CHAPTER2:ストーリーについて

料理を作ってから、物語を考える

──ほぼ毎回読み切りというストーリーですが、ストーリーを先に考えるのでしょうか、それとも、料理を先に作ってからストーリーが出来るのでしょうか?

うえやま 料理が先です。週刊連載の中では、月曜に料理、火曜に話の案、水曜に下書き、木曜と金曜で清書、というスケジュールが理想ですけど、どうかすると水曜ぐらいまで……「干しアワビのうま煮」の時なんて、木曜まで料理をやっていて……。「もう4日も料理をしちゃってるよ……。何でスルメの味しかしないんだろう? やっぱり、シロウトが手を出すもんじゃなかったんだよなぁ」なんてブツブツ言いながら仕上げてね。おまけに、参考のためにマネージャーと高級中華料理店に出かけてプロの味を食べてみたら、お会計が2人で9万2000円で、それには腰を抜かしました(笑)。

料理のネタに詰まると、ネットなんかで軽く下調べをしてアタリをつけて、ポンと遠くに取材に行っちゃいますよ。数日前も鹿児島に出かけていました。「前回に鹿児島まで出かけた時に食べられなかったアレは、もうお店でもあんまり出されていないのか……。それなら、現地で聞き込みをしてみよう」なんて、連載1000回を超えてあらかたのレシピを描き尽くしてしまってからのネタ探しというのは、ほとんど探偵みたいなもんですよね。

『クッキングパパ』64巻126~127ページ「あたし作っちゃったー!! 干しアワビのうま煮」より

『クッキングパパ』64巻126~127ページ「あたし作っちゃったー!! 干しアワビのうま煮」より[Amazon.co.jpへ

「何でもない話」こそが難しい

──ストーリー作りの上で重視なさっている点は何でしょうか?

『クッキングパパ』8巻45ページ「入魂の1杯 おいしいコーヒーをいれよう!!」より

『クッキングパパ』8巻53ページ「入魂の1杯 おいしいコーヒーをいれよう!!」より

『クッキングパパ』8巻45ページ、53ページ「入魂の1杯 おいしいコーヒーをいれよう!!」より[Amazon.co.jpへ

うえやま 連載前に決めたのが、「敵と戦わない」、「大きな事件は起こさない」という設定でした。この方向性については、その前に連載していた『大字・字・ばさら駐在所』を描いていた時に既に手応えを感じていました。

『大字・字・ばさら駐在所』の連載が半年か1年続いて、事前に準備しておいた「これは描きたい」というネタをほぼ出しきった頃、さてここからどうしようかなというタイミングで、ふと「駐在さんが自転車教室を開く」という話を描いたんです。どうってことのない話なのに、「よし、これから描いていけるものはココにあるみたいだぞ」と深いところで感じられて、地味な話なのに読者もきちんとおもしろがってくれるとわかりました。

その延長線上で、『クッキングパパ』でも、主人公の荒岩は喋らず戦わず、得意の料理も絶対に出世の道具にはしない──こういうカッコよさをわかってくれるといいな、と描き始めたわけです。

編集者と当時よく話していたのは、マイナスを解決してゼロになって終わるのではなくて、初めからあるプラスをもっとプラスにするストーリーにしたいよね、ということでした。みんなでバーベキューをしてみたら楽しかったなぁとか、もうそういう話でいいじゃないか、と思っていて。

ただ、そうは言っても初期の頃は、そういう何でもない話を作ることこそがけっこう大変で、「事件でも起こしたほうがよほど簡単に盛り上げられるのにな」とは思ったけれども、そこは「作り手の身勝手でキャラクターを操作しちゃダメだ」とグッとこらえて、たとえば「隣のおばあちゃんは元気かな?」みたいなきっかけからストーリーにしていきました。

すると回を重ねるにつれて、キャラクターたちが自分のほうから喋りだして、どんどん幸せになっていってくれましたね。いまはもう、しょっちゅう誰かが結婚するし、子どもを産むし、というのを見守っているような状態ですから(笑)。