#27 ベスト・乙女エロゲー・ストーリー

──2012年1月17日記す

エロが男だけのものでないのはもはや周知の事実だが、私も数年前、乙女エロゲーにハマっていた。この時点で大半の人は何の話をしているのかさっぱりだろうが、世の中には画面の中の異性と真剣交際をするゲームがあるのだ。古くは『ときめきメモリアル』、今では『ラブプラス』だろうか。

もちろんそれらのゲーム内の交際自体は実に清いもので、せいぜいキス止まりなのだが、それだけで済むかバカ! やらせろ! というのがエロゲーであり、乙女エロゲーとは女性向けエロゲー、つまり主人公が女で、画面の中のイケメンたちとパツイチキメるのが目的のゲームである。しかし目的が同じでも男性向けと女性向けでは大いに異なる。女性向けのほうがメンタル重視であり、出会い頭の正面衝突セックスみたいな真似はしないのである。

出会いからお互いが惹かれあい、時に衝突しつつも、ついに……みたいなストーリーで、まあとにかくヤルまでがしゃらくさいのであるが、そこが重要なのである。だが、最初こそそれで良かったのだが、色々なゲームをやってみるとだんだん全てが同じに見えてきて、もうぶつかった瞬間入ってる、みたいな話で良いよと思い始めた瞬間、素晴らしく斬新なストーリーに出会った。

長々とあらすじを解説しても仕方ないので簡単に説明すると、ヒロインが毒ヘビに噛まれて大変だ、毒を飛ばすには汗をかくのがいい(そうなのか!?)、しかし、汗をかくといっても……そうだ、今ここ(=屋外)で一発キメればいいんだ!

多くの人は、私がエロゲーやりすぎで見た幻覚だと思うかもしれないが、あくまでもマジであり、画面の中のお二方も真剣にコトに取り組んでいらっしゃった。まさかメンタルを重視する女性向けゲームでこんな激安AVみたいなストーリーに出会うとは夢にも思わなかった。汗かいて済む問題なら相撲でも取ればいいんじゃないのか。

しかしもっと信じられないのがその後の展開で、諸事情で余命いくばくもなくなった男が、ヒロインに何も告げずにいなくなるという悲恋エンドなのだ。貴様らあれだけひょっとこなプレイを見せつけておきながら何だそのしんみりムードは!

とはいえ彼らは私に、セックスする理由など体力づくりだろうがボケ防止だろうが何でもいいんだということを教えてくれたのだ。

以上が5年以上経っても忘れられぬ、私のベスト・エロゲー・ストーリーである。ちなみにこれらのゲームにハマっていたのは無職の時であり、ソフトは失業保険で購入していた。我ながらよく社会復帰できたものだと思う。

(2012/02/21)

イラスト

カレー沢薫

動物界後生動物亜界脊索動物門羊膜亜門哺乳綱真獣亜綱正獣下綱霊長目真猿亜目狭鼻猿下目ヒト上科ヒト科ヒト下科ホモ属。モーニング主催・第26回MANGA OPENに生まれて初めて漫画を投稿。無題も災いしてか、部内選考であえなく落選の憂き目を見るが、稀代の生き物バンザイ派であるツー編集長(現・モーニング編集長)が強権発動。異例の新連載を獲得。担当の甘言に惑わされず、タイトルを『クレムリン』、筆名を「カレー沢薫」と作者自身がキッパリ決める潔さ。エラいぞ。好きなもの、猫&世界が滅亡するとかのパニック映画。重ね重ね、『クレムリン』はモーニング&ツーにてほとんど休まずW連載中。単行本①~④巻、けっこう好評発売中。