

きっとみんな、僕が小学生にして先生から離れたとか、教科書も使わなかった、授業中に耳栓をしていたという話を聞いて、「変わったヤツだなあ」と思ったことでしょう。
実際、当時はまわりもそんな様子でした。
あいつは教科書も使わず、先生の言うことも聞かず、ひとりで得体の知れない勉強をやっている。しかも、それで点がとれている。……おもしろくなかったんでしょうね。だから、正直に話すといじめも受けました。上履きを隠されるとか、下駄箱が水浸しになってるとか。先生たちからも煙たがられていたし、孤立無援の状態です。
このとき、僕を支えたものはなんだったか?
「数学」です。
僕には数学という、絶対的な武器があった。
どんなに口が達者な大人が束になってかかってきても、数学を否定することはできません。数学は絶対不変の真理ですからね。地位もお金も関係ない。正しいものは正しい。どんな少数意見でも、数学で証明すれば勝てる。
もし、「数学ってなんですか?」と聞かれたら、僕はこう答えます。
「小学生が大統領に勝てる武器。それが数学です」と。

数学で正しいと証明してしまえば、それは大統領にも否定できないんです。たとえ相手が小学生でも、大統領は「YES」と言わざるをえない。もしも「NO」と言ってしまったら、その瞬間に大統領の権威は崩れ落ちてしまいます。だって、それは明らかなウソですから。
こんな強力な武器なんて、ほかに考えられますか?
僕が始めた「渋滞学」という学問だって、いろいろな人たちから批判されます。ほとんどは「なんとなく信用できない」という感覚レベルの批判ですが、これまで世の中になかったジャンルを新たに作り出したわけだから、当然理解されないことはあります。
でも、僕には数学がある。渋滞学の背後には、鉄筋コンクリートよりも頑丈な数学の理論がある。
そして批判にさらされたときに、僕が思い出すのは坂本龍馬の言葉です。
「世の人は、われをなんとも言わば言え。わが為すことは、われのみぞ知る」
数学に生きる僕も、まさにそんな心境ですね。異論反論、大歓迎。どんな逆境に追い込まれても、つまらない批判にさらされても、数学があれば絶対に負けませんから。
特別講義3時限目 「数学の力」は大統領にも勝る より抜粋