2次選考会の議事録をノーカット完全収録!

ちばてつや賞一般部門の2次選考は、部内選考会です。
モーニング編集部員全員で議論を行います。
その場で、自分の気に入った作品を最も熱を込めて説明した編集部員が、その新人作家の担当編集となります。
参加者全員の投票で上位となった作品が、最終選考へと進みます。

 

作品の詳細と選考結果はこちら!『動物園のオムライス』いノうエさトル(愛知県・44歳) ★2次選考通過作品

●編集部員・A
これはもう、すごく面白かったね。62枚もあるのに、ものすごく読みやすい。ちゃんと「死」を扱っているのも素晴らしくて、そういう描写もしつつ最後また「生」を描いて終わるところも素晴らしかった。話は本当に良くて、この動物園のレストランの子どもに生まれたかったくらい(笑)。ただ、画力は高いとはいえないね……。漫画家よりも、ネーム原作者を目指すほうが良いと思うんだけど。
●編集部員・B
青年誌では特に大事な「切ないシーン」を、暗くなりすぎないように描けている。モーニングという雑誌に向いている人だと思いました。
●編集部員・C
僕は可もなく不可もなくといった評価なんですが……。動物園なのに、出てくる動物がありきたりで、作品を読ませるフックとしてその辺りがちょっと弱いと感じました。主人公の子どもにも、子どもらしさが少し感じられなかったし……。
●編集部員・D
僕はすごく高く評価しています。話自体はもちろん面白くて、絵のほうもこれはこれで味があるかな、と思ったのですが。
●モーニング編集長・島田
俺は読みながら予想してた通りの話だった、という印象だな。動物園の中の食堂、という設定にはかなり惹かれるものがあって、最初はすごく面白そうと思ったんだけどさ。動物と飼育員の描写についてもリアリティというか、シビアさが足りない気がしたよ。
 

『吾亦紅(われもっこ)』岩椅(はし)やしろ(埼玉県・35歳)

【ストーリー】レタス農家にアルバイトに訪れた主人公(♀)。最大の敵は、無口で異常なほど仕事に厳しい農家の息子。にっくきアイツの鼻を明かすまではやめられない……でも辛すぎる。涙が出ちゃう。そんな、泥と朝露にまみれた高原青春記。

●編集部員・F
キャラに眼力があって、出てきた瞬間に、どんなヤツなのかがはっきりわかったんです。けれども、話がすごく綺麗にまとまっていたというわけではなく、強いカタルシスがあったわけでもない。ただ、そんな欠点を差し置いても、キャラの魅力という点では良かったです。
●編集部員・G
キャラクターがしっかりしていて、お話も最後まで読めたんですけど、絵があまり魅力的ではなかったです。演出として、面白いコマがあったりもしたんですが……。
●編集部員・C
俺は逆にキャラクターが受け付けなかった。なんでこんな身勝手な女にみんな協力的で優しいんだろうって。すごい美人だったり、エロかったりするわけでもない。主人公に、主人公としての魅力がなかったと思います。
●編集部員・H
農業自体について語るのかと思いきや、結局足腰が大事、という結論で、農業の面白さがあまり伝わってこなかったよね。
●編集部員・E
作者の方の、農業が好き!っていう気持ちがいまひとつ見えてこないんですよね……。そこが少し残念でした。
 

作品の詳細と選考結果はこちら!『ダチョウの王国』青野寧々(愛媛県・18歳) ★2次選考通過作品

●事務局長・宮本
この作品は僕が担当しています。一年前のちば賞で『猫神』という作品で賞を取った方です。『猫神』を投稿用にシリーズとして描き続けていたのですが、話がどんどん殺伐としていってうまくいかなくなっていたので、全く別のものを描いたうちの一つです。
●モーニング編集長・島田
相対評価でいえば、これが大賞をとってもいいくらいだとは思った。どこかで見たような話ではないし、主人公の親子がこの先どうなるのかな、ということにも興味が持てる。絵もうまくなってるしね。
●編集部員・A
今までと違った作風をものにして、それは進歩だと思うんだけど、ちょっと構図が単調だったね。読んでいてそれが気になった。
●編集部員・H
キャラクターよりダチョウのほうが印象に残っているんですよ。この作品では、キャラクター、特に主人公のお父さんのほうをもっと印象に残るようにしてあげる必要があったと思います。彼のワガママな性格にしても、例えば「ここだけは許せない!」と作家さん自身が実際のお父さんに対して思っているところを出してあげたほうが、漫画のお父さんのキャラクターが立ったのでは。
●編集部員・J
僕は今までの作品のほうが、キャラクターは良かった気がします。芸風を広げようとして、いろいろなことにチャレンジしているのはわかるのですが、僕もダチョウしか印象に残っていなくて……。
●編集部員・K
先ほど、構図が単調だという意見があったのですが、ダチョウのコマに関してはそれが逆に効いていた気がします。すごく狭い家の中にダチョウがいる閉塞感みたいなものがコマから読み取れて、やっぱり才能がある方だと思いました。
 

『夜空に願いを』熊谷兄弟(愛媛県・38歳/35歳)

【ストーリー】恋人と別れた女性。だが、地元で生活する中で、彼女は恋人への想いを再び募らせていく。7年前、彼らが付き合い始めたのは、不思議なきっかけからだった。

●編集部員・L
オールカラーで描いているんだけど、このタッチだと雑誌掲載時にその魅力はなくなってしまうんじゃないかな。一応起承転結はあるんだけど、内容もページ数のわりに乏しくて、もう少し短くまとめられるんじゃないかと思った。
●編集部員・D
人物に表情があまりなくて絵が硬いし、タイムスリップというネタもちょっとわかりにくかったかな。
●編集部員・M
ひとつひとつの絵が止まってしまっているというか、キャラクターに動きが感じられませんでした。
 

『碧に環(めぐ)る夏』 作画/粳田由紀子(東京都・24歳) 原作/親川沙寿香(東京都・25歳)

【ストーリー】漣(さざなみ)イサキは親の都合で田舎に一年住むことになるが友達を作る気にもならない。しかしある日、海で美しい女性ダイバーを目にしてから彼は変わり始め……。

●編集部員・F
海が好きなんだろうな、という作家さんの気持ちが絵から伝わってきて、個人的にすごく好感が持てました。でも、テーマとなっているフリーダイビングの素晴らしさや、なぜ好きなのか、みたいなものがあまり具体的に描けていない印象で、感情移入するためにそこをもう一押ししてほしかったです。絵はとても魅力的でした。
●編集部員・J
クライマックスでヒロインが海面に現れるところは、とても大事なシーンだと思うんだけど、どうにもそこの絵がしょぼいというか……。編集部員・Fの意見とは逆に、重要な感動を絵のせいで伝え損ねている気がした。それでも、ストーリーのほうにすごく興味を惹かれる内容が入っていれば良かったんだけど、それもあまりなくて。フリーダイビングっていう題材自体が面白くなさそうだと思ってしまいました。
●編集部員・I
競技の解説としてはわかりやすいんですが、もう一歩踏み込んで、実際にやってみたい、と思えるような魅力を描いてほしかったですね。
 

『無常の風』他1本 宮村さとし(愛知県・29歳)

【ストーリー】負け戦で、追っ手から逃れる武士・平蔵。家族ができて以来、非情に徹しきれなくなっている自分を感じている。逃げ込んだ家にも女が隠れていたが、それを見逃そうとしているのを仲間に発見され……。

●モーニング編集長・島田
自分の頭で一生懸命考えているという感じがした。絵は達者とはいえないけど、中にはすごくいい表情がある。漫画に向き合う真摯な姿勢が漫画から推測できるんだよね。器用ではなさそうだけど将来性は感じた。
●編集部員・A
「家族ができたために非情になりきれない男」というのをすごく上手に描いていて、本当に微妙な人間の感情をうまくとらえていたと思う。ただ絵については、描き込んではいるんだけど、もっといい見せ方があるんじゃないかな。
●編集部員・N
俺も話は面白かったんだけど、絵が気になりました。構図を苦心していろいろ変えているなとは思ったんですが、ちょっと上手くいっていない感じもしたし。登場人物に存在感がなくて、目にも力がない。キャラクターの感情表現が弱いかなと。
●編集部員・O
全体的に不器用というか、作品のテーマも絵も荒々しいんですが、そこにちょっと柔らかいシーンだったり、感情移入しやすいキャラクターを描けるようになれば、だいぶ印象が変わりそうな気がします。
 

作品の詳細と選考結果はこちら!『コンプレックス・エイジ』佐久間結衣(東京都・26歳) ★2次選考通過作品

●編集部員・P
第33回MANGA OPENで、『which witch』という魔女っ子ものの漫画を描いていた方です。その作品がMANGA OPENで2次選考落ちとなった後から、今回のちば賞に向けて一緒に作品を作ってきました。
●編集部員・D
1ページ目を見た時には、前回とあまり変わってないのかな、とちょっと不安になりましたが、普通にいい話で、主人公の気持ちもよくわかりました。ただ、最後の「ゴスロリ」をやめてしまったところには、違和感がありましたね。
●編集部員・Q
僕は、あまりにも「ゴスロリ」好きの人の心を捉えてなさ過ぎるし、すごく嘘くさいなーと思いました。この作家さんは、現実的な話より、非現実的な話を一生懸命描いたほうがいいんじゃないかな。
●モーニング・ツー編集チーフ・矢作
「ゴスロリ」への愛のなさは、確かにものすごく感じられたので、「ゴスロリ」についてもっと調べて、もっと好きになってから描いたほうがよかったんじゃないかな。顔はすごくいいんだけど身体がちょっと下手なので、そこは早急に練習してほしいですね。でも、絵は素敵だし、「ゴスロリ」という題材も、いいと思います。
●編集部員・E
あまりにも“等身大の話”にし過ぎてしまったのかな、と。夢のない話ではなくて、夢のある話を読みたかった。でも、絵も上手いし、話もよく出来ていると思います。
●編集部員・N
私は個人的には、前作のほうが好きなんですよね(笑)。子供っぽくはあったけど、主人公の年齢特有の正義感なんかが、すごく瑞々しかった。ただ、これだけのクオリティのものを描けている人なので、期待値は高いです。
 

作品の詳細と選考結果はこちら!『苦海』ナガタ(東京都・33歳) ★2次選考通過作品

●編集部員・O
コミティアで出会った人です。44ページというページ数の物語を描くには、構成力にまだ問題があって、わかりづらい点は多いですが、絵にはこだわりがあり、そこは魅力だと思っています。
●編集部員・D
すごく綺麗な線だなと思いました。ただ、あんまり描き分けができていないのか、キャラクターの顔がみんなつるんとしていて、読んでいるうちに話がよくわからなくなってしまいました。
●編集部員・J
今回この人の絵がダントツに上手いと思いました。身体がすごく柔らかに描かれていて、着物の描き方もとても色っぽい。すごく将来性があるんじゃないかなと思います。楽しみです。
●編集部員・F
女性の裸が美しかった。読者として、「裸を見たい!」という気持ちにさせられました。
●編集部員・R
作家性は、3番の『ダチョウの王国』の人と双璧をなすくらい、あると思います。語り口があまり上手くないし、親切でない描き方をしているので、すごく話はわかりづらい。でも、描こうとしているテーマは高尚なものだし、パーソナルなものを、“でもみんなあるよね”という視線で描いている。描こうとしているものは、すごくいいなと思います。そして、とても絵が上手い。今回の中で一番、“レンズ”がはっきりしている絵を描いているなと思いました。
●編集部員・N
吉原が“苦界”だという図式の話を描いていても、もうダメだと思うんですよ。そんな話は山ほどあるし、そもそも見てきたのかと。定説や通説なんかに、“描かされている”感じがある。強い女を主人公にするとか、女性が酷い目に遭う話でないほうがよかったんじゃないかな。
●モーニング編集長・島田
モーニングで読者が求めている歴史物は、“新しい歴史解釈”が入ったものなんだよね。『蒼天航路』や『へうげもの』みたいに。通説を覆すような“視点”を探してみてほしい。
 

『DOG TAG』田口祥子(埼玉県・34歳)

【ストーリー】少女に拾われた、一匹の野良犬。ゴンという名を与えられ、少女と幸せに暮らしていた彼は、軍用犬にならないかと誘われる。「みんなの役に立つのなら――」。ゴンは少女と別れ、立派な軍用犬を目指し奮闘するが……。

●編集部員・S
かわいそうで、切なくて、とても印象に残りました。何匹も犬が出てくるんですけど、その描き分けが生き生きとされていて、もしキャラクターグッズとかがあったら、楽しく選んで買ってしまいそうだなと。犬好きではない私でもこんなに楽しめたのだから、この作品には何か希有なものがあるんじゃないかなと思います。
●編集部員・K
主人公の犬のネームには、響くものが時々あるんです。でも、そのためにすべての設定を都合よく作ってしまっているので、そこが気になりましたね。あと、残酷なシーンを直接描かないようにしたのでしょうが、そのせいで何が起きているのかよくわからないところがいくつもありました。
●事務局長・宮本
途中から犬が主人公になってしゃべり始めたところで、一気に幼くなった感じがします。
●編集部員・C
僕も、犬がしゃべり始めたところで白けてしまいました。しかも、読後感が悪い……。
●編集部員・L
リアルとファンタジーの境界線を、きちんと作れていないのかなと。犬のキャラクターも、ちょっと類型的に思えましたね。
 

作品の詳細と選考結果はこちら!『画家が死んだ』ノザキ(千葉県・26歳) ★2次選考通過作品

●編集部員・P
持ち込みで受けた方です。完成原稿で受け取ったので、ほとんど修正はしていません。
●編集部員・B
これは、雰囲気に寄りすぎな作品ですね。人物の表情を描かない人は、漫画家向きではないです。
●編集部員・M
エンターテインメントを描く気がない人なのかなと思いました。商業誌でやっていくには、ちょっと難しい気がします。
●編集部員・C
いや、面白かったですよ。他の作品には、面白さにきちんと理由があったんですけど、この作品は粗さも含め、すべてがよかったと思います。もう少し、画家の日記の冒頭に工夫は欲しかったけど、すごく才能がある人だなと。
●編集部員・E
ちょっと固いラノベっぽい感じがありますよね。僕は、時間軸の複雑さを、画面の工夫でわかりやすくしてほしかったです。
●編集部員・I
画家の思考回路に若干“中二病的”なところがあるので、そこにどれだけの人が共感できるのかな、とは思いました。個人的にはそういうものが好きなので、すっと作品には入っていけましたが、これが万人ウケするかどうかは、正直ちょっとわからないですね。でも、語り口が独特で、僕は面白いと思いました。
 

『報復刑〜罪と罰〜』トータス杉村(東京都・35歳)

【ストーリー】20XX年、日本は死刑制度を廃止、「報復刑」が制定される。これは国の管理のもと、加害者が被害者の遺族に裁かれるというもの。報復刑執行局に配属された桜井は先輩の陣内と共に、娘を殺された黒田の担当となるが……。

●編集部員・T
かつてちば賞で、大賞を取ったことがある方です。ネームの打ち合わせを何度かしていましたが、途中で没交渉になり、この完成原稿が届きました。「報復刑」が制定されるほどの世界になってしまった、という描写がないまま話が進むので、現実感や説得力がないのだろうとは思います。でも、こういう、答えを出すのが難しい、大きな話を描こうとする作者の気概は、担当として大いに買っています。
●編集部員・B
いろいろと詰めが甘いところはありますが、今回の応募作の中では一番、青年誌らしいものを描いているなと。人間を描こうとしているし、妙に答えを出そうとしないのもいい。新しい刑罰を描くという視点も、いいと思います。
●編集部員・F
ワンアイデアですが、最後まで頑張って描いているし、こういう人にデビューしてほしいなと思いました。
●モーニング編集長・島田
アイデアはアリかなと思ったんだけど、この話を“いい話”にするのは、無理だと思う。サスペンス仕立てにするとか、人間の醜さや、ぞっとするところを描くとか、この話に合った描き方をきちんと選ばないといけない。厳しい言い方になるけど、そのあたりのバランス感覚がちょっと悪いのかなと。
●編集部員・C
読んでいると、作者が「死刑制度」や「報復」について、きちんと考えているようには思えないんですよね。
●編集部員・M
これが現在の「死刑制度」に対しての問題提起だとしたら、あまりに安易に思えます。かといって、エンターテインメントとして成立しているかといえば、そんなこともないですし。
 

『青い梟のセンネ』綿貫ゆか(長野県・29歳)

【ストーリー】ある冬の寒い日、高齢の学者は遊びに来た女の子たちに昔話を始める。子供だった学者は、「都会もん」とバカにされたのが悔しく、勇気を示すために「通らずの森」へと一人出掛けた。すると青いフクロウが現れて、彼に「お前の名前を教えておくれ」と尋ねてきた――。

●編集部員・P
僕が担当です。もともと一枚絵を主に描いていた人で、ペン入れまでして完成させた漫画はこの作品で2本目です。おもしろいことを考えている方だなと思い、声を掛けました。今回の応募作は、打ち合わせはほぼしていない状態です。
●編集部員・C
好みですね。ファンタジーや童話で、名前を与える話というのはよくありますが、短いページ数(12ページ)で作者の主張もきちんと描けていますよね。絵が全体的に入り過ぎていて、漫画的ではないけれど、高評価です。
●編集部員・P
ペンがとても速い方で、この作品は作画に2週間かかっていないです。
●編集部員・F
絵に魅了されました。単行本等になったら、買って手元に置いて鑑賞したいなと。
●モーニング編集長・島田
う〜ん、アニメーターの人が描いた漫画って感じがするな。普通の漫画好きな人が食指を動かす絵ではないかな。
●編集部員・J
線が多すぎて、逆にメリハリがなくなっちゃった印象ですね。絵を観るのが大好きな人には受け入れられそうですが、普通の人ならば、ちょっと汚く見えちゃうかもしれませんね。
●モーニング編集長・島田
モーニングは、いわゆるスタンダードな漫画も異質なものも両方載せられる雑誌ではあるから、それ自体は悪いことだとは思わないけれど、ストーリーがなあ……。「名前を失う」というテーマは、よくある話だと思ったよ。
●編集部員・D
作品の印象として、なんとなくセンスがありそうで、理解できない自分がいけないのかなとさえ思っちゃうようなオシャレな感じだよね。だから色々知りたくて読むんだけれど、やっぱりわからなくて妙な読後感になるよね。オチがきちんとわかるようにできていれば印象も違うと思ったよ。
●編集部員・E
もう少しセリフを打ち合わせて、めりはりつけることを今後取り組んでみてもいいのかもしれませんね。
 

『稲穂』立花ソウダ(東京都・32歳)

【ストーリー】赤ん坊を流産してしまった女が、稲穂の絵が飾られた部屋で、人形を縫っていた。自身の髪の毛を縫み込みながら、女は子供をあやす様な口調で、人形に語りかける。すると、稲穂の絵が部屋を浸食し始め、そこから「赤ん坊のような化け物」が姿を現して――。

●編集部員・P
僕が担当です。前々回のMANGA OPENで1次落ちした方なんですが、その作品を読み、描きたいことや何かおもしろそうなことを考えていそうだと興味を持ち声を掛けました。その時には既に今回の応募作に取り組まれていました。
●編集部員・S
構図がとても達者ですよね。
●編集部員・U
漫画ではなくイラストという印象かな。
●編集部員・E
いやあ、ただ、話がわからなかったんですよね。
●編集部員・L
何かに取り組んでいる姿勢自体は好感が持てるんだけど、それを表現するための基礎力が不足しているのかもね。
●編集部員・I
一生懸命理解しようと読み進めるんだけど、逆に混乱してきて……。きっと何か伝えたいことがある、情念みたなものを持っている方だとは感じたので、うまくそれを表現できるようなセリフや演出を、どんどん担当と打ち合わせていけるといいのかもなとは思いました。
 

『冬蝉』村山真(京都府・30歳)

【ストーリー】時は江戸。とある監獄に、かつて三度も脱獄をした男・佐川六郎が捕まっていた。人の生は短く儚い……命の限り生き抜くため、佐川は四度目の脱獄をはかる。

●編集部員・V
話自体はそこまで充実していなかったけれど、ちゃんと人間を描こうとしていて、その点は好印象でした。
●編集部員・I
絵に迫力はあるけれど、その分、ストーリーの粗が目立ってしまったかな。
●編集部員・N
何度か新人賞に応募してきている方ですよね。割と時代劇でのチャレンジが多かった記憶があります。
●編集部員・B
絵が見やすくなって、読みやすい構成にする技術もあがってきているとは思いました。ただ、お話にオチがないのがなあ……。
●編集部員・T
時代劇じゃないとやはりダメなんですかね。キャラクターは嫌いじゃないし、かっこよさも感じました。ぜひ現代劇にもチャレンジして欲しいですね。
 

作品の詳細と選考結果はこちら!『エゴイスと林檎の村と。』手石老(東京都・28歳) ★2次選考通過作品

●編集部員・S
私が担当です。以前持ち込みを受け、今はアシスタントをされています。ほぼ今の形のネームを持ってきてくださって、打ち合わせをして後半を少し変えていただいた程度です。全体的なノリは決して今風ではないんですが、丁寧な原稿で、一生懸命物語を作ろうとしている姿勢に好印象を抱いています。
●編集部員・F
「バタードラム盗賊団」などわくわくするネーミングですよね。
●編集部員・L
新人の方の作品には、物語に破綻や欠落がみられる中、ちゃんとできているなという印象で○にしました。ただ、なぜ◎ではないかというと、前回のMANGA OPENの選考会の時に、森高夕次さんが「才能には活かされるフィールドがある」とおっしゃっていましたが、モーニングではないのかなと思いました。
●編集部員・H
この方向では、モーニングに掲載されるのは、結構難しいかも。例えば、思いきって不良漫画に挑戦してみるとかなら可能性はあるかもしれません。
●編集部員・I
絵は丁寧だけど、全体的にかたさが目立ちますね。あと若干物語に幼さを感じました。
●編集部員・C
構成も練られていて読後感もいいけれど、物語をひっぱるための要素が足りない。主人公のキャラクターが弱いんだと思う。
●編集部員・B
絵柄と読み辛いアクションシーンが課題かもですね。普通、バトルシーンなどは、戦う前や危機が迫る直前に一番ワクワクするはずなのに、この方はそれらが終わったあとにインパクトを持ってきていて、おいしいところを描いていないという印象を受けてしまったんですよね。間合いの取り方なども含めて、ワクワク感をこのお話からはあまり受けませんでした。ただ、高いレベルではまとまっています。ですので、評価としては○にしました。
●編集部員・S
ありがとうございます。アシスタントをしながら、とてもレベルの高い作画技術を身につけてこられたので、これからスピード感や構成力、何よりエンターテインメントという部分をもっともっと学んでいただき、デビューを目指していきたいなと思います。
 

作品の詳細と選考結果はこちら!『3.1415…』美輪多緒(愛知県・24歳) ★2次選考通過作品

●編集部員・E
この作品はかなり評価が高いですね。担当希望の方はぜひぜひ積極的に発言をお願いします。
●編集部員・N
人間の宿命をつぶさに描いてて、漫画を超えたという感覚さえ抱きました。本格派ですよね。ただ、結局のところ、人は死ぬという因果応報話になっているので、文学臭を断ち切って、娯楽性やエンターテインメントの方向に、一緒にチャレンジしていきたいですね。
●編集部員・H
今回の応募作の中で、一番ストレスなく読めて、漫画でしかできない表現方法の連続に驚きました。才能あるなと。
●編集部員・L
この作品で褒めたい点は多々ありますが、大きく3つ。まずはシナリオのうまさ。「受け継がれる命」という壮大なテーマの高みに、無理なく連れて行かれる。次にコマ割りの間のよさ。後半の見開き2ページは特にすごい。多くの新人作家が、手順を追ってコマ数が無駄に増えてしまうような表現を、この方はたった2ページで完結させている。そして、たった2ページで成し遂げている要素の多さに圧倒されました。最後にセリフ回しのうまさ。この大きなテーマに普通の方が取り組んだ場合、難しい言葉が羅列された顔ばかりをコマに落とし込んだセリフ劇になるか、ファンタジー的ビジュアルによったお話になってしまう。けどこの作品には難しい言葉は一つも使われておらず、かつ、主題を読者に強烈に伝えることに成功している。この3点は、じつは、いくら編集が説明しても、会得することが難しいこと。それらが始めから備わっているというアドバンテージは、とてつもなく大きいです。もう、○でもなく◎でもなく、ハナマルです!
●モーニング編集長・島田
う〜ん、絵はうまいなとは思ったよ。けど「お命頂戴」というテーマは、ちょっと飽和状態にあるんじゃないかな。
●編集部員・I
テーマは文学的で、最後のオチ自体はどうかなと思ったんですが、それを差し引いても、とても魅力的な作品でした。それは、とても高いレベルでの人物造形ができているからだなと。スピリチュアルな方向性でここまで描けるならば、多くの人が興味持つ題材に取り組んでもらった時に、ブレイクすると強く感じました。
 

『仕事は何をすることぞ?』本橋みか(東京都・21歳)

【ストーリー】とあるオフィスビルの最上階。皆が大忙しの中でオレ一人、変わった色のスーツを着せられて、今日も一日何の役にも立たない、ただいるだけのダメ社員。だけどいつかオレも、笑顔の素敵なあの子の役に立ちたいんだ……。

●編集部員・T
私が担当です。62回のちば賞で『お母さんお父さん地球の皆さんごめんなさい』という作品で1次選考を通過した方です。前回の投稿作とは全く異なる、前向きな話を描いてみよう、という取り組みのもと、今回の応募作ができました。絵は、前作より格段に良くなったと思うのですが、お話作りという点では、まだまだ課題はあるかなと思います。未熟な点はあるかと思いますが、前作との比較を含め、ぜひ皆さんのご意見を伺いたいです。
●編集部員・I
意外性という点が弱く、ページをどんどんめくらせるレベルにまで到達できてはいなかったかなと。
●編集部員・M
前回のお話よりパワーダウンしてしまっているのがもったいないですよね。
●編集部員・P
そうかな。前作よりはよかったと思いますが。絵は、画面の密度をもう少し減らした方が良いのではないでしょうか。
●編集部員・E
このタイプの話を描くなら、絵柄はもっとポップさを意識しないとね。
●編集部員・L
擬人化という一ネタならば、こんなにページ数はいらなかったんじゃないかな。
●編集部員・S
ところどころ目をひく表情が入っているんですが、話の密度や方向性が、絵から期待されるようなものではなくって、若干ちぐはぐな感じがありました。とても熱意のある方だと伺いましたが、もしかするとその情熱をぶつけて自分の武器をいかすのに、モーニングというフィールドは相性が良くないのかもしれませんね。何か面白そうなことを考えている方ゆえに、ここで足踏みしてしまうのはもったいないと率直に感じました。
 

作品の詳細と選考結果はこちら!『ちょいとみやげを』栞あじさい(神奈川県・26歳) ★2次選考通過作品

●編集部員・Q
僕はこの作品、すごくいいなと思いました。何よりも「おみやげ」を題材にするその企画を思いついたのを評価したい。「おみやげ」という1つのしばりで4ページ、見事にいろんなお話を描きあげているんですよね。オチも優しいオチで、なかなかこういうオチをうまく描ける人はいないなあ、と。絵がちょっとまだ上手くはないなと思いますが。ゆくゆくは長編にもチャレンジしてみてほしいです。
●編集部員・P
読んでいて、「おみやげ愛」が伝わってくるのがいいな、と。キャバクラでのおみやげ、とか視点も様々でとても面白かったです。短いページ数でくすりと笑えるコマも随所に入れてあってサービス精神を感じます。絵も丁寧で、好感が持てました。
●編集部員・A
細々描いてて、ちょっと読みづらいけどねえ。ネームの量が問題なのかな。
●編集部員・R
僕はこの作品はすごく読みづらいとは思うんですけど、アイデアと話の方向性はとってもいいなと思います。「手みやげの漫画って、確かにあるかも」って感心しました。お話は正直、あまりよくわからないし、コマは読みづらいし線が薄いので、どれがキャラクターでどれが背景かパッとわかりづらいんですよね。そして、肝心の手みやげのコマがすごく小さいから、「もっとそこが見たいんだけどなあ」って欲求不満がたまる漫画だったんですが……(笑)。ただそこは、担当がついて教えてあげたら良くなると思います。
●編集部員・C
食べたことがないものを、どういうものなのかって想像させる言葉回しが上手い人ですよね。そこに才能を感じました。
●モーニング編集長・島田
この作品、すごくオリジナリティがあるよね。
●編集部員・V
「おみやげ」っていうしばりを、思いつくのもすごいことだけど、そのしばりでこの話数を描きあげるのも結構大変だと思うんですよ。その中で言うと、1話目の中で登場してきた女の子がまた別の話で出てきたりとか、よく考えられてるなあ、と。あと、おみやげの中でも、「みすず飴」や「いきなり団子」を選択するっていうそのセンスが素晴らしいなと思いました。
 

『疲れすぎて、眠れぬ夜の為に。』北戸田漫画製作所(埼玉県・32歳)

【ストーリー】自らの健康を一切顧みず、自分の生き方を頑なに変えようとしない父親。本当は心配しているのだが、皮肉と挑戦的言語でしかそれを伝えられない娘・土岐子。深夜に交わされるあてのないディスコミュニケーション。

●編集部員・G
セリフが多すぎるのと画面の構成がとにかくこの作品を読みづらくしています。吹き出しの位置やセリフを削ることで、だいぶ変わると思います。とにかくまず、人に読んでもらうことをちゃんともっと考えて描いてほしい。気迫は感じるのですが。
●編集部員・Q
言葉は鋭いし、センスは感じるんですけど、あまりにも冗長的すぎるんですよね。そこがもったいなかった。
●事務局長・宮本
前作(第31回MANGA OPENにて『MOTHER』で奨励賞受賞)よりもさらに読みにくくなってしまった印象があります。セリフに頼らず、プロット作りをやってちゃんとエンタメを意識するように心がけたほうがいい。セリフを読むのに手一杯で、せっかくの絵も今のままじゃ頭に入ってこないから。センスを感じるからこそ、そこがすごく惜しいなと感じました。次回作に期待しています。
 

作品の詳細と選考結果はこちら!『食い物の食い物』すいせい(東京都・20歳) ★2次選考通過作品

●編集部員・M
今回の応募作の中で個人的には一番面白かったです。46ページという長さも気にならず、どんどんページをめくらされちゃいました。
●編集部員・G
私もこの作品はすごく漫画らしい漫画だな、とかなり高評価してます。作者は、絵がもっと上手くなれば、さらに読み応えがある作品を描ける人になると思います。
●編集部員・P
そうですね、絵は上手いんですけど、男性キャラだけ妙に手抜き感があったので、男性ももうちょっと頑張って描いて欲しいですね。
●編集部員・U
僕は、もっとちゃんと「ホラー」として読ませてほしかったです。そこを意識して描いておけばより緊張感ある作品に仕上がったんじゃないかな。
●編集部員・B
絵も構成も上手いですよね。20歳の学生とは思えない安定感がある。ただ、ラストがもうひと押し欲しかったなあ。
●編集部員・F
私が担当です。ご指摘の箇所は締め切りに追われながら、作者も大分迷っていたところだとは思います。
●編集部員・B
なるほど。ラストをもうひとひねりしたら、もっと良くなったと思いますよ。この作者は前作(第62回ちば賞にて『解+巧』で1次選考通過)も面白かったので、次の作品にも期待しています。
 

『SURI』やすでらよう(東京都・30歳)

【ストーリー】ある老年の刑事が一人の天才的スリの逮捕にこだわるのには、深刻な理由があった。それは、娘と孫を守るため。スリであることを隠し、愛する娘と孫が暮らす家庭に入り込む男に制裁を加えるべく、刑事の追跡劇が始まった―――のだが、物語は作品の屋台骨を壊すほどの意外な展開をみせるのだった。

●編集部員・W
第30回MANGA OPENで『夏の秘密基地』という作品で佳作をとった方で僕が担当しています。描いてくるキャラクターの存在感が薄いものが多かったので、悪者を描いてみたらどうだろうということで本作が出来ました。
●編集部員・F
こちらの予想する展開をどんどん裏切ってくれるので、読んでいてとっても楽しかったです。スピード感や、はちゃめちゃ感もあって、僕はこの作品はとても好きでした。
●編集部員・N
お話はよくまとまってるな、と思いました。ただ、絵柄がね……。顔の筋肉をどうしてこんなふうに描いちゃったのかな。この絵柄、前作よりは特徴的ではあると思いますよ。でも、この絵柄でやるなら、それを逆手にとった話作りを心がけたほうがいいかな。
●編集部員・U
設定が面白かったですね。「見た目のわりにやわらかい唇しやがって」っていうセリフと、孫が刑事の財布を掏るところに笑っちゃいました。
●モーニング・ツー編集チーフ・矢作
僕は、この絵があまり好みではなかったなあ。あとオチもいまひとつパッとしなかったですね。ただ、全体的なお話としては面白いし、ネームのセンスも感じました。この人、漫画原作を書いてみてもいいかもしれませんね。
 

作品の詳細と選考結果はこちら!『この大空の翔び方』松谷寛大(静岡県・19歳) ★2次選考通過作品

●編集部員・T
昨年末に持ち込みを受けた方で、これが作者にとって2作目の作品です。最初は持ち込みの際の原稿を直してちば賞に出そうとしていたのですが、途中で主要なキャラクターのみを残し、話を一から考え直すことにしました。その過程で、こちらの直しの提案よりも、はるかによい修正案が何度も出てきましたし、なるべく言葉数の少ない、伝わりやすいネームを描こうと努力しているのを見て、私はかなり才能がある方だなと思いました。
●編集部員・U
お話作りはすごくよく出来ているし、セリフも良かったですね。これで19歳とは……。画力がまだ足りないので、たくさん描いて向上させてほしい。
●編集部員・M
私は、この登場人物たちに人間の「温度」が感じられなかったですね。お話はよく出来ているけど、整いすぎて面白みや意外性に欠けているとも思いました。
●編集部員・E
オチにスケール感が欲しかったですね。
●編集部員・J
漫画って、まずキャラを見て、そこから作品に入っていくものだと思うんです。実際雑誌に載った時に、どれくらいのインパクトがあるかはわからないけど、この応募作には、キャラに引きつけられて読みたくなる感じがありました。登場人物たちも、基本「いい人」たちで構成されていて、くだらない「悪人」が出てこない。そんなポジティブなところと、まっすぐに物語を描こうとしているところには、好感が持てます。年齢的に考えても、将来が楽しみな人ですね。

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