2次選考会の議事録をノーカット完全収録!

ちばてつや賞一般部門の2次選考は、部内選考会です。
モーニング編集部員全員で議論を行います。
その場で、自分の気に入った作品を最も熱を込めて説明した編集部員が、その新人作家の担当編集となります。
参加者全員の投票で上位となった作品が、最終選考へと進みます。

 

『Oh! my ブッチャー!!』中村康浩(兵庫県・40歳)

【ストーリー】ビートルズの大ファン、松永と北川。来日が決定したポールを空港で出迎えようとするも、もちろんロビーは人でいっぱい。果たして生ポールは見られるのか!? さらに宝物のレコードにサインをもらえることはできるのか!?

●編集部員・A
個人的な好みとして、この作品のような閉じられた空間内でのドタバタ劇は好きなのですが、どうしても絵柄に抵抗があります。
●事務局長・都丸
そうですね、画力はあるんですが魅力的かというと疑問が残ります。
●編集部員・B
やはり「モーニング」には『僕はビートルズ』という作品があるので、ビートルズネタだとどうしても比べてしまいますよね。
●編集部員・A
ただ、最後までどうなるのかなと思いながら読んでいたので、作品評価は一定基準を超えているのでは。
●編集部員・C
う~ん、だけどページ数が多いので、間延びしてしまっているんですよね。このネタで50ページ超えるのは厳しいかなと感じました。
 

作品の詳細と選考結果はこちら!『デコイの友達』杉崎貴史(東京都・31歳)

●編集部員・D
この作品は語り口が独特で、作者の物の見方もおもしろく、僕はとても評価しています。物や動物が擬人化されているんだけど、それがとても自然で作品の魅力になっていますね。
●編集部員・E
僕が担当なんですが、この方とはコミティアで知り合いました。職業はデザイナーで、漫画以外に映像も作ったりされています。応募作とはまた別のタッチで描かれた作品を読んだのですが、色々な絵柄を描き分けられる器用さがあります。ちなみに賞への応募は初めてです。
●編集部員・F
上品な読み口で好印象なんだけど、何か突き抜けた特徴がほしいよね。
●編集部員・G
色々感じさせる内容だし、絵も丁寧なので作品評価は高いのですが、将来性というところで担当の意見を聞いてみたいです。「モーニング」という雑誌の中で、この方にどんな作品を描いてほしいの?
●編集部員・E
「モーニング・ツー」を目指したいねと話しています。内容としては童話みたいな、けどちょっとダークな読み口のものができないかと考えています。
●編集部員・F
小津安二郎監督の映画が好きなのかな? カメラの位置がずっとローアングルだよね。主人公の顔ですらアップがあまりない。センスも力もあるのは感じるんだけど、この作品ではキャラらしいキャラがないから、何かどこかで読んだことのある感じが払拭されないんだよね。
●編集部員・B
目新しさがあるかというとちょっと応募作からは感じなかったかな。今後作者が、ネームが抜群に切れるとか背景がめちゃくちゃうまいとか飛び抜けた武器を身につけないと、若干埋もれちゃう気はしました。
●編集部員・G
確かに、応募作単体での評価は高いけれど、このテンポの作品をいくつかまとめて単行本にしたとして、強い売りはないですよね。
●事務局長・都丸
ただ、みなさん、作品評価は高く、論点が賞の後のことに集中しているので、充分通過するレベルには達しているかと思います。
 

作品の詳細と選考結果はこちら!『記憶の熱量』若林里実(東京都・28歳)

●編集部員・E
すごくおもしろかったです。「エーテル」が記憶をエネルギーにしているとか、興味深い解釈が随所に散りばめられていて、ページ数が長いけど飽きずに最後まで読んでしまいました。何百年も生きているが故に記憶保有量が多いという登場人物が出てきたり、また人より長く生きている分色んな世界を見て見識を深めているが故に「エーテル」について様々な意見を持っている等一つ一つに感心してしまいました。「エーテル」を厳密に考えたら矛盾が生じるかもしれないのですが、そういうのを考える余地がないほど夢中になり最後まで一気読みしました。
●編集部員・H
私もこういうタイプの話は大好きなんですが、物語が中だるみしていたりラストの結末がやや強引で、ここまで長い必要があったのかなと感じました。また、せっかく考えた「エーテル」というツールをうまく利用してないと言うか、もっと掘り下げればおもしろくなる可能性があるのに、記憶を消費するという設定で止まってしまっているのはもったいないですよね。
●モーニング編集長・島田
発想は本当におもしろい。ただ、発想のおもしろさ一点買いで、ページ数の長さが致命的だったかな~。
●編集部員・A
セリフのセンスはありますよね。ただ、作品の最大の魅力が映画でいうところの「大道具」と「設定」だけで、「小道具」がない印象です。全体的に温度の低いキャラクターが多い中、個々のシーンが印象に残らないのが気になりました。
●編集部員・F
私は今回の作品の中で一番おもしろいと感じました。趣味のいいSFですよね。それと読んでいて鶴田謙二さんが好きなのかなと。
●モーニング編集長・島田
確かに。けど意外と誰かのフォロアーだっていうのは大事なのかもなと最近感じていて、もちろん鶴田謙二さんと比べると粗さが目立っちゃうんだけど、のびる要素は充分あるかな。絵はどうなのかな。拙い感じはするけど、まだまだ進歩はしそうかな。
●編集部員・B
う~ん、けど最初と最後のページを見比べて、あまり絵が変わっていないですよね。
●編集部員・F
いや、表情はだんだんよくなってきているよ。
 

『天翔ける』零郎(埼玉県・27歳)

【ストーリー】江戸時代の京都。町飛脚・天馬のもとに、余命わずかな老女が依頼にやってくる。「江戸にいる息子に文を届け、その返事を持って帰ってきて欲しい」……残された時間はあとわずか。老女の命尽きる前に天馬は戻ることができるのか!?

●編集部員・I
私が担当で、持ち込みを受けたときにこの作品を持参されていて賞に応募したという流れです。ですので打ち合わせ等はしていません。今はアシスタントをしながら自分の作品を描いていらっしゃる感じです。
●編集部員・H
私は評価していて、ストーリーは確かに弱いけれど、画力があるのでリアリティを絵から感じました。
●編集部員・F
応募作と一緒にもう一つ原稿が入っていたけど、私はそちらの方がよかったかな。価値観と価値観がぶつかり合って、それが転換してという流れは好印象。だけど全体的に演出が過剰に見えて気になった。例えばこの絵で「モーニング」に掲載されたら、人工的な感じがしちゃう。
●編集部員・J
熱気や熱意は感じるんだけど、今の絵ではドラマが伝わってこないかな。
●編集部員・K
話が意外と単純なだけに、最後まで予想を裏切らない感じがしました。その予想を超えるものを期待するだけに、ちょっと今回のストーリーでは厳しいのかもしれません。
●編集部員・I
色々なご意見ありがとうございます。時代劇にこだわらず人間ドラマを描いていきたいという目標がご本人にあるので、ぜひ次回作にいかしたいと思います。
 

作品の詳細と選考結果はこちら!『しおかぜ』桐村海丸(東京都・24歳)

●編集部員・J
まず担当者に聞きたいのですが、「江戸時代の品川」を描くにあたり資料はどうされたのですか。
●編集部員・L
もちろん写真がない時代なので、品川の史料館に行って記憶したものをもとに原稿にしたそうです。
●編集部員・J
つまり目に焼きつけただけってことですよね。私はこの作品をとても評価しているのですが、ほとんど才能だけでこの時代を描き切っているのに感心しました。
●編集部員・M
じつは、私はこの方の別の作品を読んだことがあって、それ込みで考えると、もうちょっと高いレベルで話が描けるのではと思ってしまいました。絵に色気があるし才能も感じているからこそ、あえて低めの評価にしました。
●編集部員・E
確かに絵は雰囲気があり、五十嵐大介さんなどの個性派漫画家タイプという感じはするのですが、ストーリーが弱いかなと思いました。
●編集部員・B
話のつながりが弱いですよね。何でその結末になるのかな、という若干の消化不良を読み終わった後感じちゃった。
●編集部員・L
ちょっと直せば、よりまとまりは出るかなとは思ったのですが、本人が描きたいものである「くじら」と「着物」がしっかり描けているし、印象的なシーンも入っているので、今回はその点は気にせずにいこうと考えました。これだけ着物を描ける人って、じつはいないんですよね。
●編集部員・B
ただモノクロ原稿はあまり描き慣れていないですよね?
●編集部員・L
そうですね、圧倒的にカラーの方がうまいです。応募作では定規を一回も使ってないのですが、後半になるにつれ線も安定してきて、本人もその変化を感じたのか前半を描き直したりしていました。
●編集部員・K
1コマ1コマの演出が上手なんですよね。
●編集部員・F
構図が抜群にうまいし、カメラワークセンスがかなりいいよね。
 

『Pals』棚園正一(愛知県・28歳)

【ストーリー】新法「パルス」――それは結婚相手を国が決定するというシステム。何をやってもダメな冴えない高校生・野呂が選ばれ、しかも相手はクラスのアイドル・綺羅沙恵美! 「パルス」のお陰であり得ないほどの幸運を手に入れたのだが……。

●編集部員・N
僕はこういうストーリーはつい評価しちゃいがちなんだけど、このラストは夢がないよね。結局は金みたいな。
●編集部員・O
絵も細部まで気を抜かずに描けているし私も評価はしているのですが、気になる箇所は多々ある。ブラックエンドに仕上げたんだろうけど、本当は、彼女の本音が見えてからがこの作品はスタートするんじゃないかな。
●編集部員・P
そうなんだよな。はっきり言ってアイディア一発で終わっちゃってて、その中にあるはずのドラマがないんだよな。
●編集部員・O
「パルス」という設定の紹介に留まってしまっていて、例えば彼女が主人公に惚れている理由も省略されているから感情を揺さぶられないんですよ。せっかく「パルス」を崩壊させる人と守る人が登場しているんだから、その対立軸を膨らませるべきじゃなかったのかな。
●編集部員・I
私が担当なんですが、ご指摘いただいた点は納得です。のびしろがある方だと思うので、次回ぜひ頑張りたいと思います!
 

『Go! Go! A-cup GirL』仲川ハル(北海道・32歳)

【ストーリー】栗原野々香は、上京2年目の女子大生。未だ交際経験なしの野々香は、大学の後輩の堀江くんと、今日人生初のデートに出かける!

●編集部員・Q
内容はすごく素直な物語だし、是非ちば先生に読んでいただくレベルだと思いました。けど、タイトルを何でこんな感じにしちゃったんだろう……ってちょっと残念です(笑)
●一同
(笑)
●編集部員・C
偽善的な感じがまったくしなかったね。いい人なんだなーと心が洗われる気がした。Aカップであることは、あんまりストーリーに関係ないけど(笑) でも、もう少し、嫌味なところも描けた方がいいのではとも思いました。
●編集部員・R
僕は逆に、若干の押し付けがましさを感じまた。いい話はいい話なですが、こんな風に性善説で世の中を見られたら幸せだなと思いました。
●事務局長・都丸
非常にストレートな、純朴で初々しい話ですから評価も分かれそうですね。
●編集部員・S
僕は、ただの恋愛モノとも思いませんが、何の障害もないカップルの恋の行方にはドキドキしないですよね。
●編集部員・D
僕には造形が少し、あざとく感じました。あと、単館上映してそうな映画みたいだなーとも思います。
●編集部員・B
それは売れないってこと? 僕もそれなりにいいなと思うけど、顔の固さとか、もっと突き抜けないとダメだなって思いました。作者の方、男性なんですよね。介護の仕事をされてるみたいです。
●一同
いい人なんだろうな~。
●編集部員・J
絵や持っている雰囲気はいいけど、キャリアを考えると若干評価が辛くなってしまうかなあ。
●編集部員・T
好感は持てるけどね。作品のタイプ的に商業誌向けにする工夫が必要かもしれないですね。
 

『僕と彼女』木下美菜子(広島県・20歳)

【ストーリー】彼女にフラれ、住まいを追われた小森ハルキ。途方に暮れ引っ越したアパートには、なんと幽霊が住んでいた──!

●編集部員・G
この方は、以前MANGA OPENに、目が見えない夫婦の話を送ってくれた方だと思います。
●編集部員・R
「いい人」の話だなーと思いました。嫌味のない、いい世界を見せてくれたかなと。絵がうまく読みやすいです。でも話は、幽霊って設定とは関係ないところで展開してしまっていたかな。
●編集部員・B
むしろ幽霊じゃないが方がわかりやすいのでは?
●編集部員・M
最後に幽霊の女の子を選ぶけど、幽霊を選んだって未来ないっすよ。
●一同
(笑)
●編集部員・O
それにしても、食費のかかりそうな幽霊ですね。
●編集部員・G
ご飯食べたり、色々と物理法則を無視してますよね(笑)
●モーニング編集長・島田
年が若いからね。この先に期待って感じかなあ。
 

作品の詳細と選考結果はこちら!『冬美町の夏』トトキマコト(東京都・28歳)

●事務局長・都丸
以前、MANGA OPENで受賞されていた方です。
●編集部員・P
MANGA OPENのときに読んだものと比べると、長足の進歩だなと感じました。以前の類型的なキャラに比べて、これはキャラが生きてていいなーと思いました。ただ、自分の頭の中で作った世界観をまだ読者に共感させる力がないのか、消化不良なところもありますが。でもその点を踏まえても、この人じゃないと描けないキャラを描けている点は十分評価できると思います。ネームも切れてますし、かなり化けたなという印象です。
●モーニング編集長・島田
前作より100倍印象いいね。絵のうまい下手は別として、ところどころいい絵を描けそうだなーと思わせるコマがあったのがいい。
●編集部員・H
僕は担当なんですが、この方には、この方特有の言葉遣いやキャラクターなどをどんどん生み出せる力があると思っています。
●編集部員・F
もしかしたら、何も言わずに思い切り描きたいものを描いてもらった方が、おもしろいものを作ってくれるかもね。
 

『焦点』辰己正博(千葉県・33歳)

【ストーリー】両親が不仲で、心落ち着かない日々を送る桐木さやか。ふと立ち寄った写真屋で、佐伯というおじいさんに出会いカメラを始めるのだが……。

●事務局長・都丸
この方、たくさんの新人賞を取られていますね。
●編集部員・C
僕はとてもいい話だと思いました。女の子が自分の部屋で一人でヘッドホンを聞きながら、両親が本当は仲直りしてないのに、そう思い込もうとして椅子でクルクル回っているシーンがとても印象に残りました。
●編集部員・F
お前は本当にイノセントな少女が好きだからね。
●一同
(笑)
●編集部員・M
おにぎり食べるシーンがおいしそうでよかったです。
●編集部員・F
ただ写真を愛する女子高生なのに、朝焼けと夕焼けを間違えるというのはちょっとダメかなと思ってしまいましたね。
●編集部員・J
この作品を読み終えたとき、若干消化不良な感じになってしまった。この主人公をいたわる気持ちになれなかったのは、キャラクターとして弱く感じてしまいます。
 

『祈祷』トシ(京都府・22歳)

【ストーリー】1953年の大阪。ヤク中の父親のせいで家族がバラバラになってしまったことを悲しむサキは、父親に天誅が下されるよう神棚に祈りを捧げるが──。

●事務局長・都丸
彼は以前ちば賞で入賞していますね。
●編集部員・T
今回の作品は、内容はさっぱりわかんないけどすっごい怖かった。
●編集部員・B
僕が一次選考のときに推しました。ストーリーは突っ込みどころ満載なんですが、絵がすごい。人間の狂気を描けてるなーと思います。
●編集部員・H
造形がすごいですよね。おばあちゃんが犯人とわかる前に、影として襲ってくるシーンとかいいですよね。
●編集部員・D
前回の琉球空手の話よりも、ずっと読みやすくなったと思います。
●モーニング編集長・島田
前回よりうまくなってるのはすごく感じるよね。かぶき方も減ってないと思うし。
●編集部員・O
読みやすく、絵をしっかりという意図を持って描いたのは伝わってきます。ただ、前作では格闘技の間合いは取れてると感じましたが、剣術の間合いはまだ描き慣れていないのか気になってしまいました。
 

『MAD SAND』狩野圭(東京都・26歳)

【ストーリー】主人公は、砂漠で遭難してしまった日本人旅行者。彼を救ったのは、軍事装備に身を固めた水着姿の女性たちだった……。

●編集部員・F
女性の絵が今一歩だよね。水着と太ももとかサービスカットなのにまったくエロくない。
●編集部員・C
それにしても、暑さがまったく感じられない話でした。汗が一滴もない!
●編集部員・F
本当に暑いと汗は蒸発しちゃうんだよ。肌は真っ白になっちゃうし。
●モーニング編集長・島田
でもそこは意図してないでしょ(笑)
●編集部員・F
砂漠とミリタリーの話に、エロい姉ちゃんが出てきて、でも本人がこの世界観をそんなに好きそうな感じがしないのはなんでだろう。しかしあのパンツはないよー。女性が出てきて一発目でパッと全身が映るとき、そこが見せ場なのにあのパンツはないよなあ。
●編集部員・L
アシスタントしては相当できるというのはわかりますね。
●編集部員・J
そうですよね。全体のノリがなんとなく懐かしく感じてしまいました。
 

『いちぬけた』黄河蛙(大阪府・27歳)

【ストーリー】突如、日本社会を襲う現象――「いちぬけた」という言葉と共に街から次々に人が消えていく。父の介護に健気に励む主人公・春絵が最後に下した決断とは!?

●編集部員・I
この方は、持ち込みで私が受けました。「いちぬけた」という設定を思いつき描き上げた作品です。
●編集部員・T
打ち合わせはしてないの?
●編集部員・I
ほとんどしてないですね。なので若干強引にオチを付けたっていう感じになってしまって。
●編集部員・K
確かにラストがいまひとつわからなかったんですよね。取ってつけた感じになってしまっていて。
●編集部員・T
この設定をいかして「ドラマ」を作らないと。設定だけで満足しちゃったらダメ。その先が大事だから。
●編集部員・O
人間の嫌な部分ばかり描かれていて、表情もけっこうきつい。一般人がみんな超能力を使えるという設定ではなく、誰か特定の人だけ使えるということにしないと、お話がめちゃくちゃになってしまいますよね。
 

『気まぐれの夢跡』岩村壁(大阪府・23歳)

【ストーリー】祖父は言った。立ち入り禁止区域の向こうには神様が棲み、死者が甦ると。母を亡くしたかおりは、フェンスの向こうへと旅立つ!

●事務局長・都丸
かなりグロテスクな描写がある作品でしたね。部内でも評価が分かれています。
●編集部員・E
僕はすごくおもしろかったです。確かに描写がグロいので、好みは分かれるだろうとは思いました。でも、ただグロいだけじゃなくて、主人公の女の子が母親を奪還したいというストーリーが底にちゃんとあり、母親のことを想ってそういう危険な場所に身を投じていく描かれ方がいい話だなと思いました。でもそれがあまり報われないラストになっていて残念でした。
●編集部員・H
私が担当しています。グロテスクなシーンは出てきますが、気持ち悪さを描くのが作者の目的じゃないんです。だから、決して「グロ」にこだわってるわけではないんですね。
●編集部員・S
ある面、恐怖がステレオタイプだなと思ったんですよね。だったら、元ネタ見た方がいいんじゃないかと。いろんなところから、怖い場面を抜き取って集めてきた感じがしてしまうんですよ。
●編集部員・H
なるほど。ただこの作品は恐怖を売りにしているのではなく、「悪夢を見た感覚」を描くという狙いのもと出来上がったものなんです。コマ割りが抜群にうまく、画面の迫力もすごいので、ぜひその点も評価していただきたいです。
●編集部員・T
でも恐怖の場面が切り貼りしてあるだけのように感じてしまうんです。この程度で斬新な構図だと評価しちゃいけない面がある気がします。寺山修司の作品とかも、こんなふうな描写はいっぱい入ってたんじゃないかな。大事なのはオリジナリティ。新しいものじゃないと。
●編集部員・H
映像的で、感覚的でおもしろい。読者の視点からすると、見事な画面構成により、ちゃんとストーリーになっている。脳が自然と快感を得られるので、それはもう立派に娯楽、エンターテインメントとして成立しているのではないでしょうか? もちろんキャラクターやストーリーなど、まだまだ課題は多く、今後に期待しています。
●編集部員・T
でもそこにストーリー性や惚れられるキャラクターがないと。この作品にはそれを感じなかったから僕個人の評価は低くなってしまいました。
●編集部員・L
例えば、『彼岸島』(松本光司著。吸血鬼が住む島を舞台としたサスペンスホラー。弊社刊)を読んでいると作品全体から“狂気”を感じるのですが、この作品ではどうしても「正常さ」を感じてしまう。
●編集部員・F
構図とか画力とかある人なんですけどね。それとネームだともっとうまかったんだけど、表情が少し固いね。それがもったいない。
 

作品の詳細と選考結果はこちら!『ほう子ちゃん』新崎三幸(栃木県・25歳)

●事務局長・都丸
今回の中で、いちばん高い評価が集まった作品ですね。
●編集部員・S
僕も応募作の中では一番評価しています。その上でまずマイナス点から言えば、回想設定にした点。そのせいで、少し読みづらさが出てきてしまっているんですよね。ただそれを差し引いても、女の子のキャラクターがとても魅力的でした。自分の小学校時代のことを思い返してみても、こういう女の子がいたような気もするし、また、いてほしかった気もする。つまりは細かいところまで演技が巧みで、素直に受け取れたんだと思います。ページ数が多いですが、担当と打ち合わせをすれば、そういった問題も解消できていい作品づくりができると思います。
●事務局長・都丸
では逆に評価している方以外の意見も伺ってみたいのですが、いかがでしょうか。
●編集部員・T
この作品の修正ポイントを考えたとき、いまいちどこを残せばいいのかわからなかった。つまりはあまり残すところがなさそうな気がしたんですね。あと、僕はほう子ちゃんっていう子があまり好きになれなかったかな。
●編集部員・J
これ、「思い出し」漫画なんですよね。主人公の現在と過去で、交差するものがもっとあればよかったと思います。
●編集部員・O
女性らしい話と絵で、風景の空気感が雰囲気があり抜群によかったんですが……冗長で、オチが長いのが残念な部分といえばそうなるんでしょうか。
●編集部員・F
何で尻切れトンボで終わっちゃったんだろうという感じはあります。だけどこの人は、「人」のキャラクターが描けるっていうより、「人の人生」が描けるくらい才能がある人なんだろうと思うんですね。ここまで人の人生を掘り下げて描けるっていうのは、「ちょっといい話を描いてやろう」っていうスケベ心じゃできないんじゃないかな。何というか愛の力を感じましたね。
 

作品の詳細と選考結果はこちら!『イイですね、ソレ。』朋(東京都・34歳)

●編集部員・H
死体という、ある面引かれてしまう題材を扱いながらも、そこから動物のかわいさや美しさだったり「生」の価値について温かい視線で描き上げているところが素晴らしいなと思いました。また、画力も十分にあるのではないかなと。「自分だけの価値観を探してみる」というネームにも感動したので評価しました。
●編集部員・A
すごくきれいに描けているし、題材も通り一遍ではないなとは思ったんですが、お話とかキャラクターの部分で、「えっ」と思わされるようなところがあまりなかったんですよね。こういう話になるかなと思った通りの展開だったので、私は評価が低くなってしまいました。
●事務局長・都丸
なるほど。僕も同じ印象で、描きたいところはすごくハッキリしているけれど、若干予定調和な感じが否めない。
●編集部員・F
これ、剥製を作ることに対して「優しいお父さんがやっていることだから、すごくいいことなんだ」っていうのがちょっと独善的に感じてしまった。そうじゃなくて、少し外からひいた目線で、剥製を作ることを気持ち悪いっていうのはおかしいんだよっていう第三者的視点が入ることでだいぶ変わってきたと思うんですけど。
●編集部員・M
そうですね、怖くないよっていう片方の意見しかないから……。何か説教くささを感じちゃったんですよね。正しいことを言ってるし、いい話なんだろうなとは思うんですけど、そこで好きになれなかったんですよね。
●編集部員・G
担当がつくと、またそこで別の視点が入れられると思うんですよね。僕はこの作品を今回の応募作の中でもすごく評価していて、最初の「手」というキーワードから始まって、最後そこに帰結するという構成もうまいなと思いました。偏った見方から物語がつくられていくんですけど、娘の視点で物語がつくられているので、その偏りはちゃんと成立するんじゃないかなと。大人の考え方で進んでたら、もうちょっと考えろよ、と思うんですが、娘の感じ方や考え方で進むので、僕はそこはあまり気にならなかったです。予定調和なところはあるんですが、単純に気持ちよく読めたし、こういう話ってありそうでないものだから、担当がついてやっていけば、おもしろいものが描ける才能を持った人だなと思いました。
 

『ふたりひとりごっこ』松島てゐ(島根県・25歳)

【ストーリー】東京からの美しい転校生・十和子。妙にさめたところのある優等生のこずえ。急速に接近していく二人の仲を、十和子のある「秘密」が引き裂いてしまう。

●編集部員・H
この方は、描かれる女性の絵がすごく魅力があるなと。話のまとまりとしては、最後どうだったのか微妙にわからなかったのですが……。
●編集部員・K
私は逆に、絵はあまり評価してないんですけど、ラストを読んだときに何かおもしろいこと考えそうな人なのかなと思って、評価しました。
●編集部員・U
私、担当を強く希望します。まず、表情がとてもいい。それと「あとに残る作品づくりがしたい」という作者の熱意あるコメントもポイント高かったです。お父さんが娘の裸の絵を描く設定が、『高校教師』(1993年に放映された、教師と生徒の恋愛等を描いたドラマ)みたいな話だなとは思ったんですが、驚かせようとしてつくった設定の出し方があまりぶっ飛んでなくって、もったいない感じがしました。担当について一緒に変なことを考えてやっていけたらなと思っています。
●編集部員・O
絵ではなく心理ネームで多くを説明してしまっている。ただ、淡い世界をきちんと綴っていければ、伸びる可能性は大いにあるんじゃないでしょうか。
●編集部員・W
破滅の描き方、ネームの進め方がよかったですね。表情もいいですし。
●編集部員・F
ただ、背景が白すぎるんですよね。意図的になのか、締め切りに間に合わず、白くなってしまったのか……。完全に仕上げた状態のものを見てみたいですね。
 

『モトギレ!!』中薮陽平(石川県・29歳)

【ストーリー】サッカーに青春を懸けたが、未だ努力が報われず補欠に甘んじている今井ケンゴ。高校3年生のケンゴにとって、今度の紅白戦がレギュラー獲得の最後のチャンス!

●編集部員・E
僕が担当しています。持ち込みを受けたんですが、この作品は一回ネームを直して、作画後も描き直せるところは修正してもらいました。絵もまだうまくはありませんし、話も王道といえば王道なんですけども、僕は読み終わったときに、「ああ、いい話だな」と素直に感じました。一次選考で「ちょっと二次に上げるのは厳しいんじゃないか」という意見も出たんのですが、真剣に漫画に取り組む熱意ある方なので、できれば二次選考で皆さんの意見を聞きたいなと思い、この場に出させていただきました。
●編集部員・J
絵もそんなにうまいわけじゃないし、作家性みたいなものも、今のところあまり感じられない。でもとにかく一生懸命で、そこにすごく好感を持ち、最終に残してあげたいなと思いました。
●編集部員・V
漫画家になりたいんだろうなっていう、この人の情熱とかやる気みたいなものは読んでいて伝わってきたのは確かなんです。でも、それだけで最終に残すのは違うと思いますし、本気で目指しているならば、次回作を描いてこられると思うんですよ。その新しい作品で、議論をした方がいいんじゃないでしょうか。
●編集部員・G
スポーツって、「努力すれば報われる」とか、そういうものじゃないんですよね。だからこそ、取材を重ねて、リアルに見せることがこの作品には求められると思います。
●編集部員・F
今、漫画家目指してる人で、こんなに「暑苦しさ」を感じさせる熱量のある漫画を描く人ってなかなかいない気もしますけどね。この人は、その熱さを売りにすればいいと思いますよ。スポーツ漫画で今回あまりにも王道な感じもしたので、別の素材を扱って、その熱量を表現してみたらどうでしょう。
●編集部員・L
もし本気で漫画家を目指すんであれば、これと同じ話を、こんなに長いページ数じゃなくて、20ページにまとめ直す。その作業はかなり大変だと思うけど、それでもう一度応募してみてはいかがでしょうか。
●編集部員・W
そうなんですよね。やっぱり最後までネームも多いし、ページ数も多い。そこからまず改善するべきかなとは思いますね。
 

作品の詳細と選考結果はこちら!『とあるおやじと女の冒険』中瀬麻衣(大阪府・27歳)

●編集部員・I
この方は第29回MANGA OPENの二次選考まで残り、私が担当しています。今回応募する上で一番気をつけたのが「人に読んでもらえる読みやすい作品をつくる」ということです。前回の応募作では、「コマ割りが独特で読みづらい」という指摘がすごく多かったので。頭からラストまでちゃんと読めるように、かつ、絵をもっと丁寧に描くように気をつけました。
●編集部員・F
コマ割りはどう言ったら直ったの?
●編集部員・I
「モーニング」を作者の方と二人で読みながら勉強しました。
●一同
(笑)
●編集部員・N
結構、読みやすかったですよ。夢のある話ですよね(笑)
●編集部員・I
さえない中年のおじさんと、そういう人たちがちょっとスイッチが入る瞬間を描きたいという思いで、今回この作品が出来上がったんです。
●編集部員・B
読めたし、絵も前回に比べるとすごく丁寧にちゃんと描いているし、メジャー感みたいなものはあるんじゃないかな。ただ、話が単調すぎるんですよね。物語の「山」がない。
●編集部員・G
それとキャラクターの年齢が、言われないとわからないんですよね。確かに夢のある話ではあるんですけど、あまりにリアリティがない。もっとひねくれた感じにしてもよかったんじゃないかな。絵とかコマ割りは前に比べるとすごく進歩したと思います。
●編集部員・F
この人、絵に色気あるよね。男の人は、すごい表情が動いて魅力的なんだけど、女の子がちょっと「お人形さん」すぎない?
●編集部員・M
そうですか? 女の子、こんなに可愛く描ける人だったっけ、と思いましたけど。
●編集部員・F
中年のこのおじさんのことを描きたかったから、やっぱりそっちは力が入ってるんだけど、女の子ももうちょっと入り込んで描いてほしかったかな。
●編集部員・M
このおじさんの理想の女の子はこういうんだろう、という感じで描いてるんだと思いましたけど。
●編集部員・F
女の人のキャラクターが詰め切れてないのかもね。
●編集部員・O
黒目が大きすぎて、生身の人間という感じがしなかったかな。
●編集部員・F
イッセー尾形がマネキンと独り芝居してる感じの(笑)
●編集部員・K
可愛く描けているだけに、ちょっともったいなかったですよね。
●編集部員・F
ただキャラとしては、詰め切れてないんですけど運動神経あるな、って感じはしました。よく動いてる。前回の作品から考えて、のびしろがすごくあるんじゃないでしょうか。
●事務局長・都丸
それぞれキャラクターが自己紹介してる感じがしたんですよね。「自分はこういう人です」っていう。要するに、レポートになっちゃってる。ただ、みなさんがおっしゃる様に絵は上達していますし、この先の成長が期待できる方ではありますね。

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