開講の辞 / ナビゲーター 桜木建二(龍山高校特進クラス担任)

勉強や進路について悩んでいるのは子どもたちだけではない。むしろわが子を見守る親たちのほうが、その悩みは大きいのかもしれない。

そこで今回、『16歳の教科書』の番外編として、子を持つ親のための特別講義『40歳の教科書』を開講する運びとなった。

教育や子育てに、正しい答えなどない。

マニュアルも取扱説明書もなければ、模範解答もない。子どもの数だけ道があり、子どもの数だけ色が異なる。それが子育てというものだ。

そこで、世にあふれる教育論や子育て法はすべてが「仮説」なのだ、というところから出発しよう。

教育や子育てが多様であること、そして仮説であること自体はいいことだ。逆に、唯一絶対の教育なんてものが幅を利かすほうが恐ろしい。親としては、自分が「これだ」と思う仮説を信じ、実践していけばいいだろう。

ただ問題なのは、多くの親が仮説を仮説のままにして通りすぎていってしまうことである。

仮説とは本来、「検証」という作業とセットになっている。仮説があって検証があるからこそ「証明」ができるのだ。

ところが、自ら選んだ仮説をしっかり検証する親は、意外と少ない。

わが子にとってどんな教育が望ましいのか、あれほど真剣に考えるのに、いざ方針を固めてしまうと、そこに検証というフィルターをかけることをしなくなるのだ。

では、具体的にどうすれば「検証」の作業ができるのだろうか?

答えはひとつ、とにかくたくさんの意見に耳を傾けることだ。とくに、自分とまったく異なる意見や価値観の持ち主に話を聞いて、自分の視野を広げることだ。

その後、賛同するのか否定するのかは、どちらでもかまわない。まずは自分と異なる意見に耳を傾け、これまでの自分の考えとは別の可能性について、じっくり考えてみることが大切なのである。

そこで今回、子育てや教育の諸問題について総勢14名のスペシャリストたちに特別講義をお願いした。テーマは次の4つである。

  • 英語はいつから学び始めるべきか?
  • 中高一貫校は幸せへのプラチナチケットか?
  • 「お金」と「仕事」をどう教えるか?
  • 挫折や失敗をした子どもにどう接するか?

もちろん全員の意見に同意することなどないだろう。いずれの講師陣も大胆かつ率直な意見を語ってくださったので、中には反発したくなる話もあるかもしれない。

しかし、何度もくり返すようだが、そうして自分と異なる考えの存在を知ることが大切なのであり、そこで反発することも「検証」のひとつなのだ。

子育てにおいて、もっともよくないのは「もう遅すぎる」「もっと早く知っていればよかった」という考え方である。子育てにも教育にも「遅すぎる」という言葉はない。人は何歳になってからでも自分を変えられるし、成長できるのだ。

まずは親であるあなた自身が、それを実証しよう。あなたの意識が変化すれば、おのずと子どもたちも変わっていく。

親が成長しないことには、子どもの成長などありえないのである。

なお、本書は「日本の教育界に新しいメッセージを発信したい」という朝日新聞社からの提案を受け、2010年4月に朝日新聞(東京本社版夕刊)紙上にて連載された特集記事を大幅に加筆修正する形で誕生した一冊である。教育問題にかける朝日新聞社の熱い情熱に、あらためて感謝を申し上げたい。

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ドラゴン桜公式副読本『16歳の教科書』番外編『40歳の教科書 親が子どものためにできること』
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