地球より女でしょということで「恥丘物理」にご執心との噂。某担当漫画家さんとのツイッター上でのやりとりがたまに危なっかしく、「今モーニングで最も炎上に近い男」と目されているが、なんだかんだで無邪気な笑顔が子供みたいで可愛いかも、みたいなことになってみんな許しちゃっている。ちょっと体調が悪いと、やれC型肝炎だ、膵臓ガンだ、クモ膜下出血だと大騒ぎする狼少年的なところもニクいゾ。
土沼
長身細身色黒のルックスは遠くからだとかりんとうに見えてとても美味しそうな新人編集者。すでに二十数回会っている担当作家さんに研修中の新入社員と勘違いされるほど存在感が乏しいのが悩みだったが、最近セックス関連のエピソードで編集部内人気が沸騰。編集部に久しぶりに現れた若者らしい若者として愛玩されつつある。リア充と非モテの間で敗れても、振り向くなよ、キミは美しい。まったく独自の「ドヌマツルギー」の確立を急げ。
藤沢
モーニング連続在籍記録保持者にして牢名主の如くダラダラ居座る宮崎勤&宅間守世代の旗手。拙い経験と乏しい実績だけが売り。多数の新人と係わってきたが、「用がなくても編集部に来てメシをおごらせる人」や「半ば住み着いて仕事場がわりに使う人」など、フレンドリーで図々しい人は生き残ると断言。祖母から毎晩『ああ野麦峠』を読み聞かされて育ち、女工哀史には詳しい。草間彌生画伯を輩出した旧制女學校出身のため、座右の銘は「良妻賢母」にて候。
水野
入社以来十年間、週刊誌畑で暗躍。この春ようやく懲役満了、晴れてモーニングに。来来のブラックジャーナリスト系編集者。日本〜東南アジアの性風俗産業、臓器売買、麻薬産業などの取材を通じ、社会の暗い部分ばかり見てきたためか、なんだかとても殺し屋っぽい雰囲気だ。そんな青龍刀が似合う彼の悩みはハゲ。この2年で生え際が5cm後退したらしい。「まあでもハゲの殺し屋ならジャン・レノみたいで渋いじゃん」と、直接言ったら殺されるのでここに書きました。とりあえず、スマーイル(c)マック赤坂。