2次選考会の議事録をノーカット完全収録!

ちばてつや賞一般部門の2次選考は、部内選考会です。
モーニング編集部員全員で議論を行います。
その場で、自分の気に入った作品を最も熱を込めて説明した編集部員が、その新人作家の担当編集となります。
参加者全員の投票で上位となった作品が、最終選考へと進みます。

 

作品の詳細と選考結果はこちら!『うらぼんへ』坪山かえる(栃木県・29歳) ★2次選考通過作品

●編集部員・A
この作家さんは、この作品が2作目になります。1作目で持ち込みを受けまして、今回の『うらぼんへ』の原型のネームを持ってきていただきました。そのときに、主人公のかなこという女の子が大人になるという話だったんですが、もっと意外性を持たせたほうが面白くなるんじゃないかと思い、かなこを子供のまま、何か面白いことができないかということで、相談して作った漫画になります。少し読みづらい点に難があるかと思いますが、キャラクターがすごく可愛らしくていとおしい漫画なので、私はすごく好きです。みなさんのご意見を聞かせていただければと思います。
●編集部員・B
すごく丁寧に描いている感じもするし、背景もしっかり入っていると思います。ただ、背景とキャラクターが一体化しすぎていて、キャラクターが目立って見えないという気もして。あと、話が、オチを印象的に演出しようとしているのか、すごく難しい描き方をしてしまっていて。オチまで読んだときに、ああこういう話ならもっとストレートに描いても良かったんじゃないか、と感じました。「うらぼんへ」ってこういう意味の「うらぼん」だったのか、と、最後、読み終わってからいろいろ感じるところはあったんですけど、それが分かりづらい分、とてももったいなという印象でした。
●編集部員・C
作品の狙いとしては、ノスタルジー路線狙いなんですかね?
●編集部員・A
もともと、おばあちゃんのキャラクターを描きたいとおっしゃっていて。私は、おばあちゃんよりかなこのほうがかわいいので、かなこをメインにして話を作ったほうがいいかなと作者と相談しました。ノスタルジーというよりかは、田舎の風景とかそういった温かみを描けたらいいなという考えはありました。
●編集部員・D
結局、テーマとしては、死んでしまった人を想う意味みたいな……?
●編集部員・A
そうですね、死生観なんかも描きたいテーマの一つではありますね。
●モーニング編集長・島田
最近、新人賞で「実は死んでたモノ」って多いよね(笑)
●編集部員・E
描きこみはすばらしいし、人物が背景と同化しちゃってるっていうのも、それ含めて全部世界観なんだなあと思って気にせず読めたんですけど。最後、死者と生者をひっくり返すところとかも頑張って考えてるなあと思ったんですけど。ただ、すごく読みづらいのは確かなんですよね。最初、どういう話なのかまったくわからなくて。ただ、絵が面白いからずっとページをめくれて、最後まできて、ああなるほど、と。ちゃんと構成さえすればもっと面白い作品になるし、その可能性でいうと、この作者はすごくポテンシャルを持っているんじゃないかな。
●編集部員・F
僕は最初読んで意味がわかってなかったんですけど。意味がわからないのに、なぜか、原稿を読んでいて気持ちがいいなと感じて。
●モーニング編集長・島田
主人公が実は死んでたってのは、わかった?
●編集部員・F
はい、それはわかりましたよ(笑)
●モーニング編集長・島田
そうだよね。俺もそれくらいしかわからなかったんだよ。
●編集部員・F
でもね、1回目はそれもわからなくて。でも読み返してみると、既視感がある話なんだけど、ただこの作者は、すごく絵を描くのが好きなんだろうなっていうところと、気持ちのいい感情を描こうとしているというのは伝わってきたんで評価したいな、と。アップの絵が多いんで、もっと引いてる絵も増やして、情景をわかりやすく演出できたらなあ。場面転換もわかりやすくなるし。あと気になったのは、途中出てきた仮死状態の女の人とか、もう死んじゃってる人とかの描き分けができてないんですよね。
●編集部員・A
生きてる人と死んでる人が交わるというシーンが面白いなと思って、あのカットを入れたんですけど。
●編集部員・F
うーん、混乱しちゃったなあ。全部の絵を全力で描いてて、絵に「ぬけ」がないんだよね。全部密度濃すぎて、ちょっとそこで読みづらいと感じる読者もいるかもしれないから、そのバランスをもう少しうまくとれたらいいかなあ。将来性は感じました。
●モーニング編集長・島田
本当に絵が好きな感じがするのは、好感が持てたよ。
 

『なまけもの』沼田ぬしを(東京都・23歳)

【ストーリー】「仕事にいきたくない」──石より固いフリーターの決意だったが、世間はそれを許さなかった!

●編集部員・G
僕が担当しているんですが、作者の最近の生活を漫画にしてみようっていうことで、こういった作品になりました。
●編集部員・H
この作品に関して僕がいいなと思っているところは、非常にバカバカしいところというのが一点。あとは、漫画のお約束がいっぱいあって、それをちゃんと演出できているところ。ダメなところは、線がキレイじゃないので、もっとキレイに描いたほうがいいというところ。それと、この作品に関して、楽に描きすぎているというところ。絵は上手いじゃないですか。もう担当が付いていて、打ち合わせしているんだったら、こういう軽い作品じゃなくて、もうちょっと野心的な作品をぶつけていくべき。これだけ描けたら上等なんだから、早く次のステップにいってくださいっていう感じですね(笑)
●編集部員・I
前作に比べて、すごく絵が上手になったなあと思ったのと、あとは、くだらないテンションが私はすごく好きでした。夢オチっていうのも、このくだらないストーリーの中での夢オチなら許せるかなあ、と。賛否が分かれる作家さんだと思いますし、でも、私にはこのテンションが合ったので、評価しています。くすくす笑いながら読んじゃいました。
●編集部員・H
恋愛漫画とか描いても、この人ならオリジナリティがちゃんと出そうだから、面白そうですけどね。
●編集部員・S
「やれビスコ」のくだりは私も笑ってしまいました。言葉の選び方も好きです。ただ、絵がうまいけど沈んでいるようにも感じました。背景と同化しているというか。この方の世界観はバッチリ感じられたので、早く次の作品が読みたいです。
●モーニング編集長・島田
この人の描くキャラ、目力あるよな。ただ、今回みたいな作風じゃ、それをあんまり発揮できないんだよね。だから重くてシリアスな話を描くほうが向いていると思うけどね。
●編集部員・G
この作者は迫力ある表情が描けるんですよね。
 

作品の詳細と選考結果はこちら!『写ってやろうか』森一駅(大阪府・22歳) ★2次選考通過作品

●編集部員・C
話はあってないようなものなんですけど、ただ、目力が非常にいいな、と。その一点買いです。
●編集部員・J
絵はとっても上手なんだけど、それと同時に偽物感がにおう。僕ら40代とかの世代はあんまり見慣れない絵なんですけど、こういう絵をいっぱい見てきたって人はいる? テクニックだけで、ハリボテみたいな絵のような気もしていて。
●事務局長・宮本
僕も同じ事を感じていました。かなり癖がついていて簡単に描いてるなって感じがしてて。すごくうまいと思うんですよ。たぶん表情とか描くときにあんまり悩んでない感じがして、そこが気になりました。
●編集部員・D
キャラクターの設定自体も絵自体も、こういう漫画が好きだから真似して描いてみましたって感じがすごくするんですよね。
●編集部員・K
若さは武器だというところで、この作品の評価が高くなってるというのはありますよね。ただ、基本的にはこの作者、うまい、というか、慣れてると思います。
●編集部員・L
この女の子のキャラクターがはっきりしていて、僕は好きだったんですけど。画面の構成も良かったですし。
●編集部員・D
ライトノベルの原作つけて、この絵で漫画にすれば、買う層はいると思いますよ。ただモーニングで、この癖のない絵がいいのか悪いのか……。
●編集部員・M
僕は官能を感じたんですよね。肩車したり、寝転んでるだけのシーンで、ちょっとエロいなと思わせる何かがあって。高校生のとき、こういうことあったら、ドキドキしただろうなあと思いながら読んでたんですけど(笑)。背景とか見てたら、そういうライトノベル的な類型的な絵ではないような気もするし。
●事務局長・宮本
僕は、背景は手抜きだと思ったんですけどね。だけど、こういうのはまだ若いから直せるんじゃないかなあ。
 

『魚ものがたり』金明彦(東京都・36歳)

【ストーリー】のどかな田舎の村を駆け回る少年。ある日、少年は簡素な小屋の中をのぞいて しまう。そこでは今まさに、「売春」が行われていた。幾枚かのお札を手に、涙を流す少女の姿。少年の心が揺れる……。

●編集部員・A
私が担当です。この作家さんは、すごく絵がうまいし、お話も叙情的で。ただ、クセが強い作風なので、万人に面白いと思ってもらえるような内容じゃないかもしれませんね。コアなファンは付くはずだと感じてます。
●編集部員・C
この話のラストがいまいち良くわからなかったんだけど、これはどういうこと?
●編集部員・A
この女の子は、実は死んでたっていう……。
●モーニング編集長・島田
やっぱり「実は死んでたモノ」なんだね(笑)
●編集部員・A
最初は、自殺したっていう話だったんですけど、それではちょっと救いがなさすぎるから、解釈の可能性を残そうということで、魚のエピソードが入れてあります。
●編集部員・P
僕は叙情的な話が好きなんで、評価してます。魚のエピソードも良かったんですけど、現実で進行しているエピソードと、もう少しうまくリンクさせてほしかったなあ。才能は感じます。
●編集部員・D
この作者みたいな作風の人が描きそうなモチーフが、あまりにもそれだけでできていて。子供のときに体を売ってる女の子を見ちゃった、とか。サンプリングとレトリックだけでできている感じがしちゃうんだよね。作者本人はそのつもりはないかもしれないけど。この人だけのオリジナル感が欲しいね。
●編集部員・L
僕はこの表現力に感動しました。ただ叙情はすばらしいんだけど、特に内容がないんですよね。ぼんやりと感情を描いていて、物語の展開がもっと欲しかったです。幻想的な物語のその先が見たかった。
 

『着信が一件ございます』青柳(新潟県・20歳)

【ストーリー】中村弘貴27歳(草食系)、年上の彼女と絶賛遠距離恋愛中。感情を素直に表現できない弘貴はメールでしかやり取りをしない。ある日、不満を募らせ別れを切り出す彼女。それに対して弘貴は初めて感情を爆発させる……。

●編集部員・T
余分なネームがなくて、ライトな感じですらすら読めるのがこの方の作品の特徴かなと思います。ささいなエピソードなんですけど、短いページ数でうまくまとまっているかなと。
●編集部員・S
男の人が、女っぽいんですよね。こんな男、いるのかなあって思いながら読んでたんですけど。見た目にしても仕草や性格にしても。
●編集部員・D
ただの遠距離恋愛の話で、それ以上でもそれ以下でもないんだよねえ。
●編集部員・Y
そもそも東京と千葉なんか、遠距離でもなんでもないじゃん(笑)。さっき男が女みたいだ、って意見が出たけど、俺もそう感じたんだよね。なんか同性として気持ち悪いというか、好きになれないキャラクターなんだよ。
●事務局長・宮本
表情の描き分けがすっごくうまいなと思ったんですよね。しかも、微妙なニュアンスの表情の描き分けがすっごく上手。この作品自体がすごくいいとまでは言わないけれども、描くものがハマるとうまくいきそうだなって。この作家の潜在能力を感じたんですね。
●編集部員・R
わからなかったのが、何で男の子は電話に出ないの? すねてるってこと?
●編集部員・T
そうですね。自分の感情を素直に表現できない男性というキャラクターなんです。
●事務局長・宮本
すねてるし、電話に出ると泣いちゃうから、っていう、そういう理由だと思って僕は読みましたよ。
●編集部員・P
会いに行けばいいのになあ。
●モーニング編集長・島田
女の人は、こういう男の人を見てかわいいなって思うわけ?
●編集部員・I
かわいいなとは思わなかったですね。なよなよしすぎてて……。年下の男の子が年上の女の人と付き合う際に、プライドが邪魔して素直になれないっていう話なんだろうなあっていうのは、わかったんですけど。最後のモノローグとかもよくわからないし、電話に出ない理由っていうのもぼんやりしていてよくわからないし。
●編集部員・T
僕は、この男の子、僕に近いかなって思います。だから、すごく気持ちがわかったんですけどねえ。
●編集部員・D
この作者は、我慢して耐えるタイプの人を描くのが好きなんだね。
 

『きゃたつおねいさん』潮見灯子(神奈川県・26歳)

【ストーリー】町で一番背が高く「きゃたつ」と呼ばれる女のコ。背が高すぎて恋愛の対象と思われることがなく、町では背の高さを「便利屋」として使われていて、内心傷ついていた。だがそんなある日……!

●編集部員・K
12ページという、かなり短いページ数なんで、なかなかこれだけで評価するのは難しいんですが。ただ、女の子がそこそこ可愛くて、この先、この作者が描き続ければもっと可愛い女の子が描けるようになるんじゃないかな、と。可愛い表情が描けていた、その一点買いです。今回のちば賞では一番、この作者が女の子を可愛く描けていた。正直、ストーリーに関しては、ひねりもないので、あまり評価してないんですが。
●編集部員・N
この方、どこまで漫画で描いていいのかわかってない感じがするんですよね。物語ってこういうことを描いていいんだ、こういう嘘をついていいんだってわかれば、もっと表現の幅も広がりそうですけど。あまり描いたことがないからこそ、こうなったんだろうなって感じはします。
●編集部員・A
若干、デッサンがおかしい気も……。
●編集部員・O
僕は背が高い女の人が好きなんで、それだけでもう、この作品を楽しく読んだんですけど(笑)。ただ、背が高いっていうそれだけを描いてるから、そうじゃなくて、背が高い故の悩みや喜びや不安なんかを描いてほしかったですね。12ページだけしかないわけだから、かなり大掴みになっちゃっていますよね。
●編集部員・K
エピソード的には、電球を変えたり風船が取れたり、ってそれだけしか描かれてないですもんね。その先の物語を作ってほしかったなあ。話はまだ何も始まってないですからね(笑)。絵の線はキレイなんですけどね。
●事務局長・宮本
うん、目を引きますよね。この作者は、たぶん、漫画のことを何もわかってないで描いちゃったって感じがするから、とにかく一度会って話をしてみたいですね。
 

作品の詳細と選考結果はこちら!『加速してFUTURE』ガタピシ豆太郎(千葉県・28歳) ★2次選考通過作品

●モーニング編集長・島田
この作品、いいねえ。俺は高評価してます。
●編集部員・K
これは、ここまでページ数が長くなければ、「文句なく大賞だ!」と思わせるくらいの名作だったと僕は思うんですけど。
●編集部員・Q
この作者、漫画の描き方まだ全然わかってないんでしょうね。漫画の絵はまだ描けてないけど、基本的にはすごく絵が上手い。人を蹴ったり殴ったりするアクションシーンとか、本当に上手い。
●編集部員・K
この手のタイプの絵では珍しく、描き分けがほどほどにできているんですよね。
●編集部員・Q
デフォルメをあまりしていない人物だから普通だと見分けつかなくなりますもんね。
●編集部員・D
表情もちゃんと描き分けができてますし、ちゃんと人間性が宿った顔を描けてる。
●編集部員・K
最後、校長先生が話すシーンが良かったです。何か『キッズ・リターン』を思い出しました(笑)
●編集部員・D
この主人公にしても、こんなに生き生きした人間味あるオリジナルなキャラクターが自分で作れるっていうのは、本当にすごい才能だと思う。この主人公の内面すべてを理解することはできないけど、理解したいなって思わせる何かがある。キャラクターを作り上げる力がとてつもなくあるんですよね。校長先生にしても、この人の描く校長先生でしかないっていう、壮絶なオリジナリティがあるよ。
●編集部員・K
たくさん人が出てくるお話なんですけど、焦点を二人に絞ってあるから、すごく読みやすいんですよね。
●編集部員・B
主人公が語り部だと、透明な存在になりがちなんですけど、彼にもちゃんとした性格づけがしてあって。僕はとっても読みやすいし、すばらしいなと。
●編集部員・D
ペンネームも、作品名も個性的だよね(笑)
 

『じゅんけん!!』清澄炯一きよすみけいいち(東京都・34歳)

【ストーリー】営業でパッとしない中村橋の前に現れたかわいこちゃんOL・三階堂。超有名なIT企業創業者と親しげに話す彼女を見て、仕事で利用しようと近づく中村橋。親しくなるべく、彼は、三階堂と共に「巡検(=化石採集)」に出かけることに……。

●編集部員・L
化石っていう新しいものをテーマに持ってきていて、全く自分の未知の分野のお話だったので、面白く読めたんですよね。女の子もそこそこ可愛く描けていて。サービス精神があるところを評価しています。
●編集部員・R
僕も、「じゅんけん」っていう言葉を知らなかったから、そうなのかーと最後まで楽しく読めたんですよね。あと、小学生のときに、そういえば、自分も化石好きだったなあというノスタルジックな想いも出てきて……(笑)。もしかしたら、この方が本当に化石にものすごく詳しい人だったら、これをもっとショートの作品にして、化石の面白いウンチク漫画にしたらいいかもしれないですよね。
●編集部員・S
絵がなあ……ちょっと古い感じもするんですよね。作者が本当に化石に詳しいなら、その面白さをもっとうまく伝えてほしかったなあ。
●編集部員・G
話が、本当に進んでないんですよね。はじめの営業で何とかっていうのも、結局解決していないし。キャラクターの表情も誇張してあるんですけど、どこかで見たことのある表現が並べられているだけかなあという感じがしました。
●編集部員・D
目が死んでる感じがするんだよね。王道の瞳の描き方をしているんだけど……何でかなあ。全部パターンで描いちゃってるからなのかなあ。女の人も、最初はエロく描いてあったんだけど、途中からすごくステレオタイプな感じになってて。オリジナリティをもっと持って描くようにしてほしいですね。
 

作品の詳細と選考結果はこちら!『WORKING DEAD』青木U平(東京都・35歳) ★2次選考通過作品

●編集部員・T
僕が担当です。キャラクターがすごく魅力的だと思っています。ヒロインの女の子が、自分の魅力に気づいていない、無邪気な可愛さだったり、その他の登場人物も濃くて。
●編集部員・B
女の子、可愛いですよね。
●モーニング編集長・島田
これ、俺、すごい面白かったんだよね。
●編集部員・U
ゾンビの話をするのに、何で古典じゃなくて、ゾンビをパロった『ショーン・オブ・ザ・デッド』を参考に持ってくるのか、っていうのがすんごく気になりましたね(笑)
●モーニング編集長・島田
この人が自分以外も、ゾンビにすごく造詣が深いと思ってるからだろうね(笑)
●編集部員・T
作者はゾンビ映画が大好きなんですよ。
●モーニング編集長・島田
この適当でいい加減な感じがいいなと思って。いい加減なんだけどクオリティが高いでしょ。そのさじ加減が好みだったね。ぺらぺらぺらって16ページくらいの作品を読んで、ああ面白かったな、何も残らなかったけど、っていうのだとしても、これくらいのクオリティなら十分なんじゃないの?
●編集部員・C
1回読んだときは面白かったけど、2回目にはもう飽きちゃったんですよね。
●編集部員・N
僕が評価したかったのは、突っ込みを入れる間もなく、次々に何かが起こるっていうのは、読み進めさせる力があるなあと。だから、長いものじゃなくて、あくまで短いページ数で何か新しいことをやったらいいんじゃないかなとは思います。
●モーニング編集長・島田
こういう全く頭を使わずに読めるものっていうのは、雑誌の中にあっていいものだと思うよ。女の子がもっと可愛いと、なお良かったね。今でも結構可愛く描けているけどね。
●編集部員・F
僕は女の子は可愛いとは思わなかったですけど(笑)。でも、ちゃんとエンターテインメントをやろうとしている人で、そこを評価したい。企画としては、どれくらいこの作品を続けて描けるのか、っていうのを見たいですね。まだおいしいところを全然やれてない感じがするんですよ。メシってどういうもの食べてるのかな、とか、まだまだ掘れるところはあるんじゃないかなと。
●編集部員・P
ゾンビものをやるんだったら、自分なりのゾンビのルールを作るのが鉄則っていうのがあると思うんですけど、この作者、ちゃんと作ってるんですよね。そういうところはすごく評価できると思います。自分なりのゾンビものを描こうとしている意気込みを感じました。
 

颯手さっての鉄クズ』雨瀬シオリ(東京都・21歳)

【ストーリー】第二次世界大戦下の日本、何代も続く刀工の家に生まれた颯手は特高に捕まっていた。うすれゆく意識の中で、颯手は身の上話を始める。それは戦争という厳しい運命に翻弄された親子の話だった……。

●編集部員・T
僕が担当しています。前回のちば賞で『ディヴィッドの肖像』で入賞された方です。極限状態に陥った人間の心理状況を描きたいということで、今回、こういう話になりました。前回と比べて、今回は線が太くなって、男らしい絵になったのと、緊迫感がある感じが全面に出せたんじゃないかと思います。
●編集部員・V
正直、この作品自体はそんなに評価していないんですけど、作者の描こうとしているところは評価したいなと。将来性は感じます。
●編集部員・D
前回の作品は、上っ面だけのいい話だったんだけど、そこから踏み込んで描こうとしているところは、前回比では評価できますね。作品としては、まだ未完成だし、え、そこで終わっちゃうの、って感じだったんだけど。極限状況から始まって、子供時代がささっと済んで、また地獄のような……って、描かれてるのが、ずっと極限状況なんだよね。ある程度、幸せだった人が崩れていくのならば、もう少し感情移入できたかなって感じはするから、ちょっともったいないかな。でも進歩してるので評価したいです。
●編集部員・W
僕も一緒に担当しているんですが、補足しますと、代原(連載作品が何らかの都合で掲載できない場合に代わりに掲載される代替原稿)を狙っていたので、ページ数を20ページ以内におさめたんですね。多少、説明不足であることは確かにあるんですが、まずはそのページ数におさめることを第一に考えてこうなりました。
●編集部員・K
絵的にはうまくなっているし、この作者は力はあるんだなあと感じるんですけど。前作の方が、筋もちゃんとしてたし、物語としてはしっかりできてたかなと僕は思います。今回のは、正直、物語としてできてなさすぎる。
●編集部員・G
キャラクターの線とか表情とかは、すごく力があるなあと思いましたけどね。
●編集部員・D
描きたい感情とかは、前作よりちゃんとあって、でも、それを20ページの中でうまく表現しきれていないということだよね。でも作家としては進歩しているなと感じました。
●事務局長・宮本
行き過ぎてるかもしれないけど、感情を込めようって思って作者が描いてるのは伝わるから、前回よりは評価したいんですけどね。
●モーニング編集長・島田
うーん、これ、暗くなっちゃうんだよねえ。
●編集部員・W
最後、ちょっと明るさは入れたんですけどね。
●編集部員・H
20ページで描こうというには、内容が重すぎるし、単純に描こうとしてる事柄が多すぎるんだと思うよ。
●事務局長・宮本
短くおさめるために、告白という形にしたんでしょ? でも、それがちょっと安易かなという感じもしたんだよね。
●編集部員・D
結果が最初に戻ってくるのが見えちゃってるからね。
 

作品の詳細と選考結果はこちら!『七夕路線図』和田フミエ(茨城県・36歳) ★2次選考通過作品

●編集部員・J
何から何までちゃんとしているのに、なぜかあまり面白いと思えなかった。この作者に関しては、何か明確な企画が必要なのかな、と。外国人と結婚する、とか、ちょっとエロを加えて女のダメさを描く、とか。
●編集部員・C
この方は、これまで日常的な4コマ漫画を描いてたんですよね。だから、日常路線の中では、この作者としては相当頑張ったなあと思うんですけどね。
●編集部員・D
これ最後、こんなに相手のことが好きだったのに、行かないでしょ? こういうラストにするって、描くほうも結構精神力が必要なんじゃないかなって。ここまで想いを綴っておいて、やっぱり行かない、って決めるっていうのはその裏に、男性に対する不信感……「単にやりたいだけだろう」とかあって、すごく大人だなって感じたんですよね。冷静に物事を見れてるっていうか。そこは評価できるなあと。
●編集部員・G
男側から見たら、久しぶりに会った元カノとできるかなあと思ってたけど、でもできなかったってだけの話ですよね(笑)。女の人から見たら、そこまでつらつらとドラマを描いてるけど、男から見たら、ただそれだけのことじゃない?っていう……(笑)
●編集部員・I
そんな情緒のない……。
●編集部員・X
男性側から見たらそうかもしれないけど、女性側から見ると共感しうる部分は多くあるかな。元さやに戻ろうと思えば戻れたのにそうしなかった、っていう選択が、嫌な感じがまったくしなかったなって。サラっとなんだけど、とってもしみ込む感じがありました。もっと熱くなってもいいようなところを、冷静に淡々とやってる、それがなかなかいいなあって。
●編集部員・H
今後、この作者にはこちらから提案した企画がハマればいいですよね。たぶん、かなり打ち合わせがきく作家さんだとは思いますよ。
 

作品の詳細と選考結果はこちら!『バイト』大谷秋人(東京都・25歳) ★2次選考通過作品

●編集部員・G
シュールなネタをいろいろ詰めてくる面白さっていうのがありますね。
●編集部員・R
この話ってよくわからないんだけど、何かを風刺してるの?
●編集部員・Q
そう思うけど、結局何もないんですよね。
●編集部員・U
そのつもりで読んで、結局雰囲気だけなのかーって。オチも期待が大きかっただけに、残念な感じでしたね。
●編集部員・Q
芸人のネタ……ちょっとしたショートコントみたいなもんですよね。
●編集部員・G
こんな仕事あるんですけど〜っていうネタですよね(笑)
●編集部員・D
漫画じゃなくてもいいんじゃないかなとは思いましたけどねえ。
●編集部員・Y
俺はこれ、かなり評価していて。単純に、すごく変な発想をする人だなあって思って、それで、他の作品を見てみたいっていう期待感があったんですよね。結局最後何だったのかよくわからないし、作品評価というよりかは、今後の期待値という評価をしてます。あとネームも、すごく切れるなあと思ったところもいくつかありました。絵もそんなにうまくならないほうがいいんじゃないかなあと。そこも含めて味なのかな、と。
●編集部員・O
僕も面白かったですよ。出だしがすごい良くて、扉がひどくて(笑)。その後、穴に手を突っ込んでいくリズムがすばらしくて。結局、今までも、こういう作風の新人の方、いらっしゃったと思うんですよ。ただ、なかなかモノにならないのが現実で。この方は、同時代的と言えば同時代的だし、独特な作風も、これだけじゃまだ、作者の才能がホンモノかニセモノかわからない。この時点では、僕もすごく興味を持ったし、読んでいて楽しかったです。
 

作品の詳細と選考結果はこちら!『くしくも同居人』ももえ秋子(大阪府・25歳) ★2次選考通過作品

●編集部員・B
僕が担当です。じつは、このオチにまんまと騙されて。短いページ数で本当によくまとめてますし、このページ数だと評価しづらいかもしれませんが、是非意見を聞かせてください。
●編集部員・K
今回、「最後、結局死んでたってモノ」が多かったですけど、これは一番それが最後までわからないように作ってありましたよね。「あ、死んでたんだ」って、キレイに騙されましたもん。
●編集部員・R
僕もこの8ページで見事に騙されたよ(笑)
●モーニング編集長・島田
そうだね。今回、この手のオチが多かったから「最後、結局死んでるんだろ?」ってすんごい警戒して読んじゃって、このオチも最後にいくまでにわかっちゃったんだけど。これを一番最初に読んでたら、確かに騙されてたと思う。
●編集部員・K
騙された人が、評価してるって感じですよね。
●編集部員・D
短いページ数で、ワンアイディアで良くこれだけ描けたなあと。まとまってるし、このクラスのものが量産できたら、やっていけるんじゃないかな。
●編集部員・E
キャラクターも僕はすごく好きな絵だったから、いいなあと。セリフとかもちゃんと考えて配置されてるし、慎重にネタバレしないように構成されていて、これをこのページ数でやれるのは、相当達者な人だなと思います。あと、死んでるのに、あんまり「泣かせ」の方向にいっていないのがすばらしい。軽い方向にふっているのが個人的には好きでした。「実は死んでました」ってオチって、「泣かせ」の方向に行かせたがるから、全然恨みがましくもない淡々とした幽霊っていうのが、僕はツボでした。
●モーニング編集長・島田
確かに8ページだからなあ。良くできてるよなあ。
●編集部員・G
男にだけご飯が出てなくて、何でこんなに不満そうにしているんだろうとか、2つ意味合いが取れるようにしてあって、普通なら片方の意味しか取らないんだけど、よくよく考えたら「それは幽霊だから」ってことかって気づく。それがすごくうまいんですよね。
●編集部員・D
伏線はあとで全部回収できるっていう。
●編集部員・E
主人公の女のキャラクターも、最初はすごくがさつな人にしか見えないんだけど、最後になってようやく「ああそういうことだったのね」っていう心地よさがある。
●編集部員・C
引っ越した先で、幽霊の彼氏ができました、っていうオチって、すごく多いんですけどねえ。僕には既視感があったんですよね。
●モーニング編集長・島田
でも確実に構成力はあるよね。
 

作品の詳細と選考結果はこちら!『猫神』青野寧々(愛媛県・17歳) ★2次選考通過作品

●編集部員・Z
今回一番感動しました。ページ数がそんなにないけれど、小さくまとまってもいない。ざっと読むと、キャラクターの顔の描き分けとか伏線の張り方が薄かったりという点はあるのですが、構図とか、絵柄とかいいですよね。猫の絵とか、写真撮って描いてるのかどうか分からないんですが、変なポーズなんですよ。けどそれがいい意味で妙に引っ掛かかる。それと、腕切るシーンで、その切り方では切れないとか思うんですが、それでもその感情が伝わってくる感じとか、17歳ですごいなと。
●編集部員・B
怖いと思ってたら良い話、かと見せかけてやっぱり怖い話なんですよね。なんかすごく感情揺さぶられました。そういうのをこのページ数にしっかりまとめてるのはすごいですよね。平均台歩いてるみたいな感じで、ドキドキしながら最後まで読めた。結構残酷な話なのに、読み終わった時に僕はすごく感動してしまいました。
●事務局長・宮本
僕もすごい評価しています。もしかしたら間違ってるかもしれないけど、この方、下絵描いてないんじゃないかなと思ったんですね。下絵なしで直に描いてるような気がして。消しゴムの跡がないんだよね。つまり直接描けちゃう人。過去に一人だけそういう人担当したことあるんですけど、もちろんだからプロになれるって訳ではないんですが、相当期待できる。天才だと思いました。
●編集部員・D
写真とか資料見て描くことがまったくなさそうですよね。
●事務局長・宮本
ビルとかもおそらく資料見て描いてないでしょ。記憶の中にあるビルを、下絵なし描いている。それがすごい。
●編集部員・N
振り返った時の猫の絵だったり、一見顔薄く見える主人公の目が強かったりと、ハッとさせるものがありますよね。今回の話は中途半端にまとまっている印象ではあるんですが、かなりのびしろがあるんじゃないかと。
●編集部員・G
すごい面白かったです。絵はちょっと薄い感じがしたんですが、見せ方を知っている人だなと。包丁のシーンなど、ここで読者にゾワっとさせたり違和感を与えようみたいな、作者の意図をしっかり感じました。
 

作品の詳細と選考結果はこちら!『コウナイシャ性』尾崎健太郎(京都府・27歳) ★2次選考通過作品

●編集部員・あ
今回の応募作には、女性が描いた女性主人公の話が多くて、そんな中こういうヤンチャなものみるとホッとしますね(笑)。やっぱ「モーニング」って“おじさん”の雑誌だと思ってるんで、こういう漫画があってもいいんじゃないかなという気がしました。実際、絵はかなりうまくなると思いますよ。作家として、すごく興味がある人です。
●編集部員・C
一次ではちょっと評価が低かったんですが、残った作品を見渡した時に、こういう「野郎、頑張れ!」っていう作品を描く人が希少生物に感じ、大事にしたいなって思いました。
●モーニング編集長・島田
別にネタとして問題ないでしょ。ただ、ちょっと読みづら過ぎるなと思ったけど。ちなみに女性から見るとどうなの? 面白い面白くない以前に、快・不快みたいな。
●編集部員・S
う〜ん、なんか下ネタとして浅いかなと。
●編集部員・K
めっちゃ厳しい(笑)
●編集部員・I
あ、けど私も、下ネタのレベルが大人が読んで笑えるものではないのかなって。
●モーニング編集長・島田
なるほど(笑)。男より笑うハードル高いからね、女性は。
●編集部員・D
けど新人賞って「実は死んでるモノ」と同じくらい「美術モノ」って応募があるじゃないですか。「美術モノ」で、こいつはうまいんだ、才能があるんだって言われても、あんまりピンとこないしよく分からないんですけど、この作品はちょっと例外だった。なんかこの男、うまいんだろうなーと納得できたし、優れた芸術家リビドーが多いとも感じました。
●編集部員・V
描き手が女性という時に、女性だけの視点に留まらないというか、性の境を越境してきた人が割とデビューしてきたのかなという実感があります。ちょっと今回の応募作には女性寄りの作品が若干多いと感じていたのですが、これだけは完全に男性サイドだったんですよね。あと、このヒロインの女の子、相当かわいいですよね。で、女の子が魅力的なのは基本的に商売になると思ってるんで、それだけで評価はぐんと上がりました。見た目じゃなくて、動きとか行動原理とかネームとかが非常にかわいらしいですよね。
 

『hungry girl』仲川はる(北海道・33歳)

【ストーリー】ケアホーム「ふらぼあ」にいる涼織子(りょおこ)さんは、食べても食べてもお腹がいっぱいと満足できない。大好きな生活支援員の野々香さんに支えられながらダイエットをするのだが……。

●編集部員・I
59回のちば賞で2次選考まで通った方ですね。
●編集部員・V
話はおいといて、主人公を励ます先生が時々良い表情をするんですよね。ほんとに良い女優さんだなというか。
●編集部員・K
ただ、あんまりお客さんの付かなさそうな絵のような気がします。
●モーニング編集長・島田
それなりに受け入れられる絵なんじゃない?
●編集部員・D
この作家さんは介護士をやってて、前回の作品からも、すごく善意に満ちた良い人だろうしそうありたいと本人も思っているということは伝わってくるんだけど、涼織子さんの描き方がちょっとひっかかったんだよね。イノセントにこういう人のかわいさとかを、無批判に描くのどうかなみたいな感じがして。例えば西原理恵子さんが描くならば、それはちゃんと相手のことを見ているっていう前提が伝わってくる。けどこの作品の印象として、俺はちょっと嫌悪感があったかなーっていう。
●編集部員・R
僕もそれは感じたかな。
●編集部員・Y
俺も同意見で、なんというか健常者からの上からの目線みたいなものを感じてしまった。
●編集部員・M
俺はこの作品読んで素直に感動しちゃったんですよね。結構嫌な介護士とかも出て、怒鳴っちゃったりケンカしたりするシーンも出てきて、ある意味この作家さんの批判のスタンスでもあるのかなーっていう。実は介護とかって、きっちりその人の人間性尊重してっていうのが、まかりとおる生易しい仕事じゃないだろうし。そういう意味では、見た通りのことを描いただけの話なんじゃないかなと。介護士の人ストレスとかも描いていて一種のルポルタージュのような面白さがあった感じがしました。
●事務局長・宮本
例えば、描き文字の涼織子さんのネームなんかは、めちゃめちゃリアルだなと思ったりもして、現場知ってる人の迫力だなと。
●モーニング編集長・島田
印象の良し悪しは別として、ただの日記に留まってしまっているんじゃないかな。人からどう見えるかという視点がないから、思ったこと描いただけだろうなっていう。まぁ絵はいいかなと思ったけどね。
 

『ネズミとホームベース』黄河蛙<おうがかわず>(大阪府・28歳)

【ストーリー】冴えない中学校生活。少年は「ネズミ」と呼ばれ、少女は「ホームベース」と呼ばれていた。「あだ名は体をあらわす」、まさにその通りの容貌。ホームベースに告白されたネズミは、初デートへ。果たして、ネズミはホームベースを愛せるのか!?

●編集部員・A
私が担当です。この方は59回・60回のちば賞にも応募して、どちらも一次は通過しています。今回は、ただひたすら不細工な女の子に萌えるっていう話を描きたいというところから始まったらしいです。画力とか、構成力はすごい向上してると思うんです。ただ、個人的には、ヒロインに対して、ちょっと嫌悪感を抱いてしまって……だからこそ色々なご意見伺いたいなと思っています。
●編集部員・P
ヒロインの魅力を描かないとちょっと難しいですよね。
●モーニング編集長・島田
漫画とかドラマとかっていうのは、かわいくないっていう設定でかわいい子ばっかり出すじゃない。でさ、全然不細工じゃねーじゃねえかとか思うけど、やっぱり絵としてかわいらしく描かないとダメなのかもな。
●編集部員・D
女性向け漫画だって、「私は地味で目立たない子」って言っても、かわいいですもんね、主人公は。
●編集部員・K
『君に届け』とかね。
●編集部員・B
ヒロインに、内面にもっとかわいいとこがあったら自然と、絵も、顔も、最後のほうにはかわいく見えてくるようなきがしたんだけど……。
●編集部員・H
でも、この漫画で唯一良いところは、すごい短いコピーでこの作品を説明できるっていう描き方をしてる点かな。そういう思考で、ネームの核を作って来るところはすごくいいなぁとは思いました。ただ、男の子が女の子を「意外とこの子かわいいじゃないか」とかっていう風になっていったりとか、そういう縦筋がないし、そこにアイディアもないんだよね。話を前に進ませるためのアイディアなしに、こういう組み合わせがこういう風なことしたらこうなるだろうなーっていう、漠然とした身体感覚だけで描いてるから、それは厳しいかも。
 

『線と線と線』濱屋千裕(千葉県・22歳)

【ストーリー】高校の美術科に在籍し、将来画家を目指す真理子。合評で鼻柱を折られ、すっかり自信を失うが、対象に没入して一所懸命描く大切さを先生から諭される。級友の作品を素直に認められるようになった時、彼女の視界が明るく拓けた。

●編集部員・O
私が担当です。彼女は美大の漫画学科を今年卒業した人なんですが、『線と線と線』は新人賞によくある芸術家の卵の物語で、主人公が挫折しつつも高みを目指す。なんとも青臭い話だけど、もっと画がうまくなりたいとがんばる姿に好感を持ちました。『マーカレスワールド』は、女子高生が同級生たちとのコミュニティからスピンアウトする物語。いわば自立を描いています。二作品とも共感、共鳴できるものを感じたんですよ。画力もしっかりしているし、けっこうガッツがありそうなんで、長い目で付き合っていきたいと思ってます。
●編集部員・G
1本目の『線と線と線』が、すごい良かったです。こういう「美術モノ」って「すごいうまい絵を描いた」って言っても説得力なくて、けどこの作品は迫力がありました。没入するシーンで、手の平に自分がいるところなども演出が上手だなと。あと、妄想の中のやり取りも結構コミカルで、ギャグとかも結構できるんじゃないかなと。
●編集部員・O
画を描くパフォーマンスをそれなりに見せてはいるけれど、漫画と呼ぶにはまだまだタッチが硬いかも。ただね、物事を斜めに意地悪く見たり、ある意味漫画家に必要な素質を持っている人かなと思うんですよ。ギャグのセンスもありそうなので、端正にまとまらないよう引っ張っていきたいです。
●編集部員・Y
いわゆる「美術モノ」でさ、例えば、自分がスランプになってて全然だめになっちゃった、あの人の絵はいいのにっていう話があったとしてさ、その絵のレベルの差が全然分かんないんですよね。けど、これは、とてもよく分かった。描き分けというか、そういうことが一番ちゃんと丁寧にできててすごく良かった。あともう1本の方は、確かに作品としてすぐに評価っていう訳じゃないけど、すさまじく今っぽさやリアルっぽさを感じますね。今時の女子高生って全然知らないけど、すごくその匂いがプンプンしてて、今の時間の軸をちゃんと掴んでる感じがしました。
●編集部員・D
これぐらい画力があるんだったら、もう少し、身近な話から足をのばしてもいいのかなとも思いました。
●編集部員・Y
いや、俺は、だからこそいいのかなぁと思った。ちゃんと自分の切実なところを描いてる感じがして。
●編集部員・O
まずは自分の中でくすぶっているものをネチネチ描くのが大事で、知らないことを背伸びして描いてもしようがないんじゃないかって、いつも思ってるんですが、そうは言っても、延々と心象風景を描き続けててもラチがあかない。パーソナルなものを何本か描きつつ、自分のテーマを見つけてほしいです。
●編集部員・D
なんか描けそうな地力は感じますよね。
 

『SPICE』庚由譜かのえゆふ(東京都・36歳)

【ストーリー】カレー作りにだけは、なぜか夢中になれる主人公・キョーコは、お店を出す夢へ向けて走り出す。だが以前に出掛けたインド旅行で、偶然手に入れていた魔法のスパイスを使い切ってしまう。自分のカレーに絶対欠かせないそのスパイスを探すため、キョーコは再びインドへと旅立つ。

●編集部員・J
読み終えての率直な感想は「この商売っけのなさは、なんなんだ!」でしたね。人気とろうとか、ウケようとか、そういう仕掛けがまったくされていないので。でもよく読んでみれば、評価できる点が実はたくさんある。まず「わからない」という印象を抱く箇所がまったくないこと。新人の作品に共通する、もっとも手ごわい壁が、あっさりクリアされています。次にお話の始まりで提示された主人公の状況が、お話の終わりでは明確に変化していること。主人公のスタート点から、いくつかのハードルをクリアして後に、ゴールにたどりつくまでの過程がきちんと描かれていて、読み切り作品としての基本ができているのです。このようなアドバンテージがある方なので、「商売っけ」さえ作品に導入できれば、将来性はかなりあるんじゃないでしょうか。たとえば主人公の造形を、誰が見ても魅力的なものにする。主人公の友達の女の子は美人に描けているのだから、この子を主人公にする。また読者を作品世界へと没入させるためのコマ割りの技術を、それが出来ている作品から抽出して真似る。読者を主人公の気分にさせる、すなわち作品世界を疑似体験させるには、どうすればいいのかを旺盛に研究し、自分の武器として意識的に使うということです。こういったことの積み重ねで、まるでレベルの違う作品が描けるようになると思います。
●編集部員・Z
この設定自体はすごく新鮮でした。それと全体的に結構リアルで等身大な印象なのに、謎のインド人とかが出てくる。その混ざり具合はいいですし、絵柄もお話と合っていたのでは。
●編集部員・K
不思議な感覚の中、気付けば読まされていた。こんな独特な感性の漫画、あんまりないんじゃないかなと。
●編集部員・C
淡々とした絵柄が味のような気もするので、めりはりをつけると色々なものが損なわれてしまいそうな。
●編集部員・K
う〜ん、なんとも言えないですよね(笑)
●編集部員・J
現状のままの不思議な感覚と、商売っけは両立できるように思います。商売っけという言い方は大袈裟ですが、その実際は、読者に気付かれないほどの、ほんのちょっとした工夫だからです。世の中にはそういう作品、たくさんあると思います。
 

『花のベリアルマガズン』和笑弘雨わわらこうう(埼玉県・32歳)

【ストーリー】新人漫画家のベリアルは、高校時代の同級生・桐川結麗と再会する。彼女は花祭壇を作るフラワーアーティストの修業をしていた。プロの壁にぶち当たっていた二人は、「夢が叶ったら再会しよう」という約束を思い起こし、互いの夢を再燃させる。

●編集部員・G
主人公のデフォルメが気になりました。それと、なんでこの形にする必要があるのかなと。
●編集部員・P
僕はそれは気にならなかったし、純粋さも感じました。話作りはまだまだだけど、何か考えてそうなところは面白いなと。
●モーニング編集長・島田
ちょっとごちゃごちゃしてるけど、まあよく考えてはいるかな。
●編集部員・あ
主人公を除くと、女の子もかわいいですよね。作者が何を考えているのか、話してみると結構面白いかもしれない。
●編集部員・C
セリフもキャラも血が通ってはいるけど、目がうつろな印象ですよね。だからこそ主人公をこういう形にしたのかな。
●モーニング編集長・島田
担当編集者とか、おそらく作者の身近にいるような職業の人は結構リアルだったよね。しっかりしたものは描けるんじゃないかな。
●編集部員・H
僕が感じたのは、構図の取り方が甘くて、絵はなぜか目がすべるんですよね。
●編集部員・G
フキダシの配置の仕方とか、もうちょっとしっかり描いた方がいいかもしれないですね。
 

作品の詳細と選考結果はこちら!『浮草の御守』土屋雄民(神奈川県・25歳) ★2次選考通過作品

●編集部員・い
私が担当です。コミティアで出されていた同人誌が面白かったので声を掛けました。不思議な状況の中で展開されるキャラクター同士の掛け合いに興味をひかれましたので。
●編集部員・C
いやあ、ただ、このお話すごい期待して読み進めると、そこで終わるのかい!?というラストになってますよね。もっと色々展開できただろうし、素直に先が読みたいと思ったのに、もったいない。この先の構想はなかったんですか?
●編集部員・い
本誌に掲載されても問題ないページ数におさえて1本作ることが第一目標だったので、先の展開までは考えていなかったですね。
●編集部員・Q
ラストから6ページ目を読んだ時に、ここからどんな話になるのかと期待したら、そこまでの流れと同じような展開で終わってしまった。絵とかキャラすごくいいけど、ここで完成と思ってしまったらもったいないですよね。
●編集部員・D
そうなんだよ。けどつい評価をしてしまう作品なんですよね(笑)
 

作品の詳細と選考結果はこちら!『ドギー&マギー』つかだりつ(東京都・35歳) ★2次選考通過作品

●編集部員・J
このタイトルって、「クラムボン」というバンドの歌ですよね。音楽好きなんでしょうね。それに、キャラクターの良さをすごく感じました。体温とか熱量もあるし、彼らがどういう青春を送っているのかも読みながら気になった。それって単行本を買いたいという動機と近いんじゃないかな。描きたいという絵のビジョンが明確だし愛着も感じる。バンドの演奏の絵、非常に良いですよね。弦をスライドする力加減も描けているし、コマ運びの運動神経も良い。画力はまだ拙いけど、感動のポイントもあるし非常に評価高いですね。
●編集部員・C
線は細いのに、迫力があるのはデッサン力あるのかな。
●編集部員・Q
画力めちゃめちゃありますよね。
●事務局長・宮本
自由自在に線の太さも変えてるし、ビジュアルイメージもしっかり描けていますよね。
●編集部員・D
男の子がヘルメットみたいな頭だけど魅力的ですよね。ラストはサラッとしているけど、品がある。ただ、こんなに可能性秘めているのに、この年齢まで作品発表していなかった点は気になるかな。
●モーニング編集長・島田
いやいや、年齢はハンディじゃないよ。
 

『ニコル・デ・アニマ』AKIRA(神奈川県・36歳)

【ストーリー】主人公・二コルの父は、偉大な画家。そして母は永く病に伏せっており、ついに亡くなってしまう。悲しみに絶望した父は姿を消し、それから父の描いた絵が惨殺事件を起こす、という奇妙な現象が起こり始める。二コルは事件を止められるか!

●編集部員・L
私が担当です。去年持ち込みを受けました。話は拙いけど絵の迫力はあり、男性漫画って、どこまでいってもアクションや戦い、運動神経といった要素が必要だと考えているので、将来的に楽しみにしている作家さんです。
●編集部員・J
厳しいことを言うようだけど、キャラクターに体温を感じないんだよね。それで親しみをもって読むこともできなかった。
●編集部員・D
髪がなびいているところを描いているんだけど、あまり風を感じないんだよね。全体的に蝋人形みたいに止まってしまっている。
●編集部員・Q
ということは「人」ではなく、こういう雰囲気を描きたい方なんじゃないかな。
●編集部員・C
戦いとか興味ないのでは?
●編集部員・L
いや、「絵」を題材にしたアクションを描きたいとおっしゃっていたのですが……。
●編集部員・N
この方は絵にしか興味はないように見えるけど、描き込みの過剰さだったり、勝負したいものがはっきりしている点は新人賞の作品として好感は持てました。
●編集部員・H
う〜ん、キャラクターに血が通っていないように感じるから漫画として難しいかなあ。達者な絵だとは思うけど。
●編集部員・E
絵はかたいけど、扉とか、目は止まるんですよね。何かこの人にしか描けないものがあるんじゃないかなとは思ったりしました。
●編集部員・Z
荒唐無稽なお話自体はあってもいいかなと思います。担当がこの人にぴったり来るテーマを探っていくことで、次のチャンスがあるのでは。
 

『BLESSLESS』介川ゆか(神奈川県・24歳)

【ストーリー】地球温暖化が進み、「語り合う」ことが豊かな人々の特権となった時代――。他人と触れ合う事を恐れ、自分の世界に閉じこもっていた少年は、命をかけて「言葉」を発する少女と出会い、自らの「言葉」を取り戻す!?

●編集部員・I
60回のちば賞で『モラトリ』という作品で一次までは通過した方です。前回の反省をいかして、コマ割りをなるべくシンプルにして、キャラクターの強さを意識して頑張って描いてもらいました。
●事務局長・宮本
今回の応募作の中で、一番かっこいいキャラクターだと思ったんですが、設定をいかせていなかったのはもったいなかった。
●編集部員・G
詩を朗読するラストは演出としてあまり効果を感じなかったのですが、「痛快さ」が際立っていました。突破力あるからこそ、雑に見えてしまう絵が残念でした。
●編集部員・D
決して手抜きしている訳ではないんだろうけど、そう見えちゃうんだよね。それと、変則ゴマを使った画面構成をやっぱりしていて、それってある意味「逃げ」になってしまっているのかも。1コマできっちり完結している絵をもっと意識するようにした方がいいのかな。
●編集部員・C
それでも、前作よりは大分改善されていますけどね。
●編集部員・Q
ストーリー自体は期待をもって読んでいたんですが、ラストに納得できなかった。絵に色気はあるからこそ、もうちょっとしっかりした話に取り組んだ方がよかったのでは。
 

『蓮君と玄君』赤堀隆史(東京都・22歳)

【ストーリー】戦で荒廃した、とある国。王宮で暮らす蓮には、未来が見える。予言者として崇められる蓮だが、狡猾な大人に利用されることに嫌気が差し、王宮を飛び出 す。全てを見渡せる蓮が出会ったのは、何ひとつとして見ることのできない盲目の少年。二人の人生が交錯する。

●編集部員・A
前回の31回MANGA OPEN OPENで、『完全漫才』で一次を通った方です。ラストシーンからも空間を捉える力があるのではと感じています。前作で特に絵柄を注意されたので、その点含めてご意見伺えればと思っております。
●編集部員・N
監視している人もまた主人公と同じ立場だったという驚かしは腑に落ちたし、主人公格二人のキャラもきちんと動かせている。まだ若いし、これからに期待はできるんじゃないでしょうか。
●編集部員・D
ただ、設定をもっと読み手に分からせる意識をした方がよかった。主人公や監視している男が何に囚われているのか、はっきりしないからストーリーを追いかけていけない。立っている地面があやふやだから、ある意味「ポエム」に見えてしまうのかも。
●編集部員・M
短期間の間に何本も原稿を上げてくる熱量はすごいと思う。けどキャラに血が通うレベルまではいってはいない。前回と絵柄の本質的な部分はあまり変わっていないと思うし、それを自覚していかないと。不思議なお話を描くというところから抜け出していかないと、壁を突破できないんじゃないかな。
 

『マルスの胸』中島千晴(兵庫県・24歳)

【ストーリー】美大受験のための予備校に通う洞地は、自分の「理想通り」の絵を描く、乾という現役高校生と知り合う。洞地は乾を意識するあまり、自分らしい絵が描けなくなってしまい……。

●編集部員・I
58回ちば賞の『海の見える家』で一次を通った方です。この方の描く男の子の絵に惹かれ担当になりました。色々描いてもらったんですが、キャラクターの作り方があまりうまくいかず、そこで「自分に近い等身大のキャラを描いてみては」とアドバイスして完成したのが今回の応募作です。
●編集部員・C
絵に新しさみたいなものを感じなかったかな。それと話にドラマ性があまりないよね。
●編集部員・A
やっぱり「漫画」を読む上で、何かが起こって欲しいと期待はしてしまいますよね。
●編集部員・Y
う〜ん、大きな事件がないのは構わないけど、その分強力なキャラがないとダメだよね。女の子はよかったけど、まだまだ弱い。それとやっぱり「美術モノ」として、絵の説得力という点でちょっと厳しかったかな。

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