最終選考会の議事録をノーカット完全収録!

ちばてつや賞一般部門の最終選考はちばてつや先生をお迎えして行われます。時間をかけて一作一作丁寧に読んでくださったちば先生のコメントを聞き、その上で作品の担当編集は、自分の担当作品をちば先生にアピールします。そのほかの各編集部員は、疑問点などをちば先生に質問。活発な議論が交わされます。

 

『氷の花』山本松季(東京都・23歳)

●担当編集
私が担当しています。PNは一人なんですが、じつはお二人で描かれているのです。
●事務局長・鯉渕
どっちかが原作を作って、どっちかが作画するというのではなくて、二人してネームも作画もやってるんだそうです。凄いなと思うのは、ちゃんと二人の画力がある程度揃ってるんですよね。
●ちば先生
それは凄いね。キャラに目力もあるね。
●事務局長・鯉渕
インカの滅亡していく一民族が、血筋を残すというお話ですが。
●ちば先生
良いお話なんだけど、ねずみか何かに驚いて、供物を食べてしまうシーンがあるじゃない。あの辺りがちょっとわかりにくかったね。「ガチャン」という音も鳴っているし。
●事務局長・鯉渕
多分あれは、機転を利かせて音を立てて、救ってあげようとしたと思うんですけど。ちょっと伝わりにくいですよね。
●担当編集
ここのシーンは最後まで話し合ったシーンなんですよ。妹が飲み込んじゃう理由みたいなのをどうやったら自然にできるかなと。結局は頭で考えたエピソードになっちゃったのかなと。
●ちば先生
なるほどね。食べ物がなくてみんなが困っている世界で、ねずみが丸々太っている描写なんかは少し不自然だったね。でも、これだけ強いキャラクターを描ける力は大したもんだと思いますよ。背景がまだちょっと甘いなと思うけどね。
●モーニング編集長・島田
顔力は一番あったんじゃないですか? キャラクターを二人で描いたりするわけ?
●担当編集
キャラの作画ですが、ネームを切っていく中で自然と振り分けるそうです。
●ちば先生
へー。他にもたくさん娘たちが出てくるんだけど、みんな顔が違うんだよね。 大体自分の好みのタッチってのあるから普通は似通っちゃうんだけど、描き分けてるから凄いなと思ったんだよね。力のある方たちだと思います。成長が楽しみです。
 

『エビチャーハン』鈴ノ木ユウ(東京都・36歳)

●ちば先生
友達が笛を吹いちゃったのが、何故なのか理由がわかんなかったね。
●モーニング編集長・島田
サッカーの世界では、野次馬が相手を惑わすために笛を吹いちゃうっていうのは、よくあるんでしょ?
●事務局長・鯉渕
でも、主人公が吹かないのは謎だよね。
●担当編集
これは、決定的に吹く人を間違えて描いちゃってるんですよね。ルールを知らなくて気分が高揚して間違えて吹いたっていうならまだ成立するんですけど。サッカー部の少年が吹いているので、おかしくなってるんですよね。実話を基にしてあるんですが、漫画にするときのロジックが足りず、説明不足になっちゃってるんです。ただ、作者本人も間違いに気づいたんですが、直す時間がなくって。
●事務局長・鯉渕
この話、そこが残念なんだよなあ(苦笑)
●ちば先生
そういう意味では、非常に欠陥のある作品ではあるんです。だけど、この人の描く絵はとても好きだし、タイトルから何からとても味があると思いますよ。親に子供が、「どうしてラーメン屋はサッカーやっちゃダメなんだ」って聞くと、「祭日や日曜なんかに、応援に行かなきゃなんない」ってちゃんと描いてるじゃない。そこがよかったよね。
●モーニング編集長・島田
生活感のあるリアリティがありますよね。
●ちば先生
チャーハン炒める音も非常にうまいですよね。
●モーニング編集長・島田
エビチャーハン、食いたくなりますよね(笑)
●担当編集
じゃあ、笛のところはちょっと目をつむっていただいて……(笑)
●モーニング編集長・島田
目をつむるには、大きすぎるよ!! ただ、この作者、なかなか凄い顔力があるんだよね。
●ちば先生
お父さんもお母さんも先輩も、キチッと描き分けられてる。それらしい人間、その職業らしいキャラクターにキチッと描いてるから。あと、キャラクターもいいんだけど、一コマ一コマが、いい味のある絵になってますよね。泣き顔とか、デフォルメさせるのもうまいです。絵柄のわりにうるさくないし。校舎なんか歪んでるんだけど、上手いなあと思うよ。
 

『ソイル』根岸岳春(東京都・32歳)

●事務局長・鯉渕
農家に生まれた子供が宇宙開拓に夢を馳せるお話ですが。
●ちば先生
僕は好きでしたね。お話はすごくいいけど、少し絵柄が気になったね。最初の出だしの父親と畑を耕しているシーンは、こういう絵柄でいいと思うんだけど、宇宙などのシーンはリアル感のある絵が欲しかったかな。場面によって絵を描き分ける力があったら凄いなと思うね。
●事務局長・鯉渕
迫力という点で、この絵柄と合ってない感じがするところはありますよね。絵本みたいな感じになっちゃいますからね。
●担当編集
マンガを描いたのが今回で3回目の、元イラストレーターの方なんで……。
●ちば先生
いわゆるマンガチックな絵だね。それはそれで温もりあるいい線だと思うから、それは大事にしていった方がいいと思います。ただ、こういう話では損かなと思っちゃったね。ほんとうにこういう世界がありそうって思わせて欲しかったな。この人は投稿は初めて?
●担当編集
前回のちば賞に応募したんですが、二次で落ちてしまいました。今回は、発想もキャラもしっかり描けたかと思いますが……。
●ちば先生
ロボットが良かったね。最初は主人公をバカにしていたのに、手伝い出すじゃない。クワを使ったりしてさ。ただ、お話がストレートで、無駄がなさすぎると感じたんだよね。臨場感というか、こういう世界がありそうだなって読者を引き込むことが大事なんだけど、その点、絵柄といい、話の立て方といい、少し寓話的でおとぎ話のようになっちゃったのはもったいないかな。
 

『My Olivers』烏丸たま子(大阪府・21歳)

●事務局長・鯉渕
これは、ロボットと一生を共にしたおじいさんが、人生を振り返るお話ですが……。
●ちば先生
全体に温もりがある絵で、いい話ですよね。ただ、導入をスッと入りたいんだけど、ちょっとこれはネームが失敗しちゃったね。
●事務局長・鯉渕
最初パッと見たとき、ネームの多さにひるむんですよね。意外とスラスラと読めるんだけど。
●モーニング編集長・島田
ただ、この人のネームは多いけど、上手くもあると思うんですよ。俺もネーム読むの大嫌いだから、多いとすぐに読むの止めるんだけど、これは読みましたね。
●事務局長・鯉渕
それにしてもやっぱり多いと思う(笑)
●編集部員・A
人の一生を32枚でかくからネームが多くなってもしょうがないというか。
●編集部員一同
(笑)
●担当編集
作者は今、大学3年生で21歳です。これまでイラストとかは描いたことあるって言ってたんですけど、お話として描いたのはこれが一作目。ですので、セリフの多さとかふきだしが一箇所に固まってしまっていたりと、読みづらいところは多々あります。
●ちば先生
一作目なら大したもんだよ。
●担当編集
表情とか、感情が伝わってくる絵を描く人だなって気がします。
●ちば先生
人形がお兄ちゃんで、それが弟になって、息子になって、孫になってっていうね、すごく良い話ですよね。でも、近未来にした方がよかったかなって思うんだけど。ロボットだから。ある程度やっぱこういう話っていうのは、実際にあるかもしれないなっていうリアル感があった方がもっと面白かったなっと思うんですよ。
●モーニング編集長・島田
そうですね。しかし、背景はもう少ししっかりしないとね。
 

『ミクロマンの頃』冨永祥子(東京都・43歳)

●事務局長・鯉渕
特に、何があったというお話ではないんですが。
●ちば先生
この作者は女性ですよね。小さいときの自分の記憶を描いてるんじゃないかなあ。
●事務局長・鯉渕
非常に味のある絵ですよね。
●モーニング編集長・島田
そう、この人、絵が上手いんだよ。
●ちば先生
鉛筆を使ってるようにも見えるけど……。パソコンで描いてるのかな?
●担当編集
そうです。背景と人物を別に描いて、パソコンに取り込んで処理をしているらしいです。
●ちば先生
作品の中に、光や風を感じるよねえ。
●担当編集
新人賞では、背景が非常に上手く描けていても、人物が全然ダメという作品を多く目にします。そんな傾向の中にあって、この方は人物のデフォルメも高いレベルでできており、なかなかの才能だと思います。ストーリーは、ほとんどありませんけれど。
●ちば先生
この方が描かれてるのは、「詩」ですよね。
●担当編集
はい。ですので今後は、ある程度のドラマ性の追求が、課題になってくると思います。単なる「詩」の連作では、広範な読者の支持は望めないので。
●モーニング編集長・島田
この人、上手いなあと思うし、凄くデッサン力がありますよね。
●ちば先生
建物なんかもフリーハンドで描いてると思うんだけど、しっかりしてるよね。 細かく端々まで神経が行き届いてるのに、サラサラ描いている。これからどういう作家を目指すのかわからないけれど、私はとても才能がある人だと思います。いわゆるキャラクターで大ヒットを飛ばすような作品っていうものよりは、「あの話よかったなあ」っていうような短編を何本か描ける人に、なれるんじゃないかな。
 

『RIDER HEARTS』原点火(神奈川県)

●事務局長・鯉渕
何をやってもダメな男が、バイクに目覚めて前向きになっていくというお話ですが……。
●ちば先生
凄くシャープな線を描く人ですね、この人は。
●事務局長・鯉渕
バイクのリアルさは大したもんですね。
●ちば先生
でも、キャラクターにあんま温もりがないのが残念。あと、もう少し手を抜いて描いて欲しいというか……。
●事務局長・鯉渕
そうですよね。絵は上手いんだけど、読む方が疲れちゃうんですよね。どこも全部同じテンションでダーッと描き込みがしてあって。なんと言うか、視線を休めるところがないんですよね。
●モーニング編集長・島田
描いてるのは女の人ですか?
●事務局長・鯉渕
女性です。バイクやヒーローものを描いていきたいそうです。
●ちば先生
背景なんかはもの凄く力を入れてるんだけど、人間ももう少し柔らかく描けるといいと思いますね。人間もちょっと機械的かな。タッチの癖なんでしょうけどね。
●編集部員・B
それは先生のおっしゃる、「適度に手を抜く」ということですか? たとえば背景はもっと描き込まず、抜いたコマも描けとか……。
●ちば先生
至近距離で描いてるとね、ついつい漫画家というのは空白を残すことを恐れてしまうんですよ。でも全部を等しく描いちゃうと、すべてにピントが合っちゃってとても読みにくい。その辺りを意識して描いてみると、読む方も読みやすいし、作品ももっと良くなると思うよ。
 

『夜明けの三角形』東裏友希(東京都・25歳)

●ちば先生
この絵は記憶にありますねえ。何だっけ? ああ、思い出した! 前回も最終選考に残った人だよね。
●事務局長・鯉渕
前回のものよりか、だいぶ読みやすくなったと思うんですけど。でも、一人でこのミュージシャンの奴がぶち切れて当たり散らしてるのが、独りよがりな感じがしましたね。何というか、ただ幼いだけに見えちゃう。
●ちば先生
他の仲間やおばあちゃん達は、それぞれ皆、大人なんですよね。この主人公の男の子だけが一人でイライライライラしてて。ああ、コイツも苦しんでるんだなっていうのが、何故かわからないんだよね。
●事務局長・鯉渕
読者としては、置いてけぼりにされちゃった感じはありますよね。そこがもったいない。ただ彼女は、ここのところ、モーニングの新人賞に毎回投稿していて、凄く一生懸命やっている人です。よく編集部に来てますね。
●ちば先生
なるほど。絵もとても上手だし、これからも頑張ってほしいですね。
 

『非日常的な何気ない話』江口夏実(神奈川県・26歳)

●事務局長・鯉渕
コメディ作品ですね。
●ちば先生
絵が上手いですよね。雰囲気もあるしね。背景や人物も、すごくよく描いてる。でも好き嫌いは分れそうな作風だよね。僕は、あまりよくわからなかったかな。
●事務局長・鯉渕
編集部でも評価は分かれました。
●担当編集
そう言われてしまうと……。
●編集部員一同
(笑)
●モーニング編集長・島田
全部で3本ぐらいあったんだっけ?
●事務局長・鯉渕
そうです。7枚、7枚、15枚です。
●モーニング編集長・島田
ギャグの感覚が合う合わないっていうのは仕方ないと思いますけど、1本目の「鬼灯」ってキャラクターは良くできてたんじゃないでしょうか?
●事務局長・鯉渕
サタンを地獄に案内するって話ですよね。あれが一番面白かったですね。
●モーニング編集長・島田
わかりやすいキャラクターでしょ。上手く転がしていければ、このキャラクターは立って行くんじゃないの?
●担当編集
僕もそう思います。今このキャラクターで別の話を描いてもらってるんですよ。
●モーニング編集長・島田
キャラの構築が一番できてたと思うよ。他の話と比べて。
●ちば先生
ギャグとしてはちょっと私は上手く理解できなかったんですけど、才能はあると思います。是非頑張ってください。
 

『となりの国』柴谷ケン(東京都・21歳)

●事務局長・鯉渕
アイディアは面白かったですよね。
●担当編集
まだ21歳で、漫画を描き始めて2年足らずというところなんですが。アイディアはたくさん出てきてるんだけど、それをちゃんと練らないでスッと描いちゃってるんだと思うんです。一回考えてから、物語として練り上げていけば、もっともっといいものが描ける人だと思います。
●ちば先生
場面によって、これはギャグマンガなのかな、っていうところもあるし。ちょっと中途半端になっちゃってるね。
●担当編集
ギャグも入れたかったんだと思うんですよね。とにかく全部やりたいんだけど、それがまだ少し整理し切れていないんです。
●事務局長・鯉渕
そうですね。アイディア一発っていう感じがして、登場人物がまだキャラクターになってない。強く生きるんだって前向きに思ってたとしても、感情移入できなくて。そこがちょっと残念だったという気がしますね。
●モーニング編集長・島田
何で「スの国」と「サの国」なの? 何かいわれがあるの?
●編集部員・B
「死(し)」の前後ってことじゃないですかね。
●編集部員一同
おお!! 本当だ!
●ちば先生
そこも含めておもしろいね。
●モーニング編集長・島田
でも、この話が死後の世界を描いてるって、すっかり気付かなかったな。
●事務局長・鯉渕
僕も全然気がつかなかったですね。騙されてた。やっぱり、アイディア含めて秀逸ですよね。
 

『ポートレート』羽賀翔一(茨城県・23歳)

●ちば先生
最後の社長のニッコリ笑っている絵がいいですねえ。でも、お話としては少し意味がわかり辛いんだよね……。何故、自分の銅像を作りたいのか? 理由はあるんだろうけど、ちょっとその辺がわかり辛かったですね。この人はどういう人なんですか?
●担当編集
大学を卒業し就職も決まっていたのに、全部断って漫画家を目指しているそうです。
●ちば先生
冒険しちゃったねえ(笑)
●モーニング編集長・島田
でも凄い熱心でね。いつも編集部にいるもんね。毎日来て。この人は、前回のMANGA OPENで賞を獲ってるんですよね。それもちょっと不思議な話で……。
●事務局長・鯉渕
観念的な話ではありますよね。
●モーニング編集長・島田
基本的には日常的な話なんですけど。ただ、誰かが突然、象を飼ってたりカバを飼ってたり、何故か銅像を作ってたりですね、そういうのが一種の語り味なんですよ。寓話的な語り口と言いますか。
●ちば先生
細かく、「何故? これはどういう意味なのか?」って問い詰めちゃいけないんだね。
●事務局長・鯉渕
社長が名前を何度も間違えているのもよくわかんないしね(笑)
●担当編集
でも、心理ネームなどで「こう思っている」みたいなことを伝えることは、彼の魅力かなと思っていて。
●ちば先生
読んでいて、迷わないですよ。スーッと読める。だからそれは物凄い力だと思うのね。だいたい、前に戻って「えーっと、このキャラクターは……」っていうようなことをやるんだけど、全然迷わない。
●担当編集
心理ネームを極力使わずキャラの会話だけでも言いたいことが伝わる作品も、作ることができるようになって欲しいと思っています。
●ちば先生
さらに言えば、会話もなくてもいいかもね。できるだけ、絵だけで心理状態を表せるといいよね。仕草とか。そういうことを心がけるということが大事なんじゃないかなと思います。
 

『僕が金魚だった頃』はづき満(宮城県・29歳)

●事務局長・鯉渕
主人公がぬいぐるみになったり虫みたいになったりと、どんどん変わっていっちゃうというシュールな作品でしたけど。
●ちば先生
目が覚めたら鳥になっていたとか、こういう発想って結構あるんだけど、それをうまく絵にして作品にしたと思います。最後の方は人間関係が複雑に絡んじゃって、少し読みにくくなっちゃったかなと感じましたが。その辺が惜しいなって思ったんだけど。この人の絵は見たことあるんだけど、何だっけ。
●事務局長・鯉渕
前に一回、介護をする奥さんの話を投稿していたと思います。旦那が倒れちゃってっていうような……。
●モーニング編集長・島田
ホラーっぽいやつでしょ?
●担当編集
前回の作品もそうですが、今回も不思議な話ですよね。輪廻をテーマにしている感じで。他の作品もそうですが、普通の人にはない着想をする方だと思います。
●ちば先生
キャラクターは明るいし、コマ割りなんかも非常に手馴れている。
●担当編集
本当に何が描きたいのかってことを対話で掘り出して、今度はきちんとまとまる話を作りたいと思います。
 

『五年三組の死体』藤沢萌(東京都・23歳)

●ちば先生
こういう展開になるとは思わなかった。最初は犯人は先生なんじゃないかって思ったりなんかして。先生の服が少し汚れてたりするしね。ちょっと設定に無理があるなという気がしたけど、演出は上手い。見開きを上手に使ったりね。
●担当編集
まさに、「この先生が殺したんじゃないか」って思ってもらおうとして描いていたそうです。
●事務局長・鯉渕
何て言うのか、雰囲気が凄い明るいから、死体があるのに嫌な話になってないよね。
●ちば先生
この人は何回目かの応募ですか?
●担当編集
うちには初めてですが、他の雑誌でアシスタントをしていて、担当さんもいるそうです。増刊などにも数回載っているそうです。
●ちば先生
ちゃんとキャラクターの描き分けができてるよね。
●モーニング編集長・島田
これだけ登場人物の多い話を描いて全然混乱させないって、めちゃくちゃ上手いですね。極端に顔を変えてるわけじゃないし。それって新人レベルだと相当なことだという気がするんだけど。
●ちば先生
漫画っていうのは本当にね、わかりやすく読みやすくキャラクターを描きわけるってのはとっても難しいんですよ。みんなそれぞれ癖があるからね。髪型と服装を変えたりはできるけど、骨格なんかはマネキンみたいに全部一緒になっちゃうもんです。でも、そのあたりはシルエットだけでも見分けられるようなキャラクターに描き上げてるし。アシスタントの仕事を通して非常にいい勉強をしてるんでしょうね。
 

『ふたり相撲』水上暁(神奈川県・22歳)

●モーニング編集長・島田
この人、相撲漫画ばっかり描いてるんだよね(笑)
●事務局長・鯉渕
そうなんですよね。前回の応募作からかなり絵柄は変わってますけど。前は、筆で描いたような絵でしたね。
●ちば先生
ああ、彼か!
●事務局長・鯉渕
今まで3回応募していて、全部相撲マンガなんです。
●ちば先生
この人、本当に相撲が好きなんだと思うんだけど、親方がちょっと不自然だよね。
●事務局長・鯉渕
そうなんですよね。主人公に対して親方が厳しく接するんじゃなく、腫れ物に触るみたいに接してるんですよね。相撲のシーンだけだったら、前の方がよかったような気がしますけどねえ。前のは、確かに荒い絵だったけど、勢いがあった気がするんですよね。
●ちば先生
ちょっと、コマが小さくなっちゃったのかなあ。作者自身の迷いが、コマ割りや構図に出ちゃったのかもね。お話は、親子の確執を上手に描いたいい話だったと思うんですよね。親父のことが大っ嫌いだけど、愛されたい認められたいという息子の気持ちが上手く出てるんでね。
●編集部員・C
どうしても絵がね、相撲取りに見えないんですよ。体温上がって本気で相撲とってる感じが伝わってこない。まあ、こういう相撲取りもいるんでしょうけど。バチバチぶつかってる感じがもっと伝わってくるとよかったなあ。
 

『主に主夫』米田達郎(東京都・33歳)

●ちば先生
これは私小説というか、自分の体験をそのまま描いているのかな。
●担当編集
デフォルメはされてますが。そうですね。
●ちば先生
フィギュア作ってるだけあって、デッサンなんかは凄いしっかりしてるね。自転車で、夜走るところを見開きで描いていたけど、そこもとっても迫力のある絵を描いてます。
●担当編集
リアリティがある日常を、上手く描いているなあと思います。生活スタイルはほぼ実話で、奥さんが働いていて本人は家でもやもやしていて……。
●モーニング編集長・島田
主人公にリアリティあって魅力的だと思うね。でかい男って描くの難しいんだよね。デカイ男と小さい女を同じ画面に収めるのって、凄い技術があると思うよ。
●担当編集
かなり毛深く描いてるんですよ。そこもデフォルメしてて(笑)
●モーニング編集長・島田
背景、少しごちゃごちゃしてない?
●担当編集
背景はもっと薄くしたいんですよね。
●モーニング編集長・島田
ちょっと背景全体がギチッとしてるよね。
●事務局長・鯉渕
背景と人物が全部同じくらいの太さの線だから、見づらいと思うんだよね。そこにメリハリが付いてると違うんだろうけど。
●モーニング編集長・島田
そうだね。そこは工夫した方がよかったかもね。

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