1次選考会の落選全作品を全講評!

ちばてつや賞一般部門の1次選考は、ちば賞事務局と編集部員の合計10名程度により、応募された全作品の選考を行います。2次選考に残したたいと強く思う編集者が一人でもいる作品は、すべて通過します。このページでは、残念ながら2次に進めなかった全作品に対し、個別に選考委員からの講評を掲載しています。今後のチャレンジの参考にしてください。

 

『リポート』唐木ユウイチ(奈良県・?歳)

【ストーリー】

いつもの朝のワイドショー、辰巳ひろしはいつものように司会進行を務めていた。その時、現場からリポートが入る。死刑囚・銭元勝の刑が執行されたのだ。当時世間を騒がせたストーカー殺人事件、証拠も充分あり、誰もが疑う余地のない事件だと思われたが……唯一、辰巳ひろしだけは違っていた。

【講評】

何度か読み返したが、最後の謎解きである『双子座』=『双子』というオチが確証をもって読めなかったので、後味が悪かった。もっと丁寧に読者を意識した構成になっているとミステリー仕立ての物語がいきてくると思う。また、絵が古くベタッとしていて読み辛い印象を与えてしまうのがもったいなかった。

 

『寵童』美浦さんご(神奈川県・?歳)

【ストーリー】

第11代将軍・徳川家斉の嫡男が亡くなる。暗殺の可能性を消すことはできなかった。なぜ家斉本人を狙わないのか。それは「誰が世継ぎを産むか」が重要だから。そして御台所を狙った暗殺は実行され……。

【講評】

絵柄が繊細かつきれいなので読むことはできた。だが、どのキャラクターも表情が乏しく、臨場感もあまり感じられなかった。おそらく、瞳を「塗りつぶす」もしくは「白」をベースにして描いているからでは。力はあると思うので、色々な作家さんの絵を研究して、キャラの表情に幅を持たす工夫を心掛けてほしい。ストーリー自体は新しさ等感じなかったので、画力と同時に物語を作る力も身に付ける努力をしてほしい。

 

『TENTEN!!』西谷道弘(広島県・36歳)

【ストーリー】

大きいスイカ玉らしきものはボーリングの玉だった。

【講評】

上記のようにあらすじを書いたが、実際には主人公が何を考えているかが分からないため、作者の意図を捉えられているか不明。作者の頭の中ではきちんとしたオチがついているのだろうが、説明が不十分なため読者にはどんな話が展開されているかさえも読み取ることが難しい。もっとネームでも絵でも状況説明を加えることが必要なのでは。また、絵は鳥山明さんの影響を受けている様に感じるが、加えて作者自身の武器となるものを提示してもらわないとだたマネしているという評価で終わってしまう。

 

『路』ほか1篇 飯田寅彦(埼玉県・43歳)

【ストーリー】

主人公はボクサー。勝利をおさめた試合の帰り道、色々な思い出が脳裏に浮かぶ──。

【講評】

『路』はうまくまとまってはいるのだがもう少しエピソードや設定に捻りがほしい。現状だとあっさりしすぎていて、他の作品に埋もれてしまう。逆にもう1つの作品は設定や作品内のルールにしばられすぎて、どこにおもしろさを感じてよいのか分からなかった。次回作はバランスを大切にしつつ臨んでほしい。

 

『変身のある風景』ほか2篇 勇利壇(北海道・51歳)

【ストーリー】

ある日、主人公が目覚めると足が石化していた。悲しむ両親だったが、同時に超能力も得ていたのだった。この現象を楽しむ主人公だったが、病は人々に伝染し、やがて地球から人間の姿は消失した。

【講評】

主人公の石化をきっかけに人々が人間以外の姿に変わるというシュールな展開。話としてはそこで終わりになるのではなく、その設定があって作者はどんな物語を作るのかという、その先が見たかった。今のままでは物足りない印象で終わってしまう。また、絵やコマ割に古さを感じてしまうので、意識的に新たな方法を取り入れることに挑戦してみては。

 

『飛梅』岩本友紀(秋田県・25歳)

【ストーリー】

太宰府天満宮で受験合格を両親とともに願ったジュン。無事、高校には合格したが、両親は離婚してしまう。こうして、祖父母の家に下宿することになった。落ち込む彼女の前に「古香」という紅梅の妖怪が姿を現す。「人間はなぜ春の訪れを待ちわびるのか」という問いに答えられずにいるジュンを古香はある時代へと引きずりこむ。

【講評】

人々にとって春という季節は何を示すのか、というテーマに、菅原道真の時代の話を絡める等して読者を楽しませつつ挑戦した姿勢は評価できる。だが、それぞれのキャラクターが抱える心の闇が何となくの雰囲気で解決へと動いてしまっているため、読者は心からの納得が得られない。大変な作業ではあるが掲げたテーマに自分なりの答えを見つけて描いて欲しい。また、話の割に94ページとかなりの分量だったことが気になった。この内容ならばせめて30ページ前後で充分な気がする。今後は構成にも留意しつつ話を作ってほしい。

 

『タビュールの丘』大槻圭(福島県・25歳)

【ストーリー】

現実世界で生きていくことに疲れた人々が集う世界「タビュール」。死にたいと願う主人公はこの謎の世界に迷い込む。そこで出会った医者に「死ぬのも自由、生きるのも自由」と言われた主人公は、崖へ向かう……。

【講評】

死にたいと願っている主人公が、初めて死ぬこと止められなかった時、医者の告げた「だが、生きることもあなたの自由だ」というテーマともとれるネームがいきてくる。だが、それがまったく読者に伝わらない。理由は画力のなさ。一にも二にもまずは画力の向上をはかって欲しい。このままでは読者の読むという気持ちさえも削いでしまう。

 

『Dear おふくろさま』田村努(神奈川県・40歳)

【ストーリー】

急病により手術をした主人公。看病のために田舎から駆けつけた母。こうして、久々の母子2人きりの時間を過ごすことになった。

【講評】

ほのぼのとした物語に対して、男らしい絵柄がマッチしていなかったのが残念。ただ、背景等の描き込みは丁寧で評価できる。母親のキャラクターが「マイペース」「自由」という設定にするために入れたエピソード(主人公が暮らす部屋の家具が汚いからといって勝手に捨ててしまう等)は、やり過ぎな感じがした。読者の許容を超えていて、母に対して同情することもできなくなってしまった。そのことで後半の主人公とのやりとりがあまり意味のないものになってしまっていてもったいない。

 

『テツイリ』蒼井崇司(埼玉県・34歳)

【ストーリー】

町中で倒れ病院に運ばれた理沙。彼女はパニック障害とうつを併発していた。それを知らずにいた彼氏の光司はなにも言わなかった彼女にショックを受ける。支えることさえできずにいる光司はある日突然姿を消す。

【講評】

自分の進路を見いだせずにいた光司と、理沙の病気をリンクさせて物語を展開させていこうという試みは良いのだが、それがうまくいっていないので、何となくの雰囲気で強引にまとめてしまっている。その処理を丁寧に行っていけばもっと充実した内容になると思う。また、トーンを極力使わず手で効果を入れているので、読み辛さを感じた。軽いテンションもシリアスなノリで描かれているので表情と雰囲気が一致せず違和感を感じた。

 

『明日の想い出』ほか1篇 ななきち(神奈川県・50歳)

【ストーリー】

母娘それぞれのあられもない姿をムービーにおさめている主人公の太田。なぜ撮るのか、その依頼主は誰なのか。

【講評】

『明日の想い出』に関しては、作者の伝えたいことが何なのかとても分かりにくく雑然とした印象。だがもう1つの作品は、ラストにそれぞれの正体が明かされていく驚きが用意されていて個人的には楽しみながら読むことができた。どちらにも共通して言えるのは絵の粗さ。独特の味がある、熱量がある、荒削りだが若々しさがあるというようなプラスの評価にはつながらないので、せっかくの物語が台無しになってしまう。話を作る力はあると思うので同時に画力の向上をはかって欲しい。

 

『気配』橋本一雄(福岡県・35歳)

【ストーリー】

主人公の「俺」にだけ見える謎の人物「シシコケシ」。奴は俺を執拗に追いかけてくる。その正体とは……。

【講評】

ある意味、味のある絵だったので、ホラーが若干入っている内容には効果的な絵柄だった。だが、「主人公は超能力者で妄想を現実にできる」というオチだと、かなり強引でご都合主義的すぎるので読者は納得することができない。作者がストーリーを作ることを放棄しているとさえ感じる。読者が驚くような「シシコケシ」の正体を提示してほしかった。

 

『死あわせ者』居酒屋まつもと(大阪府・55歳)

【ストーリー】

殺された兄貴と吾助が幽霊になって、生きている人間や死神などをからかいつつ展開する4コマ。

【講評】

ヤクザ者だったけれども心根は優しい兄貴と吾助のキャラクターがきちんと読者に伝わるようにできていた点は評価したい。けれども4コマの内容は、オチが弱かったり、逆に強引な箇所がいくつもあり、引きつけられることがなかった。社会風刺もあれば、特に内容のないものもあり、まとまりがなかったのでもっと作者らしい色づけを意識的に行っていくことが重要なのでは。

 

『未来革命』春野桜子(福岡県・33歳)

【ストーリー】

主人公・春川はバイト先に時々来る女性客・千葉朝子が気になる。ある時、彼女が同僚らしき人たちと言い争っているところへ通りかかってしまう。何を揉めているのか、少しでも力になりたい春川はある言葉を彼女へと贈る。

【講評】

最後まで読み進めなければ千葉さんが何で揉めているのかということが分からないので、主人公が贈ることばのありがたみを読者は感じることができない。どんな問題を抱えているのかを共有してこそ、その言葉は効果を増すと思う。また、どのキャラクターも表情が乏しく、喜怒哀楽がうまく伝わってこない。目の描き方がほぼ同じなことが大きな原因。とても単調な物語という印象を受ける。今後は画力の向上を第一に頑張ってほしい。

 

『無題』田中恵(福岡県・29歳)

【ストーリー】

一番働いているのに報われない秒針は不満を抱えていた。自分が一回りするまで休んでいる時針に、分針は苛立っていた。

【講評】

時計の針を擬人化し、それぞれの労働格差を描いたシュールな作品。秒針は分針の、分針は時針の60倍働かなくてはならないという、面白さに気づいたところまではいい。でもそれをそのまま時計そのものを使って描いてしまっては、面白くない。「たしかにそうだね」という感想で終わってしまう。ならば、中途半端に擬人化するよりも、いっそのことそのエッセンスを、人間同士の話に落とし込んで描いてほしかった。「人間社会のこういうところって、時計みたいだね」って話のほうが読者は惹かれると思います。何か面白い出来事や関係性に気がついたら、「人間の世界では、どうだろう?」と考えてみるのが第一歩。

 

『ジェットランサー』松本智士(大阪府・?歳)

【ストーリー】

かつて一世を風靡した特撮ヒーロー「ジェットランサー」を演じたアクションスター横手。やくざに落ちぶれた彼が、再び黒い衣装に身を包むとき、悲しみの鉄拳が闇を切り裂く。

【講評】

裏社会に落ちぶれた男が、再びヒーローになるという設定は面白いと思った。この作品が、ある程度の起承転結も取れているのに2次選考に進めなかったのは、キャラクター同士の人間関係をうまく描ききれていなかったから。再びジェットランサーと変わる決意をした主人公と、その動機となった売人の関係をもっとしっかりと描いてほしかった。それがないために、物語の一番の転換点となるはずの、主人公の怒りのスイッチが入る瞬間に説得力がなかったのだ。読みどころはあるし、いいせりふもあったので、次回はその辺りに気をつけて描いてほしい。

 

『POLICE OFFICER'S BACKGROUND』髙岡慎治(兵庫県・25歳)

【ストーリー】

射撃に絶対的な自信をもつ刑事・向坂。しかし彼の過去には、ある悔やみきれない過ちがあった。

【講評】

どんな過去を持っているかという部分が、物語自体に大きく影響を及ぼす形で作られているだけに、その過去のエピソードに何の工夫も見られなかったことが残念だった。さらに「過去」が考えられていなかったために、主人公のキャラクターもつまらないものになってしまっていた。なぜなら「過去」は、現在のキャラクターを作る大切なエッセンスでもあるからだ。こんな「過去」を持っている人は、今どんな人間になっているだろう? この主人公がこんな考えをする人間になった裏には、過去のどんな出来事が影響しているのだろう? といっぱい想像して、面白いものを探してみてください。身近な人をモデルにして訓練するのもいいでしょう。

 

『無題』杉山寛樹(千葉県・24歳)

【ストーリー】

4コマ漫画

【講評】

4コマでも連作として応募するのであれば、作品なりのテーマが必要です。まずはタイトルを考えてみましょう。主人公に名前をつけてみましょう。そうして初めてキャラクターに愛着が生まれ、物語に楽しさが生まれていきます。今回の作品は、とても無味無臭な印象でした。ネタは今のようにベタなもので構わないと思います。それよりもまずは「このキャラクターだったら、この場面どうするだろう。どういう状況にこのキャラを放り込んだら面白いだろう」といっぱい悩んでください。

 

『アフロディーティーの告白』ほか1篇 小金丸毒まむし(東京都・36歳)

【ストーリー】

芸能人として成功を収めはじめた春乃彩華。復縁を迫る元カレと、拒む彩華の攻防。

【講評】

グロテスクな描写の連続に読みながら精神的に疲れてしまった。この作品の一番大きなギャグである食べ物ネタが、“気持ち悪さ"の一点のみで引っ張られているために、笑えない人は最後まで笑えない。とことん気持ち悪くしたいなら、絵柄が中途半端。もっと気持ち悪さを追求するか、思い切って人物はとびきりライトに描くなどの工夫が欲しかった。このままでは作品に入り込めない読者がほとんどだろう。

 

『無題』野村一永(東京都・23歳)

【ストーリー】

依頼により、世界的テロリストを殺害した殺し屋。自分の人生に絶望していた彼は、そのテロリストの死亡が大きくニュースに取り上げられたことで、人生に希望を見つける。

【講評】

全編を通じて大ゴマを大胆に駆使し、主人公の感情を演出しているのだが、残念なことにどの表現もキャラクターの薄っぺらさを助長させる結果になってしまっている。オリジナルなものを作ろうという意識が足りないために、すべてが借りてきたようなせりふとモノローグの連続に感じられた。もっと主人公を掘り下げて、自分だけのキャラクターを作ってください。

 

『アクビなふたり』木村喜一(岩手県・?歳)

【ストーリー】

人の顔をした2匹の海中生物の会話。

【講評】

ほとんど同じ構図、コマ割で構成された8コマ漫画の連作(といっていいでしょうか?)。2匹が全くと言っていいほど動かない作品なので、どうしても絵の動きで笑わせることは半ば放棄している印象を受けました。そのせいで笑いどころが限定されてしまうため、どれも強引な落とし方になってしまっています。正直途中から読む気が失せてしまいました。自分の感じている面白さを、どう演出して伝えるのがいいか、しっかり悩んでください。

 

『狂人日記』ほか1篇 藤原香穂子(岡山県・46歳)

【ストーリー】

男にふられた女が失意の中帰宅する様を、観念的に描いた作品。

【講評】

表題作は、ストーリーを排除した作品のため、評価をするのが難しかった。男性にふられるシーンで始まり、その後は、女性が不気味な世界に入り込んでいく様をイメージ化したカットが続くという構成なのだが、そもそも女性がどれほどの想いをこの男性に持っていたのかがわからないため、ふられたダメージの大きさが計れない(男性が女性にかけた言葉は「君のことは愛していない」の一言だけ)。連続するイメージカットで、その衝撃を表現しているかもしれないが、冒頭で何か心に引っかかるものがないと、絵に特別な力がないだけに、作品世界に入っていけない。大胆な作風の変化が必要だろう。

 

『ハートフルファンタジー P.S.F.F』MASAMI(東京都・?歳)

【ストーリー】

小人の兄妹が、今年も田植えの手伝いにやってきた。道中での素敵な出会い。

【講評】

キャラクターへの愛着が感じられ、好感をもって読ませてもらった。画面の隅々まで描きこまれた絵からは、情熱も感じられた。しかしこれといった物語はなく、キャラクターたちのせりふも状況を表すだけものに終始してしまっていて、全体的に目新しい印象を受けなかった。やはり物語としては、すべてがうまく好転しすぎで、読み手を楽しませる演出に決定的に欠けていたことが残念だった。

 

『ALICE』手石老(鹿児島県・24歳)

【ストーリー】

人間に紛れ、普通の人間として生きる、宇宙人たち。彼らの存在に気づいてしまった少年が、不思議な世界に連れて行かれて……。

【講評】

とにかく自分らしさを出そうという姿勢が、随所に見られた作品だった。コマの端々まで筆が入れられ、コマ組み、キャラの描き方から、描き文字ひとつにまでオリジナリティが感じられる。しかし残念ながらとても読みにくかった。おそらく経験不足からくるものだと思うが、各ページのコマ数が多すぎる。そのうえ、コマごと、フキダシごとのせりふやモノローグも多くなってしまっているため、文字の多さに疲れてしまう。原稿に入る前に、ネームを今まで以上にしっかりと練っていく必要があるでしょう。せっかく高い独創性をもっているのだから、それをただ並べてくだけでなく、効果的に使えるように訓練していって欲しい。

 

『GAME』本田シグマ(栃木県・34歳)

【ストーリー】

夜、奇妙な姿をした男と戦う白髪の男。

【講評】

ストーリーらしきストーリーがなく、ほぼ全編アクションシーンという作品のため、感想をもつのが難しい作品だった。冒頭には意味のありそうなプロローグが入っているのだが、作品の中でそれが効果的に作用しているとは言いがたい。アクションシーンに関しては、キャラクターの柔らかい動きがうまく描けていて迫力もある。とはいえ、登場人物同士の関係が全くわからないので、読者としてはただ眺めることしかできない。絵の描ける人だと思うので、このアクションシーンがもっと楽しく、わくわくして読むことができるような物語を考えてみてください。この状態では、まだ漫画として成立しているとはいえないのではないでしょうか。

 

『G・NPR』石谷章紘(北海道・25歳)

【ストーリー】

自分の記憶でないはずの記憶がある。その記憶に登場する自分は、本当に自分なのだろうか。

【講評】

面白くなりそうな場面が随所にあるのだが、あらゆる設定が説明不足まま進んでいくため、よくわからなかった。主人公たちが生きているのはどのような世界なのか、彼らは何のために修行をしているのかなど、物語を展開していく上で、読者には最低限知っていてもらわなくてはならない部分の説明を排除しすぎてしまっていたからだろう。読み手を常に意識して描いていきましょう。

 

『キャビンアテンダントSKY!』きのもとイチゾウ(兵庫県・37歳)

【ストーリー】

CAの小夜子が、仕事帰りの電車の中で出会ったのは、コンビニで売られる大好きな焼き鳥の開発者だった。

【講評】

とても読みやすくコマ割りされているお陰で、すんなりとあっという間に読むことができた。キャラも、見た目はどれも地味で特徴にも欠けるものだったが、好人物がにじみ出ているような親しみ易さがあってよかった。ストーリーも起承転結があり、ラストまで一応の形をとることはできていた。しかし、小夜子がCAを目指したきっかけなど、それぞれの展開や設定にはツッコミどころが多くて、個人的には納得できない設定も多かった。作品に説得力をもたせるには、借り物ではない、自分自身の言葉やメッセージを一生懸命考えてみることが一番の近道ではないかと思います。

 

『BASER MATTER』史島六江(東京都・?歳)

【ストーリー】

クリスマスイベントの準備に追われる、社長の娘と婚約中の山室。彼の元に、昔の彼女が自殺を図ったとの連絡が入る。

【講評】

彼女を捨て上司の娘と婚約するという、とてもありふれた物語なだけに、キャラクターの味気の無さが、よけいに際立って感じられた。設定もキャラクターもありがちで、目を見張るような演出もないとなると、当然個性的な投稿作の中では目立たないものになってしまう。少しでもオリジナリティを作っていく意識を持ってほしかった。

 

『ブルーで美しい部屋』水木香(愛知県・33歳)

【ストーリー】

主人公のたかしはとにかくキレイ好きで、生活感がなくお洒落な部屋に住んでいる。かわいい彼女もいて、一見、順風満帆な人生をおくっているようにみえるが、じつは暗い過去があって……。

【講評】

全体的に話として面白かった。ただ、1話1話の展開がゆるやかなので、なかなかストーリーが先に進まない感じがもどかしかった。連載を持ちたいと考えているならば、毎話に“引き"を作るよう意識したほうが良いだろう。また、登場人物の服装や生活スタイルも少し古臭い。時代性を取り入れる工夫をしてみては。

 

『デ○ツイン・グリマン ヒマサ』イグアナ(神奈川県・?歳)

【ストーリー】

この世界には「私」しか存在していない。「私」の集合体「私達」が織り成す4コマギャグ漫画。

【講評】

「私」以外にも、「賃金」には1コマだけ別の、パンダ等のキャラが出てきています。これによって、この作品世界を構築する“ルール"が見えなくなりました。そもそも、この4コマの狙い(笑いのポイント)が非常にわかりづらい。画力もまだまだ。「私」ですべてを構成するなら、どの角度から見ても同じ「私」の絵を描けなければなりません。細かい背景を描けないのか、描かないのかも、この作品だけでは判断しがたいですが、全体の印象で言えば、背景ももっと丁寧に描いて欲しかった。

 

『僕たちの犯罪』H・A(京都府・?歳)

【ストーリー】

同じ街に住む同じ学年の小学生達が、1つ年上の男児を殺害。共犯者全員で遺体をカバンに放り込み、土に埋めて隠していた。だが、ある日、その遺体はカバンの中から消えていて……。

【講評】

遺体を入れたカバンは誰がどこから持ってきたのか。年上の男児に襲われたとき、あんなに大きな石や人を殺せるほど固い棒が転がっているのは都合が良すぎるのではないか。いくつか疑問が残る作品だった。全体的には短くまとめているし、読めるお話だと思う。が、とにかく後味が悪い。絵は非常に丁寧に描かれていたが、もう少し現代的な要素を取り入れた独自の絵柄を作ってほしい。

 

『カジノロワイヤル』金堂理(神奈川県・28歳)

【ストーリー】

とあるヤクザの事務所に所属する梶野。言うことをなかなか聞かない彼は、組長に邪魔者と見なされ、自分の知らないところで殺害を企てられるのだが……。

【講評】

個人的には楽しめる作品でした。絵の構図も良い。ただ、画力的にはまだまだ。表情に乏しいのは、「目」が描けていないから。表情をもっと描けるようになれば、さらに作品の魅力が増すと思います。頑張ってください。

 

『エリーゼのために〜懺悔〜』ほか1篇 江崎ゆり(千葉県・42歳)

【ストーリー】

愛人の娘として育ってきた主人公が、本妻が喪主をつとめる父の葬儀に乗り込む。最初はおとなしく黙っていた主人公だが、本妻に罵られ突然、周囲をアッと驚かす行動に出て……。

【講評】

主人公が衣服を脱ぐに至るまでの心境が描かれておらず、あまりにも唐突な印象を受けた。本来ならば恨んでもおかしくない父親の存在を、何故「誇り」に思うのか。“情念"のこもったお話であるだけに、その部分を深く描かないと成立しないのでは。また、コマによって登場人物の顔が変わりすぎている。同一人物とわかるよう描く努力をしてください。4コマギャグのほうは、絵柄の古さが気になった。ギャグとしても、オチが弱い。起承転結をつけることを意識してください。

 

『ツインバズーカ』石友亭もぐら(東京都・24歳)

【ストーリー】

漫画内漫才漫画(漫画の中で漫才を披露している作品)。

【講評】

漫才を漫画でやる必然性を感じなかった。「漫画でしかできないこと」を意識した作品作りを心がけてください。また、絵柄はかわいらしいですが、画力としてはまだまだ。背景も人物も、一層、丁寧に描いてください。

 

『算盤一家』青野留守家(東京都・35歳)

【ストーリー】

肌身離さず算盤を持ち歩きバクチなどで生計をたてる主人公の珠算太は、一人旅を続けていた。ある日、物の怪退治の役を買ってでた算太の前に、巨大な恐竜が現れて……。

【講評】

1コマ1コマを非常に丁寧に描いており、お話自体短くまとめているのでとても読みやすい作品だった。だが、読み終わったあとに何も残らない。作者が描きたいものの本質が、最後の最後まで見えてこなかったのが残念だった。また、恐竜の絵柄がいまいちインパクトに欠けた。“物の怪"と呼ばれるほどの恐ろしい雰囲気を持たせた、迫力あるキャラが見たかった。力はある人だと思うので、今後に期待したい。

 

『エクレア』カエラブしげお(大阪府・23歳)

【ストーリー】

もともと人間だった主人公は、友達がいないかわりにいつも話しかけていたぬいぐるみに乗り移ってしまい……。

【講評】

最初、シュールなギャグ漫画かと思って読んでいたのですが、中盤から急に寂しいお話に……。構図はとれているし、この作品だけでは計りづらいですが、画力もそこそこある方と思います。人物画が描けるのかどうかが見てみたい。お話に関して言えば、「間」をもっとうまく取れるようになれば、ギャグ部分のおかしみが増すはず。個人的に、新しいことにチャレンジしようとする意欲は買いたい。

 

『カラッポスチロー』M・K(富山県・?歳)

【ストーリー】

ゴミ山を抜け出した、頭がカップラーメン、脳みそには味噌を入れた主人公のスチローは人斬りのメジャーを目指して、放浪する日々。そんな彼は、ある日、地下金脈を見つけ……。

【講評】

ストーリー自体はありがちなのだが、随所にギャグを盛り込み個性を発揮しようとする心意気は買いたい。ただ、そのギャグも理解し難いものがいくつかあり、時事ネタもすでに旬の時期を過ぎて古い印象を受けた。時期に左右されないギャグを盛り込んでいくべきなのでは。絵柄に関して言えば、まだまだ荒削りで、新しさも特に感じない。まずは、画力の向上につとめてください。

 

『STAND』かたぎりこうたろう(福岡県・22歳)

【ストーリー】

「金か娘かこの店をよこせ」。突然、酒場にやってきた男は、店主に横暴な要求を突きつけた。

【講評】

全編、アメコミの影響を強く感じさせる絵柄で、こだわりは感じる。だが画力の稚拙さや背景の白さが、むしろ際立ってしまった印象。とにかくたくさん絵を描いて、画力の向上に努めてほしい。また、ビジュアルを重視するあまり、極端にストーリーが疎かになってしまっている。しっかりと具体的なエピソードを考えるべき。

 

『老家的(おじいちゃんの)餃子』くまねこ(千葉県・34歳)

【ストーリー】

小学生の坂東茜は、独り身で自分を育ててくれた母に先立たれ、餃子屋を営む祖父の家に引き取られることになり…。

【講評】

明るく力強く生きる茜や、頑固者の祖父のキャラクターがきちんと描けている。また、絵柄もしっかりしているし背景も丁寧に描き込まれていて好感を持って読んだ。だが、ストーリーラインがあまりにもありきたりで、「こうなるんだろうな」と思った通りの展開になってしまっている。2次選考以降に残るためには、自分なりの視点を提示できなければ難しい。

 

『おらが春』稲城大丸(東京都・37歳)

【ストーリー】

所属厩舎から独立しフリーになった若手騎手・伊能は、スランプに陥っていた。そんなある日、能力は高いが気性に難がある4歳牡馬・サカノゴウザンと出会い……。

【講評】

自身の運命を変えるような馬との出会い→主人公の成長→大レースでの勝利。この作品もこのような「競馬漫画」のスタンダードな形式で作られている。ベタではあるが、形がしっかりしているので読みやすかった。だが、主人公がただの不義理な男のように読めてしまい感情移入できなかったのが残念。物語の構造をいかすキャラクター作りを心がけてほしい。

 

『あさってから始める』作画・花田剛/原作・吉田友則(東京都・32歳)

【ストーリー】

自殺しようと見知らぬ町に来たハナエは、いさちこという名前の青年に自殺を阻止されて……。

【講評】

何よりページ数・合計188ページは長すぎる。物語の本筋と関係のない展開やちょっとしたギャグにページ数を使いすぎると、テンポも悪くなってしまう。一番描きたいことは何なのか、しっかり突き詰めてから描き始めることを勧めたい。画や構図にはセンスを感じるので、自分でページ数を制限し、その中で表現する方法を探してみてほしい。

 

『ペイル・ライダー』池田寿男(鹿児島県・31歳)

【ストーリー】

組織を裏切ったという噂を流された男5人。その組織には、裏切り者は「ペイル・ライダー」に殺されるという噂があった。そして、本当に1人、2人と死んでいき……。

【講評】

最後にキッドがロッキーを殺したのはなぜだったのか。登場人物の関係性や状況設定を説明しきれていないので、非常に読みづらかった。複雑な人間関係なので、登場人物をもっと絞ったほうがよかったのではないだろうか。また、会話で状況を説明するには情報量が多すぎるので、もっと画で伝えられるよう努力してほしい。

 

『シゲジィからの夏』風野又三(佐賀県・35歳)

【ストーリー】

父に夜逃げされた小学3年生のオサムは、ど田舎な父の実家でお世話してもらうことになり……。

【講評】

全編を通して主人公のト書きが多すぎる。これは、心情や状況を伝えるのに一番安易な方法。もっと登場人物の会話や行動の中で、自然に説明できるようになってほしい。また画は、人物・背景ともにまだまだ。このレベルでは一次選考通過は難しいだろう。

 

『幽霊の作り方』北川玉一郎(神奈川県・32歳)

【ストーリー】

女の幽霊が出るという噂がある荒れ寺の古井戸。ある日そこで、古木屋の主が幽霊を見て死んでしまう……。

【講評】

幽霊を作ってしまったというオチは「なるほど」と思ったし、物語としてまとまってはいる。だが、怪談として考えた時には、ビジュアルとしての怖さが物足りなかった。また、死んだ女が実際に幽霊になるのならば、もっと生半可でない悲劇が彼女を襲わないと説得力がないだろう。もう一点、和紙にペン入れするのは構わないが、せめてペン入れした紙をコピーしたものにネームを入れるべき。

 

『実録ヘルニア生活』たぢまはる(北海道・36歳)

【ストーリー】

作者の入院・手術体験をもとにした4コマ漫画。

【講評】

私自身もヘルニア体験があるので、それなりに楽しめたのだが、あまりにも個人的体験によりすぎていて漫画作品としては評価しづらい。このままでは、イラストを使った日記としか思えないからだ。エッセイ漫画がよくないとは言わないが、もっと表現に工夫がほしい。

 

『ロリーから見える変らない風景』真下智博(東京都・35歳)

【ストーリー】

高校時代に付き合っていた彼女が、15年ぶりに地元に帰って来た。再会した男と女は再び惹かれ合い……。

【講評】

上記のように、あらすじを書いたものの、真下さんがそういう意図で描いたのかどうか……。ポエティックな台詞と情感を重視した描写はなかなか雰囲気があったようにも思うが、正直話がよくわからない。独りよがりの表現にならないように、他者の目をもっと意識して描いた方がよいのではないか。

 

『Your Garden』大加美紀子(埼玉県・38歳)

【ストーリー】

春介が目を覚ますと、家の前には4坪の庭が出来ていた。慣れない庭作りの作業は春介の心に変化をもたらす。

【講評】

劇的な変化のあるストーリーではなく、キャラクターの内面の小さな変化を見せるストーリーなのだから、最初と最後でもっとわかりやすい変化があるべき。内面が成長するとか悩みが解決するなど、読み味のよくなる変化がないと、ただの日記になってしまう。

 

『いちごいちえ ─約束─』後藤真弓(京都府・46歳)

【ストーリー】

植物に囲まれた家で暮らす老婆・成田は近所からも敬遠されていた。いち子はそんな成田さんが気になり、二人の交流が始まる。

【講評】

絵もうまく話も丁寧に作られているが、オリジナリティがない。この作者の漫画が読みたい、と読者に強く思わせることが大事である。成田さんのキャラクターも生身の老人としてのリアリティに欠けている。印象的なシーンやセリフを作ることができなければ、絵がうまくてもプロになるのは難しい。

 

『一頭の馬』古谷寿章(埼玉県・58歳)

【ストーリー】

飲み屋のマスターが常連の職人たちと共同出資で飼う馬・ユメノファイブ。しかし、馬に裏切られた5人は処分することに……。

【講評】

背景はすごく丁寧に描かれているが、絵が古い。流行の絵を意識しなければならないというのではないが、見た感じ古い漫画に感じてしまうのは致命的である。話のほうは主人公のキャラクターがまったく見えてこないので感情移入できない。正論で説教をされたような気分になってしまう。

 

『サルの自爆テロ(仮題)』フジヒロシ(神奈川県・43歳)

【ストーリー】

草サッカー選手のゴリラーカーンこと業田勝は、日本代表に試合をすることに。しかし、試合は無茶苦茶な展開に……。

【講評】

パワーのある破天荒なキャラクターならよいというものではない。なぜ、ゴリラーカーンは無茶苦茶な行動をとるのかという根っこが欠けている。これでは読者に愛されるキャラにはならない。また、ギャグとして読むには72ページは長過ぎる。

 

『少女の恋と父親の愛情』藤岡晃(秋田県・48歳)

【ストーリー】

美由紀が中学生になっても、お父さんは娘が心配でならない。そんなある日、美由紀が家に彼氏を連れてきた。

【講評】

すべての登場人物の目が死んでいる。そのため、感情表現がまったくできていない。テーマが愛情なので、なおさら致命的である。表情だけでなく絵に動きもないのでキャラクターが生き生きとしない。また、美由紀が北川くんとなぜ付き合ったのかがまったく理解出来ない。

 

『roc greek park』トラマポスト(兵庫県・?歳)

【ストーリー】

ラッパーを夢見ながらも、さえないバイト生活を送る主人公・アビコ。その先の見えない人生にアビコはやる気を失っていた。

【講評】

絵がヘタなわけではないのだが、データで作成した原稿がわざと粗くした処理のために非常に読みづらい印象になっている。コントラストの強い処理だけでなく、生原稿でいうところのスクリーントーンのような効果を使ってはどうだろうか。話のほうは、心境の変わった主人公を行動で見せてほしかった。

 

『拝啓、ロッカー前』粟矢ミタ(愛知県・30歳)

【ストーリー】

ヒロと可菜は親公認の交際を続ける高校生。ある日、ヒロはクラスメイトの佐藤が実は結婚していたことを知り……。

【講評】

ヒロの可菜への気持ちはどうだったのか。好奇心で佐藤さんのことが気になってしまったとはいえ、あまりに可菜のことを考えていない行動に納得ができなかった。最後に出てくる佐藤さんの旦那も、重要な役のわりに、どういう人物なのかがまったく見えてこない。作者が頭の中で都合良く作ったドラマに感じる。

 

『大東京小捜査線』新田九郎(兵庫県・30歳)

【ストーリー】

ある女性の変死事件。ただの自殺と思われた現場に、鬼岩刑事は『チンポデカ』というビデオを発見。事件は動き出す。

【講評】

まず絵の練習をするべきだろう。今のままでは作品の中身うんぬんの前に読みにくさから敬遠されてしまう。ストーリーはギャグがメインに思えたが、ギャグとして読んでいいのかわかりづらい。ややこしいミステリー部分はもっと捨てて刑事モノのパロディーだと割り切って描いたほうが良かったのではないか。

 

『猫ドラマ・同棲ちゃん』吉川英穂(北海道・35歳)

【ストーリー】

猫のヒロシとユキコは同棲中。わがままユキコの気を惹くために、ヒロシは真冬にカキ氷を探すハメに。

【講評】

ギャグなので話の筋に意味がないのはそれほど気にならないのだが、絵も笑いもとにかく古い。自分が世間の感覚とずれていることを認識すべき。オリジナリティとは世間と違うという事ではない。

 

『ハロー! RANDY!』クロマツ・テツロウ(東京都・29歳)

【ストーリー】

入学早々に停学をくらったキミヨシ。荒れるキミヨシの心には捨てられない野球への思いがあった。

【講評】

よくある話だが、絵も話も丁寧である。丹念に物語をつむいできただけに、キミヨシの投球シーンの絵にスピード感がないのは致命的。すごい才能を腐らせているキャラクターが、自分を制限していた鎖から解放されての一球なのだから、一発ですごいと思わせなければ!

 

『MOTHER』河合大悟(東京都・36歳)

【ストーリー】

母を失って悲しみにくれる父。ヒロシは子供ながらに父と弟を支えるパワフルな小学5年生。

【講評】

略歴を拝見するとプロとして連載もされていたとのこと。絵もシナリオもさすがである。しかし、このパワフルで下町で人情たっぷりな価値観はすでに出尽くしているように思う。目新しい、誰も見たことがない、というのがそれほど重要ということ。

 

『繭の羽衣』むし(神奈川県・27歳)

【ストーリー】

幸せだったはずの人生が一変。晶は一着の着物と共に両親に捨てられ、孤児仲間と共に生きることに。

【講評】

絵は非常にうまい。しかし、この話をやるのに52ページは長過ぎる。両親が自分を捨てたのではなく、自分を置いて自殺したのだと知った晶が、元気を取り戻すというのもリアリティがない。両親が死んでいたと理解したことへの悲しみはないのだろうか。

 

『箱にはいった男』永井ヒロユキ(佐賀県・24歳)

【ストーリー】

頭から箱状のモノをかぶり、一人歩き続けている男。なぜ箱の中にいるのか、ここがどこなのかまったく分からない。そんなとき、目の前にもう一人の男が現れた。驚いたことにその男も頭から箱をかぶっていた。

【講評】

最後まで主人公の姿が明かされないので、非常にモヤモヤした気持ちが残ってしまう。加えて「所詮この世は不条理と理不尽だらけだろ」と観念的なネームのオンパレードで、いったい何の話なのかよく分からなかった。何やらメッセージがありそうにも思えるのだが、それならもっと読者に伝えるようにしてほしい。画力もまだまだ不足している。丁寧なデッサンから始めてはどうだろう。

 

『この町、ヤツとの戦い』明日野隆(東京都・26歳)

【ストーリー】

ふるさとを捨て「サガ」の町にはいろうとした優三と六郎。しかし検問で六郎が殺される。町の人に助けられた優三は無事に「サガ」にはいることができたが、町では連続警官殺人が発生する。

【講評】

死んだはずの六郎が惨殺鬼になった理由が「バケモノの血が流れていたから」ではあまりにも説得力がない。これではいわば「後出ししじゃんけん」のようなものだ。物語の根幹を担う要素なのだから、もっといいアイディアをひねり出す必要がある。画力の点でもまだまだ実力不足。特に人物の感情表現、もっとバリエーションを持たせよう。

 

『ひねもすトレーダーまどか』にしのまれすけ(広島県・40歳)

【ストーリー】

トレーダーとして生計を立てている主人公まどかの日常を描いた4コマ連作。

【講評】

FXの知識も相当なものだし、連作で43枚ものボリュームを投稿してきた熱意は買いたい。しかし、オチのパターンがみな似通っており、ちょっと飽きてしまったのが正直なところ。また、主人公まどかの造形に魅力がなくもっと読みたいという気にさせてくれないのも気になった。4コマなのだから、もっと厳選したネタで勝負してほしかった。

 

『ニンゲンモグラ』弐次史美(愛知県.23歳)

【ストーリー】

モグラたたきのモグラが生業の男。同じゲームセンターで働くメンテナンスの女の子に恋心を抱くが……。

【講評】

モグラたたきのモグラとして生きる主人公という設定は斬新で面白い。が、いかんせん画力が足りないために、肝心な場面の描写がよく分からなかったのが残念。とにもかくにも画力のアップがまず必要だ。

 

『サバイバル』関達彦(東京都・35歳)

【ストーリー】

東京の繁華街・渋谷に一匹の猿が現れた。マスコミ、機動隊をも巻き込んでの大騒ぎになるが、麻酔銃を撃ち込まれ捕獲されてしまう。これで一件落着と思われたのだが……。

【講評】

当時、世間を賑わせていた『渋谷の猿騒動』をもとにした作品と思われる。相当な画力を誇る作品で、読みやすさも抜群。主人公の猿が、野生生活をしていた頃を思い出し、必死に逃げ出そうとする姿も理解できる。作者はかなりの実力者だとお見受けした。では、なぜ2次選考以降に進めなかったのか? 猿の気持ちがあまりにも当たり前すぎるのだ。こうなるのかな? と思いながら読み進めていくと、すべてその通りにすすんでいく。これでは読み手の心をかき乱さない。心地よい裏切り、予定調和からの逸脱、この点をもっと意識していれば2次選考には進めていたはず。次回作に期待します。

 

『心推理人白銃のノッド』阪本記代隆(大阪府・31歳)

【ストーリー】

ルイシとともに旅を続ける主人公ノッド。とある町に到着したが、その町では23人もの子供が行方不明になる事件が発生していた。たった一人、難を逃れた子がいることを知ったノッドは調査を開始する。そこに浮かび上がってきたものは!?

【講評】

まず、描き方の基本ができていない。ネームは多いわフキダシは小さいわ、とにかく読みづらかった。もっとネームを磨いて削り、読みやすい大きさのフキダシに描いてほしい。ストーリーはミステリー仕立てになっているが、真相が明かされたあとの犯人の動機、女の子の立ち直り方に納得がいかなかった。意外性もなく淡々と進むだけでは厳しい。絵は細かいところまで描き込もうという意欲が感じられた。あとは人物の造形、表情のつけ方に工夫をしてみると良いだろう。

 

『蛍』斉藤雅己(新潟県・48歳)

【ストーリー】

佐渡の金山から逃げ出した平吉は、寂れた小屋に逃げ込んだ。そこにいたのは幼なじみのカヨだった。彼女は遊女だったが、客に病気をうつされ客を取ることができなくなっていたのだ。そんな二人のつかの間の安らいだ生活も、追っ手が現れたことで一変する。

【講評】

当人たちは悪くないのに、状況によって転落していく平吉とカヨが切ない。じゅうぶん感情移入できる話だし、大きな破綻もない。しかし、どうしても『どこかで見た感じ』がするのは否めない。また、絵柄も古い印象で、ストーリーも絵もオリジナリティを感じなかった。力がないとは思わないが、このままでは本誌では厳しい。

 

『酔生夢死』小林冨三郎(埼玉県・29歳)

【ストーリー】

芸能プロダクションで働く主人公・司馬。社長は適当だし、バイトもチャランポラン。腰は痛いわ痔は痛いわ、日常は大変なことばかり。

【講評】

話の中身がない。一応あらすじらしきものは書いてみたが、どこかに向かって進む話ではないし、ただただとりとめのない日常が描かれているだけだ。もちろん、このようなタイプの作品だってかまわない。が、それを成立させるためには、魅力的な主人公のキャラ、引き込まれるような設定など、必要不可欠な要素が作れなければ無理。絵にはかなりの力量があるので本当にもったいない。次回作では、キャラ、あるいは設定、とにかくアイディアを詰め込んで、的を絞った作品作りを心がけてほしい。

 

『正座猫まんが』秋乃紅葉(茨城県・41歳)

【ストーリー】

猫やネズミ、牛などが登場するイラストのようなショート連作。

【講評】

イラストレーターとして活躍されたり、ブログを開設されたりということですが、今のままではモーニング誌では厳しいと言わざるを得ません。いわゆるマンガのスタイルでなくてもかまわないのだが、相当魅力的な造形とか、オリジナリティあふれる視点など、強力な武器がないのです。数あるブログのいちイラストの域を出ていないので、漫画家として勝負するなら、何かしらの一点突破をはからないと難しいでしょう。

 

『エネルギー革命』松みつお(千葉県・59歳)

【ストーリー】

石油に頼らない、風量による発電。しかも、その電力を備蓄できれば、輸出によって国もうるおう。そんなビッグプロジェクトを担って、男たちは航海に出発する。

【講評】

話があまりにもとりとめがなく、ほとんどわからなかった。主人公が誰なのかはっきりしていないし、物語というより作者の主張が延々と書かれているだけの印象だった。もうすこし話にはいりやすくする工夫を。絵はマンガ黎明期のギャグのようで、かなり古い感じは否めない。

 

『蔵十朗の四方山』松林蔵十朗(岩手県・66歳)

ちばてつや賞では原作の受付は行っておりません。

 

『アラカン』きんまる組(東京都・30歳)

【ストーリー】

敬老クラブに顔を出したアラカンさん。そこでは、仲間の伊月さんが出版したエッセイがベストセラーになったという話題で持ち切りだった。それをうらやむ大久保さん。自分も本を出したいようすだ。アラカンさんはそんな大久保さんを軽く一蹴するのだが。

【講評】

特にこれといった欠点もないのだが、読み終わったあとに「だからなに?」という気持ちになった。非常にユルい他愛もない話なので、スイスイ読める。が、コメディなのにあまり笑えない。非常に漠然とした講評で申し訳ないのだが、この作品のまま、うまくはまる編集部もあるかもしれない。が、モーニングとはご縁がなかった。

 

『美少女』三上キ(神奈川県・39歳)

【ストーリー】

とてつもない美少女がいるのだが、彼女に会いに行った人は誰も戻ってこない。そんな噂が流れ、新聞記者が取材に行くが、やはり戻って来ることはなかった。そこで、新たに新田と近藤が呼ばれ、行方不明の同僚を捜しに行くことになった。

【講評】

ちょっとシュールな、不思議な読み味の作品だった。ただ、美少女とは、その人の記憶に潜む甘美な思い出なのだろうか? 今ひとつよく分からなかったのが惜しい。さらに、画力も、あと一歩も二歩も足りない。線が硬く人物がギクシャクしているような印象を受けてしまう。また、明らかに絵に古さがあるのも否めない。

 

『早く朝になって下さい』フルタしげたけ(和歌山県・45歳)

【ストーリー】

主人公は高齢者グループホームで働く介護士。初めての一人夜勤を迎えることになった。認知症を持つ10人の老人との壮絶な一夜が幕を開ける。

【講評】

あらすじに書いた内容そのまんまの話。もちろん認知症の老人たちがどんなことをするのかの具体例は多く描かれているし、介護するのがどれだけ大変なのかも伝わってはくる。しかし、それではドキュメンタリーにしかならない。そこで主人公がどういう思いをしたのか、あるいはこの夜を過ごしたことでどう変わったのか、そこが見たかった。もちろん、きれいごと、お為ごかしの結論である必要はない。主人公の思い、それを描くつもりで取り組んでください。

 

『わし、サンタ』本郷隆史(京都府・44歳)

【ストーリー】

クリスマスイブの晩、ヤクザの運転するクルマがサンタクロースをはねてしまった。瀕死のけがをしたサンタに代わり、ヤクザが子供たちにプレゼントを届けて回ることになるのだが……。

【講評】

よくできたファンタジーで、後味もよかった。が、全部が全部うまくすすみすぎて、幼い話になってしまったのが残念。あまりにもハッピーエンドにしようとしすぎた嫌いがある。ハッピーエンドでももちろん構わないのだが、もっとドキドキさせてくれないと、あっさりした読後感しか持てない。また、絵柄は下手ではないが、古いので今のモーニングにはマッチしにくい。

 

『KIZU』東正成(神奈川県・45歳)

【ストーリー】

主人公は売れない探偵。ある日、正木という男から『1千万円で人を殺してほしい』との依頼を受ける。しかし殺してほしい男というのは、依頼人である正木本人だった。

【講評】

主人公以外の登場人物はいない。つまり、この探偵の独り語りで話が進んでいく体裁になっている。これは相当な力量がないと難しい方法だろう。主人公に、かなりの魅力がないと読み手は話に入っていけないからだ。そして、残念ながらこの作品は主人公にそこまでの魅力がなかった。絵柄も表情に乏しく取っ付きにくい印象。

 

『窮みない歌』佐藤典明(千葉県.44歳)

【ストーリー】

東北の観測所に、東京の研究室から青年研究員小嶋がやってくる。近くで世話を焼く直姉は淡い恋心を抱くが……。

【講評】

モーニングに掲載歴もある方で、かなりの実力者であることは間違いない。淡々としたつくりではあるが、読み味も悪くない。しかし、決定的にキャラが弱いのが欠点。とくに、小嶋には何の魅力も感じられず、直姉がなぜ恋心を抱くのか説得力がない。強力なキャラをつくる、ここを突破できないと厳しい。

 

『だらくしないばいたい』坂木実和(東京都・20歳)

【ストーリー】

4コママンガ5ページ

【講評】

申し訳ないが、まるで笑えませんでした。とりとめのないネタばかりで引っかかるところがありません。ネタができたら、友人など周囲の人に見てもらい、意見を聞いてみては?

 

『三国浪漫 花関索』ライパンセン(東京都・20歳)

【ストーリー】

三国志をベースにしたとおぼしき、戦乱の一断面。

【講評】

あらすじも書けないほど、よく分からなかった。これではマンガではない。筆で描かれた力強い線を見ると、迫力は伝わってくる。しかし、主人公は誰で誰と誰が戦っているのか、話がまったく分からない。まず、主人公を立て、状況を読み手に分かってもらうことから始めてほしい。

 

『こもりくん』徳永勝洋(東京都・25歳)

【ストーリー】

引きこもりの小森くんが、入学式以来2年ぶりに登校してきた。しかもなにやらいっぱいもってきた!

【講評】

ギャグなので、笑えなかったから一次選考で落選したわけなのだが、みどころはあった。ボケるのは小森くん一人で、それに対してクラスメイトがツッコミを入れる構図、これがちゃんとできていた点は評価したい。あとはネタを磨いていってください。

 

『Boys Be Ambitiuos』和尚(埼玉県・29歳)

【ストーリー】

スポーツ一家の三男、飛鳥は落ちこぼれ。でも夢はでっかくNBA選手!

【講評】

好きこそものの上手なれ。このメッセージは力強く伝わってはくるものの、登場人物たちが幼すぎて、青年誌としては厳しい。キャラがチャラ過ぎて、話が嘘くさくなってしまっている。ストーリーは王道なのだが、それが気恥ずかしくなったのだろうか。正面から取り組んでほしかった。

 

『狂犬Z(仮)』ヒカルアルファ(神奈川県・24歳)

【ストーリー】

主人公・豪田は新聞記者。ある雨の日、男女の死体が川からあがった。心中と事件の両面から捜査されるが、結局は心中との結論に。納得のいかない豪田は取材を続行、すると市役所とある企業の癒着の実態が浮かび上がるのだった。

【講評】

105枚の大作なのだが、話の骨格はしっかりできていてグイグイ読み進めることができた。が、どうしても納得できないのが、主人公は酒を飲むと犬に変身してしまう点。この設定がリアルなストーリーに水を差してしまったのが残念。犬に変身してかぎ回らないと事件が解決できないというつくりでは、まだ詰めが甘い。力量はあるのだから、飛び道具に頼らない作品を読んでみたかった。

 

『Y字路交差点』央伸(千葉県・29歳)

【ストーリー】

彼女の命日にお墓参りに行った主人公。そこへ、突然メールが届く。相手はなんと、向かいのお墓に眠る女の子。生前、気になっていたバンドが現在どうなっているかを見てきてほしいというのだ。

【講評】

主人公に魅力がなく、話にはいっていけなかった。幽霊に後押しされないと何もできない男の話は、正直あまり読みたいたぐいのものではない。最初は亡くした彼女を引きずっていても、途中から前向きになる、というくらいのスタンスを取ってほしかった。

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