選考委員がかわぐちかいじ、さだやす圭両氏から、東村アキコ、山田芳裕のお二人に交代。賞の内訳や副賞賞品も一新。リニューアル後初の第29回コンテストは応募総数408本。これまで最多だった前回の388本を上回り、またまた記録更新となりました。MANGA OPEN事務局による1次選考通過作27本が、編集部全員での2次選考へ。作品評価に加え、作者の才能や将来性に言及し、デビューの可能性とプロデュース案などを率直に真剣に議論。カンカンガクガク、ケンケンゴウゴウの末、熱い支持を受けた12作品が最終選考へ進出しました。
※選考委員の肩書きは選考会当時のもので、現在とは異なる場合があります。


事務局長・藤沢
いつもながらですけど、各作品について「掲載レベル」との評価をした人は、支持の理由と、今後のプランについても発言をお願いします。受賞者にデビューしてもらうことが目標なので、賞を決めるだけでなく、先々の道すじを積極的に示してください。さらに、MANGA OPENは応募作の完成度より、作者の素材の魅力を優先したいと考えてます。そこんとこよろしく。若手編集者はこの場での発言を通じ、話術やプレゼン能力を高めることも意識してほしいです。ベテランの皆様は若い芽をつまぬよう(笑)、どうかひとつご留意くだされ。

[漫画] 『Show』中原一 (東京都・33歳)

★2次選考通過作品作品の詳細と選考結果はこちら!ストーリー:服飾の専門学校に通う、男女3人の成長ストーリー。コンペを突破して、デザイナーへの道をつかめるか!?

編集部・Y口(担当)
現在は某漫画家さんのアシスタントを務めていますが、ご自身も服飾専門学校で学んだ人です。部内のネームコンペにもエントリーしましたが、その時の指摘も踏まえ、一部描き直してもらいました。
編集部・T原
応募作の中では、描きこみがかなりキッチリしていたので、高めの点数をつけました。学生らしい「弱さ」が良く描けていて、作者の視点にもいい意味で「若さ」を感じます。何かが飛び抜けていたというより、総合的によかったなということで、今後に期待しています。ストーリーに関しては、「なぜ賞に落ちてしまったのか」が良くわかりませんでしたが……。
事務局長・藤沢
お茶の水にある日本マンガ塾で講評させてもらった時、完成度の高さを評価して、応募してもらいました。イブニングの新人賞に入賞歴があり、担当がついていたんだけど、なかなか掲載のチャンスがなくて、レディース誌への持ち込みを考えていたそうです。担当は今後どんな展開を考えてる?
編集部・Y口
学生ノリの雰囲気がいい意味での若さという評価でしたが、服飾の関係での経験があるなら、そこをもう少し掘り下げてもいいかなと思いました。新作のネームを一緒にやっているのですが、突破力に欠け、ちょっと苦戦していますね。
編集部・K林
男性読者、女性読者、どちらに向けて作ってるんでしょうか? 作者はあまり意識してないと思うんですが、ファッションとかアパレルの物語って、女性作家が同性に向けて描きたい世界の、それもかなりメジャーなものだと思うんですよ。安野モヨコさん(『働きマン』)、東村アキコさん(『主に泣いてます』連載中。本賞選考委員)、矢沢あいさん(『NANA』)といった方たちがすでに描いているわけで、太刀打ちできる要素は正直どこにもないんじゃないかと。服飾をネタにするのであれば、人気作家と戦う意識がないとダメだと思いますよ。
編集部・I上
洋服の描写がもっとオシャレだったら説得力があるんですけど、残念ながらそうでもないんですよね。
編集部・Y原
この手の話はそこが描けないと何回やってもダメだから、別のジャンルを考えたほうがいいと思うよ。
編集部・K林
作品自体はすんなり読めたんですけどね。

[漫画] 『ひと夏の友』他1編 かしのした紋 (東京都・19歳)

ストーリー:家では厳しい父親に逆らえず、学校ではいじめられている秀一は、夏のある日、立ち入り禁止の河でカッパと出会う。泳ぎを教わりながら仲よくなる二人だが、河で溺れた子どもの話をしてからカッパの様子に変化が……。

事務局長・藤沢
この人も日本マンガ塾で講評させてもらいました。新人賞ではおなじみの「夏休み」をテーマにした作品だけど、初めて完成させた漫画らしいです。担当者はどのようにリードしようと思ってますか?
編集部・F施(担当)
作者はまだ十代ですが、きちんとドラマを作ろうとする姿勢を評価しています。「漫画を描いている時が一番幸せ」との言葉に胸を打たれて、とても期待しています。
事務局員・篠原
「漫画を描いている時が一番幸せ」といいながら、これが初めて最後まで描いた作品てどういうことやねん!(笑)
編集部・F施
技術的にはまだまだですが、後半の演出はかなり魅力的だと思うんですよね。
編集部・I上
たしかにまだまだ稚拙な画なんですけど、泣き顔など、感情表現がうまいですね。今回2作応募なさってますが、最初に描いた作品と次の作品を比べると、新作のほうが画が硬くなっていて、それが少し心配です。
編集部・K渕
どういう話にするか、どういうものを読者に読んでほしいのか。作者の狙いがよくわかる点は評価したいですね。2作目はキャラが弱くなっちゃって、登場人物がなぜ魅かれあっているのかがわからなかったので、ちょっと評価を下げてしまいましたが、期待値は高いです。
事務局員・宮本
僕は2作目のほうが好きでしたね。2本ともまだまだ世界が狭い気がしますけどね。まだ十代だから、仕方ないのかもしれませんが、あくまで想像の範囲内で描いている印象で、驚きがなかったんです。
事務局長・藤沢
なるほど、期待値は高いけど、あと一歩というところかな。次回作に期待したいですね。

[漫画] 『HOTEL愛』原田尚 (東京都・25歳)

★2次選考通過作品作品の詳細と選考結果はこちら!ストーリー:身寄りのない少女・愛は学校にも行かず、ラブホテルの手伝いをしている。まわりの大人も皆、スネに傷持つ人ばかり。愛の笑顔がみんなに幸せを与えてくれる。

事務局長・藤沢
みんなけっこう点数が高いですね。担当者、アピールをお願いします。
事務局・岡山(担当)
コミティアのモーニングブースに持ち込んでくれて、応募を勧めました。他誌で担当がついてやり取りしていたそうですが、あまりうまくいかなかったようです。この作者を評価するのは、「人と人との繋がり」を漫画に落とし込むのが上手で、豊かな表情の描写力により、読者の気持ちをつかむことができると思ったからです。今回の作品のように、これからも「ひたむきな主人公が周りの人の気持ちを変えていく」物語を作ってもらいたいと思っています。
編集部・T岡
2年くらい前かな、編集部にも持ち込みに来てくれたんですよ。その時の作品が今回も同封されていましたが、この『HOTEL愛』の元のバージョンでした。やる気も感じられて、いろいろアドバイスしたのですが、すでに他誌でのやりとりが忙しかったのか、それきり没交渉になってしまいました。
事務局・関根
私も高得点をつけたのですが、作者自身の「人に興味がある」という点が、担当者と同じく評価のポイントです。主人公の設定にはちょっと無理があると思いましたが、健気さをうまく描くには適してるのかなと。社会全体が不安定な中で、このようなストーリーを描けるというのは、読者からの需要もあるのではないでしょうか?
事務局長・藤沢
応募作が『HOTEL愛』と『高橋さん』の2本あるんだけど、作者はどっちの方向で描きたいのかな?
事務局・岡山
画は『高橋さん』のタッチでいきたいようなのですが、まずは自分の基本的な画を見つけることかなと思っています。ちょっと器用貧乏なところがあって、様々な線でそれなりに描けてしまうんです。
モーニング・ツー編集長・田渕
この人はどうやら原稿用紙に描くと線が鈍ってしまうようですね。「あなたの画の売りはこっちですよ」と、担当がきちんとディレクションして、作者に不安を抱かせないよう描いてもらうのが大切なんじゃない? 能力は抜群な人だから。
モーニング編集長・島田
原稿とコミティア用の冊子と、それぞれ内容が違うよね。どっちを読ませたいのかな。まずは担当が読者に読まれることも意識して、どちらの作品を選考してほしいのか決める。その上で、作者の長所をアピールするために、画柄や内容の違いについて、ここで具体的に補足しなきゃダメだよ。
編集部・Y原
僕が気になるのは、子どもがホテルで働いているというシチュエーションなんですよね。あまりに現実離れしすぎていて感情移入できない。設定を海外にすれば、十分成立するのにな。そういった指摘や提案を、担当者がすべきじゃないでしょうか。
事務局員・関根
田渕さんがこの作品を面白いと思ったのはどのあたりですか?
モーニング・ツー編集長・田渕
不自然な設定ながら、キャラクターが魅力的で最後まで読み進められたところ。作者の「漫画勘」がいいというか、ロジックで作るより、主人公をチャーミングに見せたり、展開を面白くするためのコマ割りが自然にできるタイプなんだろうか。かなり才能があると思うね。

[漫画] 『俺色☆風紀改革』三部有里菜 (兵庫県・21歳)

ストーリー:女子の制服の乱れをただすため、「風紀委員」に就任した主人公。貼れば女子を思うがままの姿にさせられる「俺色☆ステッカー」を手にした男子と、逃げ回る女子の攻防戦をコミカルに描いた、清く正しく明るいラブコメ。

編集部員・I上(担当)
作者は神戸芸術工科大学の学生さんです。漫画学科に出張して、作品を拝見した際に出会ったんですが、気持ちのいいドライブ感と元気な画柄に魅力を感じて、応募を勧めました。新人の投稿作って暗めのものが多いんですけど、明るくポジティブで、ハイテンションで読ませてくれる。エンターテインメントを意識した楽しい作品に取り組んでいきたいと非常に意欲的だったので、担当させてもらうことにしました。
事務局長・藤沢
少年誌っぽさを感じさせる作品で、「モーニング向きじゃない」という意見も多かったようです。じゃあ「モーニング」っぽさって何なのか? このあたりは議論が必要かと思いますけどね。
モーニング編集長・島田
いや、これは「モーニング」向きでしょう。
編集部員・I上
まさに「読むと元気になる!」ですね!
モーニング編集長・島田
題材がコミカルすぎて、対象が若い読者に偏ってる気はするけど、まったく問題ないよ。
編集部員・K藤
僕もI上と一緒に大学へ行って、この作品を見た際、非常に才能があると感じました。明るい世界を描くというのは、漫画にとって重要だと思います。
事務局員・篠原
私自身、ねじけた性格の持ち主なので(苦笑)、ふだんはこのような破天荒で明るい作品は敬遠してるんですが、意外と楽しく読めました。底抜けなパワーを感じさせる作品だと思います。題材をうまく変えれば、大人の読者にも読み応えのある作品を描けるのではないでしょうか。才能は感じます。
事務局員・笠井
私もうらぶれた漁村で育った人間ですので(苦笑)、「ドタバタのラブコメか〜、苦手だなー」と思ったんですが、胸がキュンキュンしてしまいました。ラストに至っては「感動」の一言ですね。
編集部員・T盤
漫画学科の学生が描きがちな典型なんですよね。かつて楠桂さん(『鬼切丸』)が取り組んでいたアニメのパロディ的な作風で、オリジナルを知らない世代にも、脈々と受け継がれてきたものというか……。
モーニング編集長・島田
高橋留美子さんとかね。
編集部員・T盤
そうですね。漫画としてはよく描けていると思います。「漫画はエンタメなんだ!」という思想は絶対的に正しい。非常に好感が持てますね。ただし、どこに共感すればいいのかわからない。つまり、「ここで勝負するんだ!」というテーマが見えないんですね。先達が構築してきたものをなぞっているだけで。いわば箱は用意されているんですが、箱の中味が描けていない。そこをどうするのか、担当の努力が必要だと思います。
編集部員・I上
新しいネームを見せてもらったんですが、たしかに画はいい、相変わらずテンションも高い。ただ、何を描きたいのかわかりにくいというか、深いテーマが欠けてるなという印象は受けました。
編集部員・T盤
若い作者にとっては、漫画を描くという作業自体が楽しくて、何を描けばいいのかまで考えが至らないことが多いんです。この作品は設定は強烈。けれど、その設定をテーマに落とし込むという作業ができてないんじゃないか。現時点では、まだまだ高い評価ができる状態ではない気がします。
モーニング・ツー編集長・田渕
物語というものが、現実を再解釈、再構築して、新たな地平を提示する側面を持つとしたら、この作品は、かつてあった漫画を再解釈して再構築するという行為に留まっているのかな。
事務局長・藤沢
まあ、わかんなくはないけど、新人には厳しすぎる批評だよね(苦笑)。オレは好きですけどね、この作品。

[漫画] 『夫婦』木下美菜子 (広島県・19歳)

ストーリー:失明した夫を支えて35年の歳月を過ごした妻。ともに散歩に出かけた際、夫からある「告白」を受ける。夫婦が経てきた時間をごく短いページ数で鮮やかに切り取った短篇。

事務局長・藤沢
タイトルはズバリ『夫婦』です。年齢のわりに渋いな。
事務局員・関根
失明した夫が定年退職を機に妻に別れを切り出す。プロット自体、破綻があるのではないかと最初は感じました。ただ、14ページという短い枚数の中で、人間の感情が実に丁寧に描かれている。作者のストーリーテラーとしての才能に期待したいです。
編集部員・O坪
エンターテインメントという観点で見ると、話の盛り上がりはないと思いますが、安心して読める作品に仕上がっているのではないでしょうか。テーマの設定もユニークです。もっとエンタメを意識してもらえれば、より面白いものが描けるんじゃないでしょうか。
編集部員・T本
物語を読ませるテンポが素晴らしいと思います。短いページ数で、夫婦が経てきた時間を十分感じさせるのは、かなりの才能でしょう。失明した夫の告白に妻が率直な気持ちを述べるシーンは特に巧みだと思います。画の力がもっと向上すれば、より高度な表現が可能になるはずです。
モーニング・ツー編集長・田渕
話の盛り上がりに欠けるという指摘もありましたが、そんなことはないと思いますよ。確かなイメージを喚起される物語で、感情のどこかを強く揺さぶられた。たしかにエンターテインメントとは言えないかもしれないけど、漫画は起承転結があればいいのかというと、決してそうではないでしょう。読者に何かが伝わればいいのであって、それを短編の中でやり遂げている点は評価できると思います。

[原作] 『G-SOUL!(草魂)』山田ゴメス (東京都・35歳)

ストーリー:飛行機事故で選手のほぼ全員を失い、消滅してしまったプロ野球チーム。なんと、その後釜を元草野球チームが務めることに! そしてその背後には、謎の企業再建コンサルタントの影が見え隠れするのであった。

事務局員・笠井(担当)
ライターとして幅広く活躍されている方の野球漫画の原作です。編集部の意見をいろいろ聞きたいと思い、あえて応募ということにしました。
編集部員・K
大笑いしながら読んだんですけど、部内で聞いて回ったら、面白いって言ってるのは僕ぐらいですね(笑)。野球が分かれば面白いんじゃないかって人もいましたけど、現実にはちょっとあり得ないことをもっともらしく書いてる感じがすごく面白くて、高い評価をつけました。
事務局長・藤沢
野球に詳しいK渕さん、そのへんどうですか?
編集部員・K渕
指名されると思った(笑)。野球の描写に関して、別に破綻はないよ。ちゃんと読めました。だけど、「出落ち」って感じが否めないね。意表を突かれたのは、球団が一つなくなって、そこに素人が集まって球団ができましたっていうところだけ。キャラクターがすごく魅力的だったりすると話は別だけど。
編集部員・T盤
原作つきで出落ち感が強い漫画って、モーニングでは『国民クイズ』(加藤伸吉)かなと思うんですけど、でもあの作品は一回目から面白かった。この作品は段取りばかりが先に立って、せっかくの思いつきをうまく話にできていない。この書き方だと、漫画の原作にはならないんじゃないかと思いますね。
モーニング編集長・島田
連載企画に原作者をつけるって、コストがかかるものなんですよ。原稿料が2人分だからね。その人がいないとシナリオが成立しない、漫画家をリードできるっていうレベルじゃないと、モーニングでは難しいよ。
モーニング・ツー編集長・田渕
今モーニングで連載している『僕はビートルズ』(原作・藤井哲夫/漫画・かわぐちかいじ:第25回MANGA OPEN大賞受賞作。本賞創設以来、初めて原作が大賞受賞)の場合は、誰もが思いつきそうだけど、誰も思いつかなかった話なんだよね。そういうレベルには達してないんじゃないかな?

[漫画] 『本で知っている。』トトキマコト (東京都・28歳)

★2次選考通過作品作品の詳細と選考結果はこちら!ストーリー:主人公・さとりは引きこもりだが読書が趣味で、「世の中のほとんどのことを知っている」と思っている女の子。一方、妹のゆとりは、大学で充実した生活を送っているフツーの女子大生。ある日、熱を出したゆとりの代わりにさとりが大学へ行くことに……。果たしてゆとりになりきれるのか!?

事務局員・関根
すごく面白い作品で、ぜひ担当したいです。画がダメだと言われてしまう気もするんですけど、主人公の台詞が全部面白い。マイペースすぎて笑ってしまうところにも親近感を覚えます(笑)。この主人公をより多くの人から共感を持ってもらえるよう描ければ、とてもいい作品になると思います。
編集部員・O川
最高点をつけました。ちょっと高すぎかなと思うけど(笑)。画は現時点では稚拙だけど、僕個人としては好きなんですね。うまくなっていく画だと感じました。技術はまだ追いついてないものの、こういう構図で描きたいという作者の意図が感じられて好ましいな。出だしの台詞なども、ありがちかもしれないけど、画とネームの関係がいいですよ。ヴァーチャルな世界に閉じこもっていた主人公が、現実に一歩踏み出した時の内面描写もすごくまじめに描かれています。ネーム自体も噛み締めれば味があり、画はたぶんうまくなる。完成度はおいといて、作家として評価できる人だと思います。
モーニング・ツー編集長・田渕
僕も高得点をつけたんですが、「自己同一性」って何だろうというテーマを、SFで描くんじゃなく、双子というアイデア一発で現代劇にしている。しかも意識的にそう描いてるんだろうから、地力はある人だと感じましたね。
編集部員・I上
それから、ひねくれている女の子の描き方がいいなと思います。この女の子が作者自身と同じような感じなのか、まったく違うのかどうか。このキャラクターが客観的に描けているのであれば、なかなかすごいと思います。

[漫画] 『はつねつ』浅岡キョウジ (埼玉県・22歳)

ストーリー:主人公は入社一年目のOL。「子供の頃感じた人生への情熱」と「現実があまりに不完全燃焼なこと」のギャップに戸惑いを抱き続ける。ある日土手で、一人ギターを弾き、「右手も左手も適当に弾いているだけ」という風変わりな青年と出会う。

編集部員・F施(担当)
前回のちば賞にも応募してもらったんですが、二次選考で落ちてしまいました。ネームを量産できる人です。思わず手が止まるような、迫力のあるシーンや表情が描ける期待の新人です。
編集部員・T丸
自分のツボにはまりました。読者をモノローグでうまく誘導してるなと感じたのと、OLがただ泣いてる隣で、男がしれっとギターを弾いてる見開きが印象的で、結構画が描ける人だと感じました。この作品を見る限りでは、バランスの取れてる人じゃないでしょうか。
編集部員・O川
こんなに早く大人になっていいのかというイントロがあって、それがなかなか秀逸だという感じがするね。22歳の作者自身が「ゆとり世代」と呼ばれている人たちの悩みをすごくリアルに描いている。たとえば泣くシーンでも、普通はもっとかっこよく描くんだけど、あえてかっこ悪く描かれているのが、僕にとっては新鮮でした。
編集部員・F施
私自身もゆとり世代なので、作者の描き方に共感を覚えています。
編集部員・K本
ゆとり世代と呼ばれていることに対する反感やアンチが、あまり表現されてないんじゃないですか。自分の内面の表現にとどまっていて、エンターテイメントとして成立してないと思うんですが。
モーニング・ツー編集長・田渕
もうちょっと客観性があったらいいのにね。
モーニング編集長・島田
たしかにそのとおりかな。描き手の心情吐露みたいな作品は、新人賞にありがちだけど、なかなかエンターテイメントにはなりにくい。作者自身の延長線上にあるものを描いているだけでは、プロにはなれないと思うんですよ。作中で描かれた感情が、はたして読者が求めているものなのかどうか。素直な心情を吐露したところで、それが読みたいものでなければ、商売としては成立しにくいんじゃないですか。

[漫画] 『空想ピエロと快晴店長』中瀬麻衣 (大阪府・26歳)

ストーリー:妄想街道大爆走! 漫画家志望の冴えない主人公・田中がスーパーでアルバイト開始。変態チックBut男気あふれる店長の下、妄想とパッションで突き進む。ラストで頭をよぎる、「ああ、これぞ人生!」。ロマンチック・ヒューマン・コメディ、ここにあり!

編集部員・F施(担当)
技術的にはまだまだ見せ方が拙くて、読み手を意識できていないところがあるんですが、今後に期待しています。週刊少年ジャンプで担当がついていたそうですが、青年誌の方が合ってるのかなと思ったらしく、夏頃私が持ち込みを受けました。応募にあたって若干の手直しをしてもらいました。
事務局長・藤沢
ラフな魅力はあるなと思って、一次選考は通過としたんですが、みんな点数が低いね。担当者以外に高い評価がないと、ちょっと残れないかもな。
編集部員・T盤
雑誌に掲載する時は原稿を縮小するわけですが、誌上で見たら意外と通用する典型的な画風ですよね。ただ、場面転換や省略の仕方があまりに不慣れな印象です。フキダシを置く位置も悪いので、よけいに読みづらくなっています。担当編集がかなり本腰を入れて、「これじゃ読者にわからないよ」って教えてあげないと。もっとわかりやすい演出ができなければ、この先厳しいでしょうね。
編集部員・Y口
読み進めさせるドライブ感やエネルギーをひしひし感じて、そこはすごいなあと思いましたけど。
編集部員・Y原
アドバイスになるかわかりませんが、読みにくさを改善するには、作者が好きな漫画の第一話をまるごとトレースさせるといいと思います。それだけで圧倒的にうまくなるケースもあるようなので。
モーニング・ツー編集長・田渕
試すんだったら女性作家の漫画じゃないほうがいいよね。少女漫画だとこういうコマ割りも許されるけど、きっちりコマを割らないと、青年漫画誌では成立しにくいと思う。
編集部員・K林
才能評価という点では、けっこう高いと思います。ジャンプを目指していたからかもしれないけど、女性の割に男の子をちゃんと描けてると思うんですよ。荒削りだけど、男目線で画も物語も描けるなんて珍しいタイプだし、なかなかたいしたものですよ。この作品自体はイマイチ評価できないんですが。
モーニング・ツー編集長・田渕
でも、この人にちゃんとしたコマ割りを教えるのは大変だと思うよ。
モーニング編集長・島田
勢いはあるかもしれないけど、そこは決して褒めないほうがいいと思う。もっと丁寧に描かなきゃいけないよ。ちょっと雑な感じがするんだよね。丁寧に描いて、消える勢いなんて勢いじゃないんだから。緻密に物語を積み上げていくと自分の持ち味が死ぬとか、仮に思ってるとしたら、それは大きな間違い。漫画ってのはきわめて計算尽くされたものなんだってことを、分かってもらわないと。

[FLASHアニメ] 『ヒャク・ジューノー』フクイヒロシ (埼玉県・32歳)

ストーリー:主人公ヒャク・ジューノーの周りでは肉体の一部が盗まれる事件が多発していた。不思議な動物(?)たちが活躍する全7話のFLASHアニメーション。

事務局員・篠原
完成度はけっこう高い気がします。キャラクターもちゃんと描けてるし。だけど「あ、この場面のイラスト使い回しだな」ってところが多々あったのは残念でした。手を抜いた部分に気付いちゃうと、一気に気持ちが冷めちゃうから。
事務局員・劔持
オープニングとエンドロールが長すぎますよね。実際の秒数はわからないけど、印象としては本編と同じくらいの長さがあったような気がします。各話ごと微妙に内容を変えてるのは分かるんだけど、早送りしたくてしようがなかったですよ。
編集部員・K藤
この作品のユルい空気感、僕はけっこう好きです。でも、会話の掛け合いがよくない具合に間延びしちゃってるんですよ。何気ない会話で退屈させないよう作品をつくるのは、本当に難しいんだなと実感しました。

[漫画] 『ワールズエンドガールフレンド』松永恵美 (東京都・21歳)

ストーリー:世界が終わったある日──364日と22時間しか生きられない7人の女の子たちは、その時間をどう生きたのか。

事務局員・奥村
この作品はまるでイメージラフみたいな感じですよね。ノンブルの振り方も知らないようだから、漫画を描くのはたぶん初めてなんじゃないでしょうか。ただ非常に才能を感じるので、イラスト風じゃなくて、スタンダードな漫画を描ける人なのかどうか確かめたいです。画はうまいし、ト書きの中で女の子たちが囚われてる状態をきちんと表現できてるんで、漫画が描けるんじゃないかと期待しています。
編集部員・T丸
SFマガジンあたりにこういうのがよく載っているんですけど、僕の場合、単純に好きなんです、こういうのが。登場する7人の女の子全員に皮肉っぽい表現がなされていて良かったし、画も好みです。
編集部員・Y川
漫画をフツーに描けるのかどうか、私もわからないですけど、画がうまいので、イラストレーターとして挿絵を描いてもらったらいいんじゃないでしょうか。記事ページとかで。
事務局員・関根
この作品、僕にはよくわからなかったです。
編集部員・O坪
個人的にすごく好きな画です。ただ、漫画としてありなのか、イラストだから魅力的なのか、やっぱりわかりません。
モーニング・ツー編集長・田渕
この人、うまく見せる技法は知ってるけど、実際にはそんなにうまくないと思うんだよ。デッサンはお世辞にもうまくない。
編集部員・Y原
こういう特殊な表現にトライするなら、もっと圧倒的に画がうまくないとダメですよね。
編集部員・Y口
僕もうまいっていうより、うまく見せたなって感じがしました。
編集部員・I上
私は読んでてイライラしちゃいました(笑)。内容にピンとこなかったもので、こういう描き方が鼻についちゃって。

[漫画] 『凌霄花の皮を剥け』山雲蝮 (東京都・25歳)

★2次選考通過作品作品の詳細と選考結果はこちら!ストーリー:主人公の清友(さやとも)の兄・凌霄(りょうしょう)は、穀潰しの詩人。若い頃は天才と謳われた彼だったが、今はまともな詩も書かず、エロDVD三昧の日々を過ごしている。そんな凌霄と清友は、ある日、加次郎という少年と偶然出会う。その少年は、凌霄に輪をかけたヘタレ野郎で……。

編集部員・O坪
自分が持ち込みを受けました。もともと画に少しクセがある上、途中から登場するキャラクターが全く異質なタッチで描かれてるんですが、これには事情があるそうで。以前、別の編集部に持ち込みして、「キャラクターの描き分けが全くできていない」と言われ、ショックで5年間漫画が描けなくなったとか。久々に漫画を描くにあたり、特に描き分けにこだわったのは、そういう過去のトラウマによるものだと思うんです。とても真面目で勉強熱心な人なのですが、いくらなんでも描き分けすぎかもしれません。
編集部一同
(爆笑)
事務局員・笠井
急に二頭身キャラが出てきた時は、僕もびっくりしたんですけど、それなら仕方ないのかな。前半の画には丸尾末広さん(『少女椿』)風の官能的な雰囲気があるし、漫画家としての可能性を感じますね。
事務局員・篠原
この人は漫画と一緒に「キャラクター設定集」を送ってくれました。キャラクターに対していろんな意図のある、やる気のある人だと感じました。
モーニング・ツー編集長・田渕
ラストで演歌歌手が巨大化して出て来るんだけど、あれって『サウスパーク』のパクリだよね(笑)。バーブラ・ストライサンドが巨大怪獣になって暴れ回る! みたいな。
編集部員・I上
でも、伏線として、演歌歌手のポスターがちゃんと部屋に貼ってありましたよね。
モーニング・ツー編集長・田渕
パクリというか、オマージュだね(笑)。
編集部員・Y口
台詞回しで独特な雰囲気を作るのが得意な人だと感じました。キャラクターも魅力的ですしね。残念ながら、途中から話についていけなくなりましたが(笑)。前半だけなら高得点をつけたいと思います。
編集部員・K渕
読んだ瞬間から、自分好みの漫画だな……と感じていたけど、皆さん同様、途中で異質なキャラが出てくるあたりから、話がよくわからなくなってきちゃったね(笑)。下ネタのせいで、どこか平板な印象を受けたというか、独特な作風が薄れてしまったから、あの二等身はいらなかったかな。全体的にはすごく楽しく読めたんだけど。ただ、持ち込みで何か言われて、5年も描けなくなるというのがちょっとね。「どんだけデリケートなんだよ!」と(笑)。
モーニング・ツー編集長・田渕
この人の才能には、チグリス・ユーフラテスの土壌のような豊かさを感じる。肥沃な三角州、というかね(笑)。内面に面白いものをいっぱい抱えているから、「あなたはここに種を植えたらいいんですよ」と教えてさえあげれば、すごい植物が生えてくる可能性はあると思う。
編集部員・Y原
でも、こういう作品をモーニングに載せるとしたら、どういうふうにアピールしたらいいのか、ちょっとわからないな。

[漫画] 『仔羊日誌』小森羊仔 (福島県・22歳)

★2次選考通過作品作品の詳細と選考結果はこちら!ストーリー:小さな頃から、妄想と現実の狭間を行ったり来たりしている「わたくし」。本当に大切な秘密は晒しませんが、ほんの少しだけ胸の内をご覧入れましょう。 ちょっぴりビターなエピソードとスイートな画が織りなす、一人の女子のライフ・ログ。

編集部員・T内
今回最高点をつけさせてもらいました。76ページもあるので、最後まで読み通せるかどうか不安でした。でも意外と普通に、すんなり読めてしまいましたね。まだまだあどけない部分は多いですが。作者のいわゆる「自分語り」だけのストーリーだけど、ネームのセンスがよく、画の見せ方がうまいなと。これからも漫画を描き続ける気持ちがあるのか、そこが気になるので、一度会って話を聞いてみたいです。
編集部員・K林
このコ、自分も最高点をつけました。個人的に好きなんですよね、こういうちょっと暗い漫画が(笑)。
モーニング・ツー編集長・田渕
K林は意外とこういうのも好きだよな(笑)。
編集部員・K林
実際は、「こんな長い話、どう読んだらいいんだろう?」と思いながら読みましたが、見せ方がうまいんです。全体が「○○編」「△△編」……と区切られているんですが、面白い要素がきちんと一つずつ入っていて、それがきれいにまとまっている。一つの話を読んだら次に進むという構成が非常にうまくできてます。今回、もっと完成度の高い作品は数多くあったと思いますが、この作品ほど伸びしろや将来性を感じる作品はありませんでしたね。この作者は、はたして今後ストーリー漫画を描いてくれるのか。描いてくれなきゃ始まらんのですが(笑)、ぜひその辺りを本人に聞いてみたいですね。

[漫画] 『俺達はまだ何も始まっていない』米島篤志 (埼玉県・32歳)

★2次選考通過作品作品の詳細と選考結果はこちら!ストーリー:主人公の野保は、毎日、同じバイト先に勤める梶美笑子をストーキングしている。職場では同僚に馬鹿にされ、プライベートでは彼女に想いを伝えることもできず、ただ悶々としながら自虐の日々を送る野保。人生負けっぱなしの野保に、逆転のチャンスはあるのか?

編集部員・Y口
物語の焦点となる女の子がかわいくないので、どうやって展開させるのか怪訝に思ったんですが、主人公の感情表現やコマの演出がとても面白かったです。画はまだまだ未熟なので、たくさん練習してほしいですね。いわゆる「負け犬」を描く才能に長けていると思うので、その路線を追求して面白い漫画を描いてもらいたいです。
編集部員・F施
ストーカーという非常に不愉快な存在を、愛着あるキャラクターとして描ききっている点を、私は高く評価したいです。
編集部員・I上
え〜、私には伝わってこなかったよ!
編集部員・F施
いやっ、愛着、あったと思いますよ!
編集部一同
(笑)
事務局員・劔持
自分もこの作品を高く評価しています。人に不愉快な思いをさせる恐れのある題材を扱いながら、ネームの面白さや物語の高い構成力にひかれたし、様々なシーンに目を見張りました。スポットライトが当たらない人に興味があるようなので、そういった人々を主人公に、新しいエンタテインメントを創り出せるのではないかと期待しています。32歳で、自分と同い年だしね(笑)。
事務局長・藤沢
関根も評価が高いようですが、君の評価は最高点が多すぎるな。いったい何本大賞を出すつもりなんだよ(笑)。
事務局員・関根
実在するんじゃないかと思わせるリアルなキャラクターに親近感を持てたのが高評価の理由です。ラストシーンをはっきり決めてから、作品づくりに取り掛かったのでしょうか。途中のストーキングのシーンでも、どの場所で待ち伏せしたのかとか、細かな点が明確にされていました。画については、まだまだ下手だという自覚があるかもしれませんので、執筆を重ねれば、けっこううまくなってゆくのではないかと思います。日の当たらないキャラクターだけでなく、いろいろなタイプが描けるのではないかと期待しています。
事務局長・藤沢
今までの関根の発言の中で、最も論理的な発言でした(笑)。
編集部員・Y原
どこかで見たような典型的なキャラクターばっかり出てくるのが気になりました。何か新しさが一点でもあれば、画が下手でも面白い漫画になるんだろうけど、そこが見出せないと、既視感のある漫画しか描けなくなってしまうのでは。逆の言い方をすると、この人は画で勝負するタイプの人じゃないから、たとえば花沢健吾さん(『ボーイズ・オン・ザ・ラン』)のような新しい感覚がないと、正直厳しいかな。現状では、作者が面白いと感じたエピソードの切り取り方が、一般的なレベルで止まっていると思います。
編集部員・T盤
話の作り方や見せ方が、(ビッグコミック)スピリッツのやりかたなんですよね。
モーニング・ツー編集長・田渕
この人のウリは何なの?
編集部員・Y口
気持よさそうな角度で人が寝転がっているシーンとか、面白いコマが描けることですかね。あと話の繋ぎ方がうまいなと感じました。
事務局員・関根
そういうユニークな要素を真面目に構成できているというか。
編集部員・Y口
『闇金〜』のようなステージが調えば、長所がうまく生きてくると思います。
事務局員・劔持
作者の感覚の中に新しい面白さを見いだせる人が担当につけばいいと思います。

[絵本] 『マザーズボーイ』宮崎もも (宮城県・23歳)

★2次選考通過作品作品の詳細と選考結果はこちら!ストーリー:内容にとどまらず製本まで自作(?)で完成された絵本。少年の不安を抽象的でいて具体的に描く叙情的な作品。

編集部員・Y川(担当)
好き嫌いはかなりあると思いますが、私はかなり好きです。気持ち悪いんですけど、この気持ち悪さはどこか心地いいです。この少年なら仲良くなれるかもしれない気がします(笑)。
事務局員・篠原
僕もこの作品、相当感動しました。イメージが豊富で、一見繋がらないような画の連続なんだけど、物語はまっすぐ進んでいって主人公の少年の切ない気持ちがストレートに伝わってくるという。けっこう得難い才能かも、と。
編集部員・K林
一見なんだかよく分かんないだよね。でも画が面白いからページをめくってしまって、それでもやっぱり良く分からないんだけど、気付いたらなんか感動しちゃってるという(笑)。俺もこれ、けっこう感動しちゃったクチです。
編集部員・T盤
ただ、これは「絵本」として完成された応募作だから、出版企画としてアリかどうかを考える必要があると思う。編集部としてどれくらいの部数で出せるのかと。
事務局員・篠原
もちろん応募の体裁からするとそのとおりなんですが、この人の才能には、絵本作家としてでなく、たとえば〈へうげもの展〉にアーティストの一人として参加してもらうような展開を期待したいです。MANGA OPENのコンセプト「何でもアリ」を活かせるフィールドが徐々に整いつつあるという、応募者へのアピールにもなりますし。
事務局長・藤沢
かなり評価高いね。絵本という変わり種を一本残してみたい気がしますが、編集長はどうでしょうか?
モーニング編集長・島田
俺は全然アリだと思うけど。推す声も多いし。

[漫画] 『狂犬首輪物語』白井粉 (兵庫県・22歳)

ストーリー:皆が恐れる「狂犬」黒澤海衣がオタク女子高生・瀬名茜の「飼い犬」に!? 女子高生パンチラバイオレンス学園コメディ。

事務局長・藤沢
この人も神戸芸工大の学生さんですね。
編集部員・I上(担当)
他の人と同じく、大学で講評させてもらって担当になりました。評価したのは女の子のキャラのかわいさと、思わず読む手を止めさせる魅せる画が描けるところです。ただ、まだ◯◯フェチみたいな、コレという得意分野を確立できていないのが課題でしょうか。
事務局員・宮本
可愛い女の子が描けるというのは、それだけで一応武器になるとは思います。
編集部員・Y口
僕も評価はしてるんですが、喧嘩に説得力が足りない気がします。小道具的なアイテムを持たせるとか、何かとっかかりが欲しかったかな、と。
編集部員・Y原
こういうジャンルでどういう物が売れてるか考えてみると、「パンツ」と「喧嘩」を上手く描けてる漫画だと思うんですよ。でも、パンツはおいといても、この作品は少なくとも「喧嘩」は描けてないですよね。
モーニング編集長・島田
パンツも描けてないような気がするけどなあ。変態度が足りないというか薄味。
編集部員・Y原
まあ、「パンツ」は理論で描けるといいますから(笑)。
事務局長・藤沢
商品として成立させるには、色気も暴力性もまだちょっと足りないということかな。担当にそのあたりしっかり指摘してもらって、次に期待ということにしますか。

[漫画] 『ドラゴン流星伝』神保賢志 (東京都・28歳)

ストーリー:風を切り裂け、ドラゴン鱗手裏剣! 大地を揺るがせ、ドラゴンボンバーヘッド! メグルは強敵を倒せるか!? 小学生大好物的おポンチGAG格闘浪漫。

事務局員・笠井
これ、かなり笑っちゃいました。画も話も面白いと思うんですけど……編集部の評価低いなあ。
事務局員・篠原
僕もこれ読んでて笑ってしまって……ギャグは笑ってしまったら負けってことで高得点をつけました。ただ作家としての未来や才能は感じますが、現段階では2次選考を通過するレベルにはないとは思います。それにしても想像以上に編集部の評価低いですねえ。
事務局員・笠井
もうちょっと面白がる人がいると思ったんですけどねえ。
事務局員・篠原
「チャンブー」とか、ネーミングもいちいちアホみたい(笑)。僕の中に眠る「小学生」を呼び覚まされた気がして、興奮しましたけど……まあ、低評価の理由も分かります。
事務局員・劍持
1次選考では勢いも感じるし面白いという意見も出たので残すことになったんですが、改めて読むと……2次選考だとちょっと厳しいですかね。
事務局員・篠原
みんなが低い点数を付けるほど才能がないとは思わないのですが、最終選考に残すにはまだまだ未熟かもしれません。
事務局員・笠井
僕も同じです。作者には興味がありますが。

[漫画] 『その子の笑顔が世界を救う』肥谷圭介 (埼玉県・30歳)

★2次選考通過作品作品の詳細と選考結果はこちら!ストーリー:田舎の小学校の先生役を押し付けられた、引きこもりの青年。たった一人の生徒である少女の笑顔のため、日々奮闘する姿を描いたヒューマン・ストーリー。

事務局長・藤沢
総合的に非常に評価の高い作品ですね。
編集部員・Y口(担当)
僕が持ち込みを受けたのですが、読んでて素直に面白いなと思いました。締め切り間近だったので細かい直しは入れられませんでした。本人はハッピーエンドを描きたいという気持ちが強く、それが作品にストレートに反映されていると思います。
編集部員・K本
いや、超面白いですよコレ。表情の変わり方も、コマ割りもすごく自然で、バランスの良さという点では今回ダントツ。
編集部員・T原
誌面に載せても十分読める気はするね。ただ、この作品でなんとなく満足しちゃってる感もあるんだけど、どうなのかな? 熱の入れ方が今後もキープできるのかなって危惧しちゃう。
事務局長・藤沢
なるほどね。完成度が高い分、冷静に見るとどうなんだろう。
編集部員・K
僕は読んでて泣きそうになっちゃったよ。主人公の母親を思い出す一コマで。
編集部員・T村
構成もコマも細部までしっかり気を配られていて、見せ場もちゃんとある。逆に言えば新しいものがないかなって気もするんだけど。かと言って隙がないから説得力もある。
事務局長・藤沢
とりあえずケチのつけようがないってことだね(笑)。

[漫画] 『OTTO』西尾知 (大阪府・20歳)

★2次選考通過作品作品の詳細と選考結果はこちら!ストーリー:実体を持たないAI(人工知能)の少女と、アウトローな探偵が、電子ドラッグ『赤毛のアン』を巡る事件に挑む近未来SFサスペンス。

編集部員・K藤(担当)
この人も神戸芸工大の学生さんなんですが、何十人かの原稿を読み、その中で一番光るものがあったので応募してもらいました。本人はSFだけが好きなわけではないらしく、いろいろなジャンルを描きたいとのことです。
事務局長・藤沢
ストーリーが分かりづらいかな。画の雰囲気やスタイルからすると、ウェブ指向なのかな?
事務局員・関根
ウェブでやった方が面白いと思います。コンピュータを使うと三次元的に見えるから、それも考えての画風なのかなと。SFを描くのってすごく難しいですから、技術的に未熟だと自ずと陳腐な表現になりがちですが、この作品は掲示板だったり架空のツールだったり、設定のディティールができています。ストーリーはいろんな要素が絡みすぎているので、もっとシンプルに作れたら面白くなるかなと。とにかく、ウェブでの展開を考えたらよいのではないでしょうか。
モーニング・ツー編集長・田渕
ただ、ロジックにちょっと穴が目立つんだよね。SFにはあんまり向いてないかも。ペン画をみないと分かんないけど。
編集部員・Y原
一枚画が描けてないんですよね。そこが弱い。長い話にはあまり向かないかな。
編集部員・Y口
たしかに論理に穴はあるけど、けっこうあり得るなって部分をうまく拾って組み合わせてる気はしますね。空間の認識や角度とか、カメラの当て方がうまいなと思います。
事務局員・奥村
この段階でウェブの展開を考えるより、紙の上で描けるよう訓練していくべきじゃないでしょうか。この若さでこれだけ描けるんですから、逆にもっと、ストーリーにせよ、画柄にせよ、パクリ元が分からないくらいいろんなものを吸収させて、インスパイアさせる。3年くらい貪欲にやったら芽が出てくるんじゃないかな。そういうタイプだと思うんです。
事務局長・藤沢
うーん、賛否両論だね。

[漫画] 『限りなく灰色に近い白日』木戸朋生 (北海道・22歳)

★2次選考通過作品作品の詳細と選考結果はこちら!ストーリー:就職活動に身が入らない女子大生、純。恋人や家族からのプレッシャーに苦しみ、将来に怯えながらも懸命に自分と向き合おうとする姿を、夢と現実を織り交ぜながら描いていく。

事務局員・奥村
過去に何度か応募している人の作品です。先ほど、漫画というものは自分の感覚に捉われすぎず、客観的に描けないとエンターテイメントとして厳しいという意見がありましたが、その意味では、作者の自己満足に見えてしまう面もあると思います。ただ、夢ってそもそも論理的な一貫性があるわけではないですよね。それぞれの夢にそれぞれの世界観やら考え方が現れてくる。この作品は多面性を持つ「夢」という題材を、主観的、客観的にそれぞれ描き分けていて新鮮だし、エンターテイメントとしても面白いと思っています。
事務局長・藤沢
前回、前々回より、作者自身のレベルも上がっているね。
事務局員・奥村
そうですね。自分自身の日常から離れつつ、物事を表現出来るようになれば、面白いものが描けるんじゃないかなと。
編集部員・Y根
等身大の自分自身のことをすごく明確に描いているよね。だからこれを読むと、若い子の気持ちが分かった気になっちゃう(笑)。
編集部員・T丸
夢と現実が繰り返される構成なんですけど、最後にセリフで答えを全部言い切ってるのは残念かな。ただ、この人が今まで描いた中では一番の出来だと思う。作者自身の内面の表現に偏っているという点では、エンターテイメントとして難しいというのも頷けますが、自分を表現するってことも、作家はできないといけないんじゃないかって思うんです。本作は夢の反転を繰り返すことで自分を表現しようとしていたから好感が持てました。欲を言えば、画に粗があるので、表情に潤いが欲しいかな。

[イラスト] 『素観』浦正 (神奈川県・38歳)

事務局長・藤沢
編集部とつながりの深いデザイナーが推薦文を添えていますが、イラストとして一定のレベルにあるのかどうか、すでに評価されている現代水墨画などと比べてどうなのかという観点で、点数の高い人は意見を下さい。掲載したい、展開したいということなら、その方法論もぜひ。
モーニング編集長・島田
MANGA OPENの応募作で、こういうの最近少なくなったよね。こういうイラスト的な作品で、オリジナルプレゼント用に使えるものが欲しいなと考えてたんだ。「モーニングはこういうものも必要としていますよ」とアピールするための呼び水として通過させたいなと。ただ、選考委員の山田芳裕さんと東村アキコさんにこれを持っていっても、「どう評価せえっちゅうの?」という話にはなると思うんだけどね。これを使って商品を作りたいんだとした場合、通用するものができるかどうか、そこを基準にしてください……というニュアンスです。昔に比べると、本誌の巻頭グラビアだけじゃなくて、ウェブもあるし電子書籍もあるしで、メディアが増えているわけです。MANGA OPENがジャンルの隔てなく募集してきたことに対し、「漫画以外の作品を集めてどうするの?」という声も常にあった。そういう意味では今が集め時なんじゃないかと思うんです。とにかくメディアはいっぱいあるわけだから、今こそ「何でもアリ!」とすべきだと思うんだ。
編集部員・T原
水墨画としてはごく普通のレベルなのかなと思いました。ただし、デザイナーさんの推薦文がものすごく良くて、この作品の世界観を破格に広げている感じがあって。デザイナーさんとの共同作業によって、見開きグラビアなどが実現すればなと。
事務局員・岡山
年賀状のイラストなど、編集部の宣伝用にも良いかも!
事務局長・藤沢
モーニングには昔、「書」の連載というのもありましたね。売り物をつくらなきゃ商売にならないわけだけど、プロモーションという点でいうと、某美術館がスペースを提供してくれるてな話もあって、漫画を含めたグラフィック展的なこともできるかなと。ただ、現代水墨画として、この作品がどれくらい優れているのか、正直微妙だけど……。
編集部員・Y口
これはすごいとか、みんな思わないのだとしたら、賞を与えてメディアや誌面で発表するのは無理があるんじゃないですか。基本は漫画の新人賞ですから。
モーニング・ツー編集長・田渕
「呼び水」というのは分かるんですけど、これをもしモーニングが推したとしたら、「あ、モーニングはビッグコミック化した」と思われるでしょうね。斬新さに欠けるというか、手堅すぎる。
編集部員・T村
わりと漫画誌向けに描かれているとは思うけどね。僕は昔、プレゼント班という恐ろしい班にいたんだけど、そこでイラストレーターを探しまくった経験によると、当時の水準で、さらに古い話で恐縮だけどこういう作品で4ページ作っちゃって、プレゼントページとしては成立してた時代がありました。だからそういう展開があり得るなら、編集長の話は非常によく分かる。
モーニング編集長・島田
うーん、でもまあ、たしかに既視感があるんだよね。
モーニング・ツー編集長・田渕
うん、吉川壽一さん(書道家。かつて『SHO 天晴れ』をモーニングで連載)の既視感があるし、二十世紀終わりの上品な水墨画というか……。

[漫画] 『ふたりのごはん』能川幸生 (東京都・32歳)

ストーリー:結婚はいいものだ。好きな人と毎日一緒にいられるし、毎日楽しいことばっかり。あー幸せだ……と思っていた。そう、浮気をされるまでは。夫・たくの浮気の証拠をつかんでしまったメグは、包丁を持ってたくを問い詰める。そして話題は「浮気保険」に……。

事務局員・劔持
僕がずいぶん長く担当している人なんですが、これまでモーニング新人賞の二次選考で二回くらい落ちていて、違う方法論や感覚の担当者に交代したほうがいいかなと思っています。
モーニング・ツー編集長・田渕
まあ、よくできてる話だとは思いますが。
事務局員・劔持
これは一週間くらいで一気に描かれたものなので、画はかなりもっとしっかり描ける人です。
編集部員・I上
疑問に思ったんですが、なんで昔の話っぽい匂いがするんでしょう? なんだか昭和に描かれたかのような?
事務局員・笠井
話は面白かったですけどねえ。巧みな語り口だなあと思いました。
モーニング編集長・島田
これ打ち合わせしてんの?
事務局員・劔持
はい。
モーニング・ツー編集長・田渕
一人でこれを描き上げたんなら結構すごいな。そういう感じがしないこともないですが。
モーニング編集長・島田
32歳という年齢を考えても、先々のことでいろいろ悩むというのは分かるけどね。
事務局員・劔持
正直言って、ここで落とされても本人は納得がいくと思うんです。あとはどなたか担当したい人がいれば手を挙げてください。
事務局長・藤沢
一生懸命な姿勢は見て取れるし、できれば評価してあげたいけど……。

[漫画] 『Sunny Sunny Ann!』山本美希 (茨城県・24歳)

★2次選考通過作品作品の詳細と選考結果はこちら!ストーリー:愛車にすべてを詰めて自由に生きるアン。人生とは旅なのだ。1コマの隙もない物語に忘れ得ぬ余韻が残る。

事務局長・藤沢
編集長のツイッターを見て応募してくれたらしい。みんな点数高いですね、この作品は。すんなり残しますか!
編集部員・Y口
これ、コミティアで持ち込みを受けました。あまり打ち合わせはできなかったのですが……。その後、アフタヌーン四季賞に応募されたと聞きました。
モーニング・ツー編集長・田渕
この作品受けたなら、「アフタヌーンなんか止めとけ!」って、こっちにすぐ連れて来いよ!(笑)
事務局員・上甲
同じ作品をアフタヌーンに?
モーニング・ツー編集長・田渕
この人のホームページがあるんだけど、とても多彩な作風なんだよね。
編集部員・M村
いろんな画が描けて、点描の画とか、もう立派にプロだなって。世界観もなかなかすごくて、面白い才能だと思いました。
モーニング・ツー編集長・田渕
とにかくめちゃめちゃ画がうまいし、そのうちすんなりファインアートの世界で認められちゃう気がするんです。だからその前にモーニングであれこれ挑戦してもらって、「漫画の世界からアートへ参戦」という展開がすごく面白いと思うし、ぜひやりたいですよね。作風もスタンスもカッコいいですし。
編集部員・I上
でも、主に漫画を描きたい人なんでしょうか?
編集部員・Y口
はい、そう言ってました。
編集部員・K本
このままウェブに載せたいくらい面白かったです。小太りな主人公がセクシーに見える画力、とてもタフな画だと思う。
モーニング編集長・島田
BD(フランスの漫画)的な作風だから、既視感はちょっとあるんだよね。でも、俺も高く評価させてもらいました。画がどうのじゃなくて、ストーリーなんだ。ストーリーがちゃんとしてるから。しかし一方で、この画柄と画面だと、商品になりにくいかもという不安もある。この人はいろんな画柄が描けるわけだから。この話だったらこの画じゃないといけないっていうのは分かるんだけど、このあとモーニングで挑戦してほしいのは、これじゃない画柄と世界観かな、という気はします。

[漫画] 『四季のうた』『かたきざくら』景行唯 (滋賀県・22歳)

★2次選考通過作品作品の詳細と選考結果はこちら!ストーリー:はる、なつ、あき、ふゆ。「人には見えないけれど、季節が人の姿になったら」を描く感動ファンタジー。

編集部員・I上
私は『四季のうた』の方が良いかなと思います。『かたきざくら』は、幕末系の同人誌でよくありそうな感じなんですが、『四季〜』は、四季を擬人化するという発想自体はどこかで聞いた気もするけど、キャラクターがしっかりしていて、それぞれ表情が魅力的で、かわいいな、気持ちいいなと感じさせるセンスの良さを高く評価します。
事務局長・藤沢
同人誌でよくあるっていうのは、キャラクターのこと?
編集部員・I上
キャラクターというか、設定ですね。
編集部員・T本
両方とも面白く読ませてもらいました。『四季〜』は季節による性格の違いが、『かたき〜』は仇を追いかけて斬る前の心情が、いずれもよく描けていました。この先もっと表情豊かに描けるようになっていくと思うんですけど、でもすでに十分かわいいなと、そこが気に入ったんですよね。
事務局員・岡山
私は『四季〜』を推したいのですが、両作品ともキャラクターが優しくて魅力的なので、どちらか選べと言われたら迷います。『かたき〜』の方は設定にやや無理があるものの、記憶に残るシーンがいくつかありました。『四季〜』には、「夏から始まる」という物語の組み方に意外性があって、面白かったです。ラストの春でオチがついていましたし。それと、寒くて暗いはずの「冬」のキャラクターも、どこか暖かい感じで描けているところがいいんですよね。それで高い評価をつけました。
モーニング・ツー編集長・田渕
この人、タブレットのソフトで描いてますよね。印刷すると変な色が出てしまうことがあるから、そこは注意した方がいいかも。
編集部員・K藤
僕は『かたき〜』の方が面白くて、『四季〜』の方はかえって月並みだなと思いました。『かたき〜』の武士はとてもなよなよしていて、一見好きじゃなかったんですが、仇討ちまでしておいて、その上で悩むさまが逆に新鮮で面白く映りました。

MANGA OPEN事務局員プロフィール

(五十音順/多分に筆者の捏造にて候)

岡山
「チョリ〜スッ! 今日も一日がんばルンバッス!!」。ふわっとフリルのついた春色ワンピで身を包み、毎朝元気120%で出社する「ゆるカワ」編集者。「最近さ〜○○を××しちゃってさ〜、決死のダイエットで激ヤセしたのはいいんだけど、ハラの皮がゆるゆるになっちゃって……」な「ゆるカワ」編集者でもあったりすルンルンバッス!! しかし、2010年の春に勃発した「WO(岡山×奥村)紛争」の影響で、ルンルンしてられないのは事務局総員の悩みのタネ。先日も、歓迎会の場所選びで「だんぜんジュク(新宿)ナリ!」「い〜や、ギロッポン(六本木)だべっちゃ!」と小競り合い、「あわや失禁!」な事態に陥っていた。ことほどさように、元気ルンルン勇気モレモレな紅一点は、一本バツーンとスジの入ったメルヘンやファンタジーを愛すルンバッ! ※「WO(岡山×奥村)紛争」だぶるおーふんそう 編集部全員が読む一斉送信メール上で、OPEN授賞式後の飲み会の場所を「新宿か渋谷」(岡山)「六本木か麻布」(奥村)で争い、部員全員をあきれさせた事件。編集長の介入でいったんは沈静化したものの、飲み会の選定のたびに紛糾し、毎回「すわ失禁!」な事態に陥っている。
奥村
一年間におよぶ断酒のおかげで、体脂肪は10%。うっすらとピンクがかって見える赤身の筋肉が、みっちりと張り巡らされて、全身のフォルムはミケランジェロの彫像のよう。そんな自己愛☆ルナティック男子の日課は、社員の出入りが少ない洗面所でのボディ★チェック! 脂肪の量、肌のハリ、はては、胸部に2つほどついた「ぽてっとした歓喜の突起」の色まで確認する念の入りようだ。後ろ手に縛って愛でてしまいたい「被ボーイズラブ編集者」の名をほしいままにする彼の好きな言葉は「俺」! というか好きな物は「俺」!! 上記・岡山との「WO紛争」は、「俺」以外のものに一切興味がない自己愛が生んだ部分もあるのではと事務局長・藤沢は分析している。しかし、自身が好きだと感じた作品には、惜しみなく愛情を注ぐ。だって、そもそもその作品を好きだと感じた「俺」のことを「俺」はこの世でもっとも好きなんだもん☆
笠井
天然の老け顔で仕事をサボっているように見えても右手の親指は常に絶賛高速稼働営業中。「池袋でオススメの店ない? もちろんアッチの店のことやで!」。モーニング随一の老け顔を誇る万年定年間近風編集者は情報収集を欠かさない。拡張されたアナルと傷だらけの前立腺はデキる男のパスポート(夜間限定)。「僕はっ、僕はアナタの犬ですぅっ!!!!」。自分の耳までイカレちまいそうな絶叫と燃える毛根のタンパク質の臭いと鞭で叩かれる焼けるような痛みだけが彼の生きてる実感だ。夜に満足する男は昼冴える。「はっはっはっはっは。いいじゃないですか、はっはっはっはっは」。日中の彼は虚無な笑いで全てをやさしく包み吸い込む様はさながら人間ブラックホール。「大丈夫でしょ、大丈夫でしょ」。今日も打ち合わせスペースでは優しい言葉。漫画志望者諸兄のお悩み相談にもぴったりだ。なんだか最近ちっとも毒を吐けてなくてなんてアナタ、ぜひぜひ弊部笠井をご指名くださいませ。表もあれば裏もありますが、人前では表しか見せません。よろしくねo(^--^;)
劔持
「もういい加減捨てられる!」という強い危機感のもと、稼ぎのいい彼女の顔色をうかがいながら同棲生活を続けているヒモ編集者。指輪を渡せば、あとウン十年は生きのびられるという「超ヒモ理論」によって、先日、大黒屋で高級指輪を購入。いざ、渡さん! というその日、担当しているコラムの取材に出かけたヒモ。手作りサウナに入って、彼女に渡す指輪を自慢していたヒモ。「後ろ!後ろ!」の声が聞こえる典型的な場面に気づかないヒモ。案の定、指輪は板敷きのスキマに落下! 大黒屋の指輪はいまだ板の隙間に眠っているという……。そんな、いかにも気のよさそうなヒモ男の必殺技は、「すれ違い呪詛ラリアット」。気に入らない編集部員とすれ違う際に、聞こえるか聞こえないかの声量で、「あー腹立つ」といった呪詛の言葉を浴びせるのだ。事務局・笠井も「あー殺したい」とヤラれたことがある。根はヒモだけに、粘り強く漫画作りに携わる姿をよく見かける。
篠原
愛する彼女が朝出社する直前に、顔中をベロベロ舐め回し、「時間がないからこのまま会社に行ってくれ! オマエの顔でオレの唾液が乾いていく様子を想像しながら、オレは寝るわ」とのたまう強度の2H(変態編集者)。当然ふられ、その彼女が結婚することを人づてに聞いて、〈結婚おめでとう! 何度も顔は洗っているものの、かつてオレが唾液まみれにしたオマエの顔を、別の男が舐めている場面を想像しながら、オレは寝るわ〉というメールを送り、受信拒否されたという。そんな偏執狂的なセンスは、漫画づくりにも最大限発揮されていて、あくまで独自な、担当者の好みが赤裸々に反映されたヒット作が、いつか出来そうな気がするような気がしたこともいつかあった気がする。
上甲
約5頭身のヌイグルミ風ボディで、女子部員たちには「キャワイイキャワイイ! ニャンニャンニャン!」とチヤホヤされているが、銀行員メガネを外した、その眼は凶気を秘めている。「おい、上甲!」というコピーを入れた駅貼りポスターをバラまきたいくらいの悪相である。事務局が懇意にしている占い師の見立てでは「仮面の相」。裏表が激しい多重人格相だという。家庭内でも、妻の前では貞淑な夫を演じているものの、酒を喰らうと一気に豹変する……。先だっての年の瀬のことじゃった。悪相は妻の実家に滞在し、義父と差し向かいで「雨後の月」(広島銘酒)を酌み交わしておった。ちょうど一升瓶が空になった頃、強い雨が……。雷に照らし出された悪相はやおら立ち上がり、白いハチマキに2本の懐中電灯を差し込んだそうな。そして、集落を駆け回り……そんな多重な人格でバラエティ豊かに新人を発掘するという……。
関根
両親の出会いは「合同ハイキング」(合ハイ)という'70〜'80年代のチューサン階級が生んだ時代の鬼っ子。「エナジ」という名前は、物理学者の父が「energy=活力、精力」あふれる男のコになってほしいと命名したという。その名の通り、週に5日は深夜の独り焼き肉(四人前)をペロリと平らげるワンパクぶり。ある連載作品の内容紹介では、「次号、○○○ついに死亡!」と作者も担当者も知らない結末を考え出す豪腕ぶりも見せ、さすがにenergyありすぎなんじゃないのかと危険視されている。'10年の6月に他部署から異動して以来、そのありあまった精力で、最大の敵である編集部員サドガジマ・シャレオツ・メガネの寝首を虎視眈々と狙っている。凶気を秘めた大脳新皮質で、高次元で特異な作品の真価を見抜く。
事務局長・藤沢
インド王族の家に王子として生まれ、禅宗を開き、ダルマのモデルとしても有名な、高僧・菩薩達磨にソックリな風貌の異形編集者。若者の「〜じゃないデスかー!」や「いま、一瞬いいッスか?」のような言葉遣いを憎むあまり、眉間の皺はますます深く、黒目はどんどん縮小しているため、成功前のダルマそっくりな風貌へと深化している。信州松本の清冽な湧き水に包まれて育ったわりには、ぼやきやすく、ねたみやすく、そねみやすい下劣な人格の持ち主である。「人生は与太」がモットーで、与太話を飛ばしながら酒を飲み、飲み屋で偶然出会った与太者にからまれながら、残り少ない人生をヨタヨタと寄り道しながら歩む。人生の敗者として、おもしろきことなき世の中を斜に眺めてきた弱者の視線は、勝ち組編集者の目には決して届かない、ディープ&ワイルドな領域を拾い上げる。
宮本
夫婦仲が毎夜「剣が峰」というアオヒゲ編集部員Tによると、シアワセすぎる夫婦仲を維持している類いマレなる事務局員。ただ、目下の悩みは冷たいビールを飲み過ぎた後の「漏らし癖」。妻と眠る寝室で、毎晩毎晩あまりに漏らすものだから、「たまに漏らさない日があると、『ちょっと、あーた! どこか他の女のところで漏らしてきたんじゃないでしょうね!!』と怒られるんだよねー、テヘ」といったノロケにはオゾケが走る。趣味のテニスで動ける体力を維持するため、毎夜のジョギングは欠かさないそうだが、週に一度は家に戻る前に漏らしてしまう。まったく活躍しない括約筋の持ち主だ。ただ、「モーニング・ツー」の校了担当としての漏れのないチェックには定評があり、モレモレな新人の才能に関しても漏れなく見抜く。