最終選考会の議事録をノーカット完全収録!

ちばてつや賞一般部門の最終選考は、ちばてつや先生をお迎えして行われます。時間をかけて丁寧に読んでくださったちば先生の各作品への評価をお聞きします。その上で、2次選考会で作品の担当となった編集部員は、自分の担当作品を詳しく説明してちば先生にアピールします。そのほかの各編集部員は、疑問点などをちば先生に質問し、活発な議論が交わされます。

 

『最期の人』田口佳宏(東京都・27歳)

選考会の様子

●ちば先生
いい話だよ。演出も上手いしね。だけど、何度か読んだんだけど、おばあちゃんの説明が腑に落ちないんだよね。説明は一生懸命してるんだけど、いまいちストンと落ちない。
●事務局長・鯉渕
あえて好意的に言うと、おばあさんは嘘を言って安心させてあげようとしているのかなと。
●モーニング編集長・古川
超能力的なことはいらなかったんだと思うよ。本人は悩んでるんだけど、本当はただの偶然なんだよっていうことで十分だったんじゃないかな。
●担当編集
作者とそこの部分のことも話したんですけど、本人も取って付けたようになってしまったかもと悩んでいたようです。ただ、精一杯考えた上で今回は、何世代も続く偶然という曖昧なところで落としどころにしたということです。彼は、アシスタント経験はあるんですが、自分の漫画を描いたのは3、4回くらいらしいです。今回はモーニングに好きな作品が多いということと、ちば先生にぜひ読んでもらいたいということで、ギリギリのギリギリで飛び込んだ感じだったんですけど。
●モーニング編集長・古川
いま、ポイント上げようとしてるぞ。
●編集部員・A
ああやるのか!
●編集部員一同
(笑)
●担当編集
いやいやいや(笑)。この作品は、特別に明るい人は出てこないんですが、しっかり人間ドラマを描けているんではないかと思います。
●モーニング編集長・古川
画は上手いし伸びる可能性はあると思うんだけど、特徴のある印象に残る画が描けてはいないんだよな。怒った顔とかブスな顔とか、自分なりの表情を描こうとしていかないと、オリジナリティのある顔が出来てこないんじゃないかな。
●事務局長・鯉渕
あとは、「これが決めゴマ!」とか、「この画が描きたかったんだ!」みたいなところを感じなかった気がしますね。でも、おじいちゃんが孫に飴玉を落とす場面とか、かわいらしくてよかったです。
●ちば先生
この人は個性を出そうとして努力をしているのを感じますね。ただ全体的にキャラクターの表情が暗いので、もうちょっと明るいキャラクターも作れるようになってくると、幅が出てくるんじゃないかな。だけど、話の作り方はとても面白かったと思うよ。生命力のなくなってきた人に惹かれてしまうというアイディアは、なるほどなと思いました。
 

『Beautiful Sandland』樹之ト(東京都・37歳)

●ちば先生
のどかな場面から始まって、のどかな絵で、こういう展開になるっていうのはすごいよね。この人は、韓国の人なんだね。だから、こういった体験を自分でもしているのか、仲間から戦場の話を聞いたのかはわからないんだけど、非常にリアルですよね。
●担当編集
彼はもう11年ほど日本で生活していて、奥さんも日本人の方らしいです。現在はコンビニでバイトをしながら本格的にマンガを描き始めていて、今回モーニングが好きなこともあり、ちば賞に応募してしてきたとのことです。この作品、重ためのテーマと、絵柄のライトさのアンバランスさが絶妙だと思いました。これ以上、劇画的な絵だと、テーマと合いすぎて、暗いイメージばかりが強くなっていたかもしれません。言葉の軽快さもよくて、とても台詞が上手いなあと感じました。例えば戦況についての会話のシーンとかでも、日常会話から外さないようにすごく注意して台詞を選んでいる感じがして、そのおかげで逆に戦場の緊張感をすごく高めている気がします。
●事務局長・鯉渕
それは具体的にどのへん?
●担当編集
現地の人が出てきて、トップの人と話している場面とかで、具体的にその国のことは説明されていないのに、何気ない会話の中になんとなく背景が見えてくるんですよね。リアルだと思わせられるセンスがある。
●モーニング編集長・古川
俺には、こういう特殊な画とコマ組みを、どう商品として売ることができるのかっていうのがわからないんだよな。絵も演出も、変えられないくらい完成しているから、何をどう変えればいいのかが見えてこない。
●担当編集
逆に、ある程度何でも描けそうなので、テーマ次第だと思います。もともと彼はSFが好きなんです。戦争ものを描いたのは今回が初めてで、戦争ものに固執しているわけではありません。
●ちば先生
この作品は自分の体験を描いてます?
●担当編集
いえ、体験ではないです。銃撃戦が描きたかったと言ってました。
●モーニング編集長・古川
題材はSFでもいいよ。じゃあどういうSFで、この絵がはまるのかってことだよね。SFって独特の世界観がないといけないじゃない。このアメコミの影響を強く受けたようなコマ組みには、もうひとつオリジナリティを感じないんだよな。
●ちば先生
確かにオリジナリティはないかもしれないね。でも演出力やキャラクターの描き分けは上手だよ。とぼけた味もあるし。ラストシーンの描き方も上手いからね。だから、大きな人気を獲得することはなくても、メッセージのある作品を描いていける人だとは思いますね。日本人ではなかなか描けない話だと思います。
 

『君のめがねをはずしてみたい』河野夏生(鳥取県・24歳)

●ちば先生
漫画の中に小説が出てきて、その小説が実際に手描きで描かれてるじゃない。面白いよね。なんとも怪しい女の子も出てくるし。演出が上手いよね。
●担当編集
彼はこの作品が2作目です。今までも投稿をしたことはあるんだけど、賞に残ったのは初めてらしいです。セックスで頭がいっぱいな男の子の話なんだけど……。
●ちば先生
あんまりいやらしくはないんだよね。なんだか上品で。
●担当編集
そうですね、男っぽくギラギラしているわけではなく、爽やかに描かれていると思います。
●事務局長・鯉渕
編集部でもなかなか評価が高かった作品です。ただ、ラストをめぐって議論になりましてね(笑)。彼女が転校して行くときに、自分の裸の写真を残していくじゃないですか。それについて、「こんな女でいいのか」というのと、「これはエロいからいい」という意見で二分されたんですよ。
●ちば先生
メールで「ありがとう」はわかるんだけど、裸の写真っていうのはねえ、送らないと思うんだけど……。作者のサービスなのかなあ。
●モーニング編集長・古川
最後まで、この女の子がどんな性格なのかが描かれていないから、わかんないんだよ。なぜ官能小説を描いてるのか、どうしたいのかとかね。
●編集部員・B
これは、女の子も成長したっていう話じゃないんですか?
●一同
(笑)
●モーニング編集長・古川
それは、こじつけだろー。
●ちば先生
どういうふうに成長したの?
●編集部員・B
今までは暗く文字だけで発散していた女の子が、読者を得たことで……。
●モーニング編集長・古川
じゃあなんで官能小説を書いてるんだよー。
●担当編集
うーん、僕の場合はこの(簡単に裸を見せる)軽さが気になっていて、もしかしたらこれはすごく現代的な話なんじゃないかと思ったんです。作者と話してみたら、どうやらすごくモテる男の子っぽいんですよ。そのモテる彼ならではの軽さなのではないかと。意外に、僕らが思っているほど、現代社会では裸のハードルは高くないのではないかと。
●モーニング編集長・古川
選考会のときに、この作品はエロいのかエロくないのかでも二分されたんですよ。担当は「エロ派」の急先鋒。俺にはわからない(笑)。もうちょっとミステリアスさだったり、この女の子のキャラクターの深さが描けていれば、想像力を刺激できるとは思うんだけどなあ。
●事務局長・鯉渕
こんな軽い女だったの?って俺は引いちゃったなあ。
●編集部員・C
僕の場合はそこがあったからこそ、目が止まりました。この唐突な感じで裸が出てきたから、よくある青春マンガとは一線を画したと思います。
●モーニング編集長・古川
なんでこの女の子は官能小説書いてるんだよ。
●編集部員・D
若いから。
●編集部員・A
エロいから。
●担当編集
興味津々だから。
●一同
(笑)
●モーニング編集長・古川
それがわかんないんだよ俺にはー。
●担当編集
いやー、若者の素直な感覚だと思いますよ。
●編集部員・B
裸以外のアイディアがあればもっとよかったんだろうなあ。
●事務局長・鯉渕
そうだね。軽さを感じさせないアイディアがあるとよかったね。
●モーニング編集長・古川
あとは、この女の子がただ軽い女の子なのか、そうじゃないのか、どっちかに決めて作られていれば、もっと評価が上がるんだよ。どっちの意味にも取れちゃうのが問題。
●担当編集
確かに。天然で描いている感じがあって、意識的に描いていないということですね。ちば先生、作者に、何かこうすればもっとよくなるというようなことってあったら伺いたいのですが。
●ちば先生
主人公の男の子が、男か女か最初わからなかったんだよね。読み進めるとわかるんだけど。もうちょっとわかりやすくしてほしかったかな。あと、僕は最後に裸を出してほしくなかったかな。
●編集部一同
(笑)
 

『ティザンティザムへ』斉藤千柳(神奈川県・34歳)

●モーニング編集長・古川
この人、絵が上手いよね。さっきみんなで話してたんですよ。ティザンティザムってなんだろうって(笑)。
●事務局長・鯉渕
この人はアフタヌーンの四季賞の受賞経験がある人です。
●ちば先生
まったく抵抗なくスーッと読めるし、かわいい話だし、最後のシーンもなかなかいいし……こういうのどかな話が私は好きなんだけど、モーニングに合うのかどうか……。
●モーニング編集長・古川
デッサン力がありますよね。
●事務局長・鯉渕
ちょっと違うんですけど、『おおきな台所』(52回準大賞受賞作品)に雰囲気が似てますよね。
●モーニング編集長・古川
小さい絵がブレないよね、全然。線がしっかりしていて。
●ちば先生
画力は結構あると思います。座ってる絵も上手。文句の付けようのない作品です(笑)。
●モーニング編集長・古川
どこを変えるとかがない作品ですよね。好きかどうかっていうのはあるだろうけど。あえて欠点を言うと、「だから何?」って思ってしまうところなんです。胸を打ったり、もう一回読みたいなあと思わせたり、涙を流させたりっていう、感情を揺るがせるような力が足りない。漫画として、ちょっとあっさりしすぎなんですよね。
●事務局長・鯉渕
漫画っていうより、絵本って感じがしますね。
●ちば先生
そうですね。絵本ですね、この作品は。
●編集部員・B
『清しこの土』の人と一緒で、自分のために描いている作品って感じがしますよね。もちろんそれで成功してる女性作家はいっぱいいるから、悪いことってわけではないんですけど。自分の箱庭を作ってみました、みたいな。
●モーニング編集長・古川
そういう意味でもアフタヌーンっぽいんだよな。
●ちば先生
読むだけで心が穏やかになって、いい気持ちになるという作品ですよね。だから何っていうのはないんだけど。それのどこが悪いのっていう。
●事務局長・鯉渕
どこを直せばもっとよくなるというものではないですよね。
●モーニング編集長・古川
でもここに何かひとつくっつかないとダメな気がするよね。感情を揺さぶる何かとか、すごく嫌なものとかさ。これからは担当がつくことで、ファンタジーの中にもっと深いものを見てほしいね。
 

『gokko』伊藤輝(千葉県・30歳)

●担当編集
いままでイラストレーターの仕事はやってたんですが、漫画自体はほとんど描いたことがなかったようです。ただ今作は、ちば賞に今回どうしても間に合わせようとして、1ヵ月くらいで仕上げてもらったものなんで、そこを考慮して見ていただければ……。
●モーニング編集長・古川
一コマ一コマの人物はいいと思うんだけど、背景が雑すぎるよなぁ。
●ちば先生
でも、なかなか力のある人だね。なんというか線の一本一本に勢いがあるっていうかね。Mr.Jと警官たちの取り引きで、いきなり見開きでパーンって撃たれて。あそこはちょっと衝撃的な絵なんだけど、弾が目を貫通するんだよね。で、その後は赤ん坊抱いているのに、胸から上がバラバラになるくらい撃つっていうのは、もうちょっと神経を使ってほしかった。その赤ん坊が大事なんだから、警察が赤ん坊をよこせとか何とかしろという取り引きがあって、とかっていうドラマがあったはずなんです。そこを描いてほしいところを、いきなり銃で撃って終わっちゃったから、そこがもったいなかったなっていう気がしたんですね。それ以外はなかなかおしゃれな会話だし。
●モーニング編集長・古川
ネタバレがしちゃうんだよ。そこでネタバレしていいけど、先生がおっしゃったようなのが入ると、ネタバレしても作品の厚みが出る。そこがなくてネタバレしちゃうと、話が薄くなるんだよね。
●ちば先生
ネタバレしてしかも、そういう布石だったのかっていうどんでん返しがあったりすると、すごくいいんだけどね。
 

『オヤジ野菜』芝本ノキコ(兵庫県・26歳)

●ちば先生
『オヤジ野菜』、いい話ですよ、なかなか。オヤジ(かぶ)を味噌汁にして、ちょーんでおしまいかなって思ったんだけど、その後トマトになってたり……。
●モーニング編集長・古川
そうそう、もう一回出てくるところがね。
●ちば先生
出てきて、「あっ。ということは、ほかの野菜も全部オヤジの気持ちが入ってんだな」っていう優しさが出ててね。きっとこのバカ息子……ショウスケも、きっといいオヤジになるだろうなっていうことを匂わせてね。嫁さんは出てきてないんだけど、お腹に子供がいるっていう意味で、一緒で暮らすわけでしょ。
●事務局長・鯉渕
そう読んでいくと、確かにすごく深い話ですよね。
 

『悪魔ポスト』ほか4本 吉村清(福岡県・34歳)

●ちば先生
私はこういうのは感覚だと思うんだよね。好き嫌い。こういうのは、ただただ見ているだけで心が和む人がいるだろうけど。私は何かもったいないなと思うな。これだけ絵の力もあるんだから、根気もあるんだし、これだけコツコツコツコツ……いろいろなめるように描いていますよね。こんなに努力して描ける人なんだから、ギャグみたいなことでじゃなくて、この人は十分何か描けるんだろうし。どっか何か、ちょっとずれていると思うね。
●事務局長・鯉渕
これは本当に、先生がおっしゃったように、はまる人と全然そうじゃない人と極端に分かれる。
●ちば先生
10人のうち例えば2人か3人はまるんだったら、ギャグとしてはいいんじゃないですか。3割くらいですからね。私はその3割には入ってないんで……。ちょっと、これだけの画力があるのにもったいないなぁ。この人の面白がらせようとしていることがこっちに伝わってこないだけの話なんだけど、私はちょっとそういうアンテナがないんですね。
 

『彼女の指先』黒谷知也(東京都・27歳)

●ちば先生
これは結構好きなんですよ。非常に荒っぽい絵ですけど、筆ペンで描いてて。だけどね、この近藤サト子がなかなかいいキャラ……いい味出してる。ちょっと乱暴な描き方だけどね。やっぱり細かくきちっと描くところは描いてほしいと思う。2人が何度も将棋指したりしたあとに、彼がまだ病院に入院しているっていうことがわかって訪ねていくでしょ。こんな姿を見せたくなかったって言うんだけど、別にマスクしているだけだよね。もうちょっとリアルに、本当に大怪我したんだなっていうのを感じさせてほしかった。そんな怪我を負っている人が、幽体離脱して自分のところに背中を押しにきてくれたってことに感動があるんだよ。そこをさらっと描いちゃってる。ちょっともったいなかったなと思うんですよね。人を感動させるためにはどういう絵にしたらいいのかっていうところをもうちょっと考えてくれたら、この人はもっと伸びるだろうと思うんだけど。
●モーニング編集長・古川
ストーリーマンガとしてのアイディアはいいんですよね。アイディアはすごくよくて、プロの人が描いたら、このままストーリーが出来ちゃうっていう感じ。だからもったいないですよね。
●ちば先生
うん、もったいないなと思うね。もう少し細かく描くところは描くっていうものは持っている。今回は実験的に描いたのかな?
●モーニング編集長・古川
線をシンプルにして上手く見えるか、手を抜いていると見えるかでいうと、まだ上手いっていうところのレベルまで行ってない。単純な線が好きなんだろうけども、それが効果として生きていない。もっとちゃんと描けよって思ってしまうね。
●ちば先生
できればね、あんまり手が掛からないで、それでいて読む人に感動を与えられるのが一番いいんですよね。あんまり描き込まないで、しかも効果的に状況を説明できるっていうのだったらいいけど、手抜きに見えてしまうっていうのは損ですね。この話の一番大事なところは、やっぱり病院に訪ねて行って、本人と、本体と会うところでしょ。そこもさらっと描いちゃってるからね。ああ、ここのところはもうちょっと緊張感を出して描いてほしかったな、というような風に思われてしまうことがちょっとまだ、この作品の欠点ではあると思う。だけど、なかなかいいもの持ってるよね。この近藤サト子はなかなか、非常に魅力的だし、この将棋指しの男も、なかなかいいキャラクターを出してますよね。脇役はあんまり上手くないけど、会話が上手いですよ。あの、「私は幽霊は嫌いなの」とかね、「関わりたくない」とか「関わってろくなことない」とか、幽霊みたいなものが見える人だから今までもきっとそういうことがあったんだろう、ということが伝わってくるよね。短い会話でありながら、キャラクターの性格を出したり状況を説明したりするのが非常に上手な人なので、力はある人だと思います。
 

『消灯』下之薗僚(東京都・30歳)

●ちば先生
もう最初っから「怖いだろう、怖いだろう」って描いちゃうから、ちょっとそのへんの演出を間違えてる。確かにね、この人はすごく怖い絵を描くのが好きなんだろうし、人を脅かすのが好きなんだろうし、人の死だとかそういうのを扱うのが好きなんだろうと思うんで、きっとこういう世界は向いていると思うんだけど。半分腰が抜けたような、ハナたらしたようなじいさんが立っているとか……ちょっと笑ってしまいそうなじいさまが、「何してんだおめえ」って連れてって、そこでなんか変なものがあって、振り向いたらおじいさんの顔が変わってたとかね、何かそういう演出ができたら、もっといいと思うんだ。最初から「怖いぞ、怖いぞ、怖いぞ」って描く演出がちょっともったいなかったなって思うのと、この少年が、たぶんつまんないことで死のうと思ったんだけど、そのことが何も描いてないんだよね。ちょっと匂わせるだけでいいから、命は大事なんだよ、つまんないことで死ぬんじゃないよ、っていうメッセージが最後にふっと伝わってくればもっと良かったかなと。
●事務局長・鯉渕
この枚数でちゃんと読ませる怖い話には十分なってたと思いますね。さっき先生がおっしゃってたように、メリハリというかギャップをつけるとより怖いですけどね。
●ちば先生
それは欲を言えばの話でね。見開きの使い方とか、めくり使ったり、その辺は非常に巧みですよね。その辺は力のある人だと思う。
 

『清しこの土』伊丹川美佐(神奈川県・20歳)

●ちば先生
すごくいい画だし、とてもいい話っぽいんだけどね。私はこういう画が好きなんですよ。それに、その土地その土地の慣習が残っていて、それを守っていてっていう、のどかなお話がよかったです。だけど、最後までわからないのは、土に埋めるって意味。死んで土に還る、自然に戻る、またそこから始まっていくということだとは思うんだけど、猫を埋めて猫が出てくるっていうのがどうしてもわからない。これはわからなくてもいいんですか?
●モーニング編集長・古川
いや、それは編集部でも問題になってました。ファンタジーではあるにしても、一体どういうことなんだ?っていう……。
●担当編集
彼女はまだ20歳で、この作品が正真正銘の2作目なんです。まだちょっと、自分で思いついた世界観をコントロールできないまま描いてしまったのかなと思います。
●ちば先生
20歳にしては上手だね。雰囲気がすごくいいし。
●モーニング編集長・古川
もう少し描く前に整合性を詰めておければ、まとまりも出てきたんだろうけど。結局全部逃げちゃって、雰囲気だけみたいになっちゃったんだよな。
●担当編集
そうですね。
●ちば先生
担当者がもっとしっかりしないと(笑)。
●事務局長・鯉渕
テーマがすごく大きいので、作者なりのメッセージを入れるべきだったんじゃないかという意見が編集部の中でもあったよね。聞いたらあえて入れなかったという話なんだけど、個人的にはメッセージを入れてほしかったな。よくわからないまま放り出されちゃった感じがしたんですよね。ただ、すごく独特な世界観を描ける人だなと思います。
●ちば先生
そうだね。深いことを描こうとしているのかなと思うんだけど、それを彼女の中で消化しきれないままに描いてしまった感じがするのかな。でも非常に難しいテーマだしね。20歳でよく描いたなと思いますよ。キャラクターや読ませ方の演出も上手いしね。
●モーニング編集長・古川
こういう世界観の作品は、読み手側が展開を予測しながら読むと思うから、その期待にどれだけ応えるか、あるいは裏切るか、っていうのが大事になってくるよね。だから、何も起きないと、大きながっかり感につながっちゃうんだよな。
●担当編集
何らかの形で読者の想像を上回らなければならないってことですよね。
●事務局長・鯉渕
まあ、まだ20歳ですしね。伸びしろは感じますよね。
●ちば先生
次回作を楽しみに、ってことかな。

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