2008年2月、日本で10年ぶりとなる宇宙飛行士の募集が発表された。過去最多の応募総数963名の中から、10名に絞られた最終試験に密着し、特集番組を制作したNHKの取材陣である大鐘良一さんと、小原健右さん。過酷な状況下で行われる試験の様子や、候補者それぞれの思いをつぶさに追ったノンフィクション『ドキュメント 宇宙飛行士選抜試験』を刊行されたお二人に、大気圏外の環境で求められる「人間力」について伺った。
宇宙飛行士選抜試験は“究極の面接”!?
——宇宙飛行士選抜試験に着目した理由は何でしょうか?
大鐘 きっかけは、今から12年前に募集のあった前回の宇宙飛行士選抜試験のときにさかのぼります。当時新聞で宇宙飛行士募集の小さな記事を見て、是非ともドキュメンタリー番組にしてみたいと思いました。宇宙飛行士は、世界でも限られた人しかなれない、いわば“人類代表”です。「“人類代表”を選ぶ試験とはどんなものか? 絶対に特殊な試験を行っているはずだ! ぜひ覗いてみたい」という好奇心から、NASDA(現JAXA)に撮影させてほしいと頼みました。しかし、当時はまだ宇宙飛行士選抜試験を公開しようという雰囲気はなく、あっさりと断られてしまいました。それでも撮影することをあきらめきれず、10年間待ってようやく今回の試験のチャンスを得たわけです。
宇宙飛行士とはそもそもどんな職業なのかを知る上で、最も確実なのは試験に密着することではないかと考えました。試験を通して、宇宙飛行士に何が求められているのかが理解できれば、宇宙で人が暮らすということが一体どういうことかが、わかるのではと感じていました。
——密着取材をする中で、特に印象に残ったエピソードは何ですか?
NASAの面接に立ち会った時のことです。面接の部屋の中のあまりに張りつめた空気に耐えきれず、自分の足が震えだしたのを覚えています。それぐらい、緊張感のある面接でした。NASAの広報担当者にとっても、その光景は衝撃的だったようで、「面接を撮影するなんて前代未聞だ」と何度も言っていたのが印象的でした。
大鐘 閉鎖環境施設での試験の際に、JAXA側が10人の候補者たちに「これでもか! これでもか!」とストレスをかけようとしていたことですね。応募総数963人の中から最終候補者に残った10人はさすがに協調性があり、精神も安定している強者ばかりです。その強者の素の姿を暴こうと、JAXAは次から次へとプレッシャーをかけます。たとえば、「アクシデントがあって食事が届かない」とか、ロボット製作の課題では、「すべての打ち合わせを英語でしなければならない」というように、『宇宙兄弟』の作中に出てくる「グリーンカード」ほど酷なものではないものの、候補者たちにじわじわとストレスを与えていたのには驚かされました。そのために、候補者の中には通常では考えられないようなミスをする人もいました。
(※このエピソードの詳細は、『ドキュメント 宇宙飛行士選抜試験』にも書かれています)
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