ジョーのラストを描いて迷いが消えた

30年にわたり「ちばてつや賞」の審査委員長を務めてきたちばてつや先生。
インタビュー企画の最終回は、先生の仕事部屋にお邪魔して、マンガの創作方法、道具、こだわりなどを訊いた。貴重な写真も大公開!

ネームはなくても良い。コマを大切に

「私はコマをぜいたくに使うほうだと思います。なくてもいい……でもあるとさらにその人の気持ちがわかる、みたいなコマを大事にしたい。新人にそのことを教えるのはなかなか難しいんだけどね」。ストーリーに関しては、「山=クライマックスを登りっぱなしだと読者も疲れちゃう。合間でちょっと草原を歩かせるような作りがいいと思います」。

仕事机の前で道具や原稿を見せながら、マンガの制作過程を語る、ちば先生。一番力を注ぐのは、ネーム(=絵コンテ)だという。
「力が10あるとしたら、私の場合はそのうちの7から8は、ネームを描くのに使います。ネームでは読む人がいかに迷わず、その世界にすっと入っていけるかに気をつける。もちろん絵も大事ですよ。いくらいいセリフでも、表情とか眼が死んでいたら伝わらないから」
絵に関して、特に注意すべき点は?
「描き込み過ぎたり、自分の絵に酔っているような人を見ると、もったいないなと思う。不安になるのもわかるけど、描かない努力も必要なんです。あえて背景を描かないことで、人物の表情に目を向けさせられたりもする」
先生は最近、作画にパソコンを導入。新しいことにも積極的に取り組む。
「ベタとトーンをパソコンで。生原稿がペン入れまでのものになってしまうから、ちょっとみすぼらしいのがいやなんだけど(笑)」

長い歴史とたくさんの道具がぎっしり詰まった屋根裏部屋

屋根裏にあるため「夏は暑くて大変(笑)」という仕事部屋。ネームと作画はここで。「ネームをやるときは音はないほうがいいけど、作画の時はもう構図や表情は頭に入っているので、ここで好きな落語を聴きながらやるんですよ」

名作映画、揃ってます

黒澤明やチャップリンなどの名作がずらり。「映画は大好き。マンガ家って、監督、俳優、大道具、全部の役割を一人でやれるようなもの。いい仕事だなあ」

圧巻!壁一面の本棚

屋根裏部屋から出たところにある、ゴルフの練習もできるほど(!)広い部屋には壁一面の本棚が。

細かく描き過ぎないようにあえて太い鉛筆を使用

ネームと下描きには、芯も、持ち手も太い鉛筆を使用。テープを巻いて太くカスタマイズしたものも。「鉛筆が太いと、まずは大雑把に描けるのがいい。最初から細いのを使うと細かいところを描こうとし過ぎて、全体が見えなくなるからね」。2008年の作品で、トキワ荘の面々との交流を描いた『トモガキ』にはパソコンを使用。「今マンガを教えている文星芸術大学の生徒たちにも手伝ってもらってね。みんなの力で仕上げました」。

4回にわたるインタビューを通して伝わってきたのは、ちば先生の、ちばてつや賞応募者や新人に対してのあたたかくも厳しいまなざしと、自身の創作に対しての50年間変わらぬ情熱!
最後に、ちば先生からひとこと。「苦しいこともたくさんあるけど、マンガ家は本当にやりがいのある仕事だと思います。私自身、マンガを描きながら何度もそう感じてきた。ぜひみなさんも、まずは一作マンガを描き上げてみてください!」

第3回ジョーのラストを描いて迷いが消えた

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プロフィール

ちばてつや

1939年東京都生まれ。56年にプロマンガ家としてデビュー。以後、『ちかいの魔球』(61年)、『あしたのジョー』(68年)、『のたり松太郎』(73年)、『おれは鉄平』(73年)、『あした天気になあれ』(81年)など、多数のヒット作を手がける。05年より文星芸術大学にてマンガ専攻教授を務めるなど、積極的に後進の育成も行う。09年にはマンガ界の発展に大きく寄与したとして、講談社漫画賞の講談社創業100周年記念特別賞を受賞。社団法人漫画家協会常任理事。

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